


Bond Work Mixed Mediums on Cardboard
ボンド・ワーク
絵画の線にあたる部分の表現を強調するために、木工用ボンドでデッサンを施した、今泉憲治独特の技法。
作品をアトリエの床一面に並べ、十数点の作品の上を跨ぎながら、作品から作品へと次々にボンドを垂らし、一度に大量のデッサンを描いていく様は見事で、当時、制作助手を買って出た学生たちを唸らせた。
乾いて透明になったボンドの上に着色を施すと、カードボードの上には、見事に計算された、恐竜たちの生き生きとした姿が現れるのである。
制作の過程は初期の頃と変わらないのだが、出来上がった作品の雰囲気は、前年度制作のボンドワーク(ギャラリーB)と比べ、随分と変わっているのが判る。
ボンドの効果に頼り過ぎ、彩色を控え気味に仕上げていた‘The ZOO’動物園シリーズにみられた繊細さが消え、何かに吹っ切れたように、色使いが大胆になっている。ボンドもデッサンのための線ではなく、恐竜たちの個性を活かす為の線として、大胆に、しかし必要不可欠な場所に、的確に垂らされているのが印象的である。
今泉のボンドワーク作品の制作の中で、この恐竜シリーズが最も充実した時期の作品であるといえるだろう。この後の作品の中にも、ボンドは頻繁に使われているが、後期に入ると、ほとんど見られなくなって行く。
「ボンドの線は、デッサン力不足を誤魔化すための、小手先の逃げ道ではないのか」という批評を受けたこともあり、そのためにボンドワークから遠ざかったのではないかと言われることもあったが、それは、まず考えられないだろう。
ただ単に彼は、ボンドという素材の使い方のテクニックに長ける自分を発見し、ガッカリしてしまったのである。新鮮だったはずの玩具に飽きた少年は、探求心旺盛な芸術家でもあったのだということを、決して忘れてはならない。
「TYRANNOSAURUS ― ばんざいゴジラ」 73×61p 1987年
「STYRACOSAURUS」 61×73p 1987年
「BRACHIOSAURUS」 73×61p 1987年

