ルーマニア#203

無機質な現代の一服の清涼剤。


毎日同じことの繰り返しだなー、なんて思うことはありませんか?
映画やテレビ、小説のようなスゴイことなんて起きないよなー、なんて思ってませんか?

このゲームの主人公、ネジ タイヘイ君はごく普通の平凡な大学生。何か優れた能力があるわけでも、美形だったりするわけでもありません。
このゲームの基本は彼のアパートの部屋の観察です。
部屋にはテレビやラジオ、冷蔵庫やパソコン、机やベッドや本棚があって狭いながらも平凡なたたずまい。
とりあえず観察していると、机の前の座布団に座ってたばこを吸っているネジ君。そのままぼーっとした後、テレビを点けました。ちゃんとテレビでは主に実写の番組が放送されていて、映像と音声が見れます。ネジ君を観察しつつテレビも視聴。本物のトーク番組みたいで面白いです。架空のCMまで流れます。いかにもありそうなCM。
チャンネルを変えるネジ君。今度は「恋愛調味料」なるドラマが始まりました。変なタイトルですがちゃんとドラマしてます。なーんか内容もヘンですが。
ネジ君、テレビを消して床の雑誌を読み始めました。
ふと立ち上がるネジ君。そのまま台所を通ってトイレへ。トイレから出てくると台所の冷蔵庫から牛乳を出して飲みました。
テレビの部屋に戻ってくるネジ君。
「いて!」
ネジ君、部屋の段差に足の指をぶつけました。
ネジ君、気を取り直したのか座布団を素通りしてベッドの枕もとのラジオを点けました。
ちゃんとした楽曲が流れてきます。実はこのゲーム、実際のインディーズの曲をラジオで使用しています。中には当時インディーズだったスネオヘアーの曲も。
ラジオはノイズも再現されていていい感じです。
実はこのゲーム、あのスペースチャンネル5シリーズで音楽を製作したウェーブマスターが作っています。ラジオでは過去にウェーブマスターが手がけたセガのゲーム音楽も。他にもラジオ相談室やニュースも聴けます。その内容が単にリアルなものではなく、かなりギャグ満載。笑えるものも多いです。これらのテレビやラジオ、ネジ君の独り言はコレクションしてタイトル画面からいつでも聴く事ができ、この収集がひとつのやり込みになっています。大半は独り言ですが全部で400です。
ネジ君、穏やかな曲が流れる中、ベランダに出ました。
「はー。いい天気」
独り言を言うネジ君。
とまあ、こんな感じでゲームは進みます。……ってこれじゃ全然ゲームしてませんね。観察が主旨じゃないんです。プレイヤーは「神様」になって、ネジ君を観察すると同時に、部屋の中の物をクリックすることでネジ君の関心を向けさせることができます。テレビをクリックすると、画面左下のネジ君の関心を表すランキングでテレビが上がってきて、クリックを続けて1位になるとテレビを見ます。こうやってネジ君の行動に介入していく訳です。ただしあくまで注意を引くだけ。思い通りにならないこともあります。
でも多少介入できてもやっぱり観察だけ?
実はずっと観察を続けると、ゲーム内でも日にちが経ってくるんですが、ずーっとこんな調子です。平凡です。そして一定期間を過ぎると平凡なまま終わってしまいます。しかもその後もずっと平凡に過ごすようなのです。
そんなことでいいんでしょうか。仮にもゲームで。ストーリーすらありません。そんなゲームがあってもいいかも知れませんが、実はこのゲームの本当の目的は、ネジ君の人生にドラマを起こすことなんです。
神様ができることは注意をひくことと、ネジ君の不在時にテレビをつけたりするといったイタズラができるだけ。
でも本当はドラマのきっかけは、日常の何気ない日々の中にあるんです。
それを教えてくれて、ゲーム性を与えるのが「ナビ」という予知夢のようなシステム。
これはイベントのようなもので、短い実際のネジ君の映像と文章から、神様のできる範囲で何をしたらその映像の状況を導けるのかを推理するものです。この短い映像が、その後のストーリーを予感させる演出にもなっています。
ナビには発生してからあと何回の観察で達成しないといけないという制限時間があります。1回の観察は180秒です。(120かな?)
このナビの連続でストーリーは進み、ドラマが起こるのです。

もうひとつ、ルーマニア203を語る上で欠かせないのが、架空のアーティスト「セラニポージ」。CDをクリックすると彼女の歌がいくつか聴け、どれもいい曲です。ネジ君もセラニのファン。このセラニポージ、ゲームの発売前にアルバムが実際に発売され、ゲームをやらない人にも売れたという逸話があります。
透き通るような女声ボーカルと、不思議な世界観の歌詞、J−POP苦手な私でも聞きやすいポップス風のサウンド。素晴らしいです。
この歌詞が実は微妙にネジ君の身に起こるドラマとリンクしていて、ゲーム中でネジ君が部屋でセラニを聴いて、プレイヤーが連想したり、直接セラニがストーリーに関わることもあります。

このように音楽と密接に繋がっている本作。
さらにこれらが、ナビ発生中でも余裕を持って聞けるようになっているので、単にナビ(フラグ)に追われ続けることもなく、かと言って平凡な日々が続くばかりでもない絶妙なテンポとバランスを実現しています。
シナリオは全部で4つで少なめなのが残念ですが、とても評価の高いシナリオがあります。私もあれは凄いと思います。
突然悪い宇宙人が現れて世界戦争になるような突飛で壮絶なドラマは起こりません。全てネジ君の部屋で起こることで、そこ以外で起こったことを神様が見ることはできません。いざパッケージを見ると変なグラフィックだと思うかもしれません。
でもこのデフォルメの薄い頭身の高いサイズだからこその日常+音回りを中心にリアルに作られた部屋で起こるリアルなドラマな訳で、セラニの歌やそれらのシナリオの、ミニマムかも知れないけど確かに平凡な人生には無い大事な経験が、まさに無機質な現代の一服の清涼剤のように私には感じられるんです。 少し大人向けなゲームかも。
おすすめゲームです。変なジャケットで手に取らないのは惜しすぎます。


ここからはネタバレです。  もどる




シナリオ1 ワンダーウォール
ルーマニアを名作にしたのは、このシナリオでしょう。展開がうますぎます。特に夜中の通信販売がきっかけでポスターを破き(ここがギャグなのがまたうまい)穴が開いたのがきっかけになるのが凄いです。あとインチキ祈祷師とかも面白いですし、泣き声がもとで買ったのに、本当に壺が割れたり祈祷師の言葉が伏線になってたり。祈祷師の演技も上手いですし。「宇宙船はどこへ行った?」も名曲すぎ。ちなみに遊園地へ行く行かないなどの分岐があり、最後の手紙の内容が変化します。

シナリオ2 過去から来たメール
工作員こわ!緊張感とサスペンスあふれるシナリオですね。非現実へ足を踏み入れたというか。チャット友達というだけのカレーにソースの会のメンバーが重要な役割を果たすのがいいです。でも結末はちょっと突飛すぎたかな……と。

シナリオ3 サークルゲーム
ストーリーだけ見ると悪くはないですが、ゲームとしてはナビとイベントが多すぎて、のぞきの時間が少なく、ナビに追われる感じがするので、イベントばかりになり、飽きてつまらなく感じてしまいます。

シナリオ4 鏡の中にあるが如く
最後に見たシナリオとしてはいいかな。これもサスペンス系ですが、性格が逆になる面白さと、後半の追い詰められる部分は緊張感がありますね。

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