06SD−1
シャープさに欠ける池辺は上では難しいと思っていたが、今更ながら天性の飛距離に驚いてしまった。初回の1、3塁のチャンスでフラフラッと上がった飛球はセンター後方を襲い、前田がゆうゆう生還。3回の同じ1、3塁の場面でも高く上がったセンター後方のフライが、逆風を突いてスタンドイン。続く打席もタイムリーで5打点。 社会人ではチャンスメーカーは多くてもポイントゲッターは数少ない。3塁に走者を置いて迷いの見える打者が多い中、堂々と4番の役目をこなす姿は、中日期待の堂上兄弟や平田をも喰ってしまった感があった。壁にぶつかり、もがき続ける姿も見てきたが、この日は悟りを開いた境地のようなものを感じた。 (2007年 5月7日 本奇異豚区 氏) |
| 池辺 啓二(24歳・新日本石油)中堅 180/73 左/左 (智弁和歌山−慶応大出身) |
「打撃の天才は蘇ったのか?」 「迷スカウト」を世に発信し続けて、すでに7年目もの月日が経った。その中で、私は唯一「打撃の天才!」と評した一人の男がいる。その男の名前は、池辺 啓二 。全国制覇した智弁和歌山打線の核として、彼は甲子園を席巻した。彼の持ち得る打撃センスは、私が今まで観てきた、如何なるアベレージヒッターよりも、強烈インパクトを残してくれた。 その池辺啓二は、慶応大学に進学する。名門・慶應義塾でも、彼の扱いは別格だった。例え結果が残らなかろうが、彼は4年間使われ続けた。彼が六大学で3割を越えたシーズン僅か一回。かつて天才の名を欲しいままにした男としては、あまりに寂しい数字であった。しかし金属から木製バットに変わる中、彼は意固地になってでも、自分のスイングを変えなかったのである。 そんな池辺は、更にレベルの上がった社会人野球に身を投じることになる。新日本石油に入社した彼は、春のスポニチ大会から頭角を現す。そして一年間、新日本石油の中心選手として、全日本の主力として、再び高校時代の輝きを取り戻しつつある。そして今年再びプロ解禁の年になる池辺。一体何処が大学時代と変わったのか、今回は大学時代のフォームと比較しながら考察してみたいと思う。 守備:☆☆☆☆ 高校・大学・社会人と中堅を守り続ける。けして肩は図抜けていないが、打球への反応、追い方など非常に無駄のないプレーヤーだ。捕ってから素早くカバーの内野手に投げるプレーは、実に洗練されている。プロならば、センターからレフト向きのプレーヤーだろう。 走塁:☆☆☆☆ 一塁までの塁間は、4.0〜4.2秒ぐらいで走る抜ける。プロの世界に混ぜても、中の上レベルの基準は満たす。しかし足を売りに出来る程、絶対的な脚力はない。ただその走力以上に、走塁センス・盗塁センスは悪くないので、それなりに走力も評価したい。 (打撃スタイル) タイプ的には、リストが強く一発スタンドインの魅力を秘めた好打者タイプである。理想で言えば、3割20本タイプの選手なのだろう。池辺が目立つ場面は、タイムリーよりも、むしろ本塁打とさえ言える。ただ、この一発への魅力が捨てきれないところが、この選手の打撃を永年狂わせてきたのも確かなのだ。 ここからは、大学時代のフォームと比較しながら考えてみたい。 (打撃フォーム) <構え> ☆☆☆☆ 写真1は、池辺選手が構えた時のものである。左足をしっかり引いたオープンスタンス。グリップは平均的な高さで幾分捕手側に添えられており、バットは相変わらず長く持っている。足がしっかり引かれているので、腰がしっかり据わっており、全体のバランスも好い。両目で前もしっかり見据えられており、ほぼ理想的な「構え」だと言えそうだ。しいて言えば、もう少しリラックスして構えられれば言うことはない。大学時代と比較しても、大きくは変わっていないようだ。 写真1 ![]() <仕掛け> 平均的な仕掛け 投手の引きあげられた足が下る途中〜下がりきったあたりで、本格的にスイング動作を始動させる。これは、「早めの仕掛け」〜「平均的な仕掛け」に属する始動となる。以前から「平均的な仕掛け」で始動していた彼は、長打と確実性をバランス好く織り交ぜた中距離スタイルを採用している。この点も、今はほとんど変わっていない。 ただこのスタイルの選手は、ある程度の率と長打を発揮しやすい反面、特徴が見出し難い選手が多い。池辺も、そういったタイプと言えばタイプなのだ。一般的にこのタイプは、守備・走力などの能力が図抜けていないと、中々指名され難い傾向がある。 <足の運び> ☆☆☆ 写真2のように軽く足を引きあげ、ゆっくり弧を描いて回し込んで来る。着地は少しアウトステップ気味で、真ん中〜内角の球を捌くのには適しているが、野球の配球が7割以上や勝負どころで外角に投げることが多い傾向を考えるとアウトステップ打者は、けして確実性の観点から言えば誉められたものではない。 それでも一塁まで出来るだけ早く到達したい左の好打者タイプであること。またアウトステップが少しスクエア気味に改善されてきていることもあり、以前程は気にならない。しかし写真4のように外の球をしっかり強く叩くと言う観点では物足りない。 優れているのは、踏み込んだ前足のつま先が、最後まで動かず閉じられている点である。インパクトのブレや身体の開きを、ギリギリまで我慢出来ていることは高く評価したい。ただこの動作も、大学時代と大きくは変わっていない。 写真2 写真3 写真4 ![]() <リストワーク> ☆☆☆☆ 写真3をみると、前腕の肘はしっかり捕手側伸びており、トップが深いことが窺われる。その際にグリップは身体の陰に入り込むことはなく、素直にヘッドが出てくるところにある。スイング軌道も上から振り出されており悪くない。写真4のインパクトの際の押し込み、写真5のフォローなどをみると、さほど力を集約出来ていなかったり、ボールを遠くに運ぶタイプには見えない。それでも打球を運べるのは、やはりリストが強いタイプなのだろう。 一番大学時代と変わったのは、構え〜トップまでのグリップの移動距離が縮まったことだろう。予め捕手側に置くことでグリップの移動距離を狭め、ロスを軽減するようになったのだ。余計なアクションの多かった池辺が、唯一大きく修正した箇所だと言えよう。 写真5 ![]() <軸> ☆☆☆ 写真2〜4を見て頂けるとわかると思うが、足を引きあげ降ろす時に、多少頭の位置が上下に動く部分はある。しかしそれほど悲観することはないだろう。むしろ気になるのは、アウトステップすることで、身体の開きを我慢しても、中々外の速い球を強く叩けないところである。軸足はそれほど強くはなさそうだが、写真5をみると、その形が崩れてしまっているのがわかる。自分の型を崩してでも、ミートして運ぶアベレージタイプは、それほど軸足の安定にこだわる必要はないのではないのか。 (最後に) グリップの位置以外は、ほとんど大学時代と変わっていない。グリップの移動距離の改善で、速い球への対応がしやすくなったことが、一年目から社会人で活躍出来た要因だと考える。しかし根本的なステップの問題と体軸の安定感は、まだまだ改善仕切れているとは言えない。 左の社会人ドラフト候補の外野手と言えば、北道(NTT東日本)・中村(シダックス)などがあげられる。昨年、あれだけアピールしていた北道レベルが指名されないとなると、池辺が指名されるのかは正直微妙だろう。池辺と北道を比較すると、足は北道・守備は池辺の方が若干上かなと思うが、打撃に関しては、北道の方を評価する。池辺が今のままならば、私はかつての☆☆☆☆☆選手を、大学時代に引き続き、指名リストから外さないといけないことになるだろう。この一年の更なる進化を、個人的には大いに期待して見守りたいと思います。天才が蘇ったかどうかは、これからの彼のプレー次第です。 (2006年 1月7日更新) |
大学時代は 「かつて天才と認めた男!」 かつて智弁和歌山が、甲子園史上に残る圧倒的な破壊力で夏の大会を制した時。その打線の中でも一際光る天才打者がいた、それがこの池辺 啓二である。智弁和歌山の3番打者として、私が打者として天才と呼んだ打者は、かつてほとんどいない。その天才池辺が慶応大学に進み、1年春からリーグ戦に出場していった。いつその才能が開花するのか、いつもいつも私は待ち続けた。しかし私の思い描いた方向性とは違うままに、彼は4年間の大学生活を終えてしまったのである。 (リーグ戦別 成績表)ベ=ベストナイン 1年春 11試 打率.262 0本 打1 盗1 四死4 振11 出塁.357 1年秋 10試 打率.143 1本 打4 盗4 四死4 振10 出塁.250 2年春 12試 打率.122 1本 打3 盗2 四死6 振10 出塁.234 2年秋 10試 打率.171 1本 打11盗3 四死6 振12 出塁.267 3年春 11試 打率.317 2本 打6 盗1 四死6 振 8 出塁.404 3年秋 13試 打率.255 2本 打8 盗3 四死8 振 9 出塁.356 4年春 13試 打率.280 2本 打11盗0 四死13振 6 出塁.429 ベ 4年秋 13試 打率.296 1本 打7 盗1 四死7 振 8 出塁.377 と言う数字である。1年春に素質の片鱗を魅せ将来を嘱望されるが、本当の意味で六大学にある程度対応し始めたのは、3年春から。コンスタントに打率・盗塁・本塁打などを稼いでいるが、いずれも爆発的な数字を残すときは存在しない。けして六大学のレギュラー選手とみれば悪くない成績かもしれないが、かつて高校球界の頂点を極めた「天才打者!」としては、あまりに物足りなく中途半端な数字しか残っていないのは、他のドラフト候補達の成績表と比較して頂ければ一目瞭然だろう。 ここからは、彼の現在のプレーぶりを具体的に考察して行きたいと思う。 (守備・走塁面) 外野手と言うことを割り引いても、池辺は1年春からリーグ戦に不動のレギュラーとして起用され続けてきたわけだが、失策は4年間で僅か2個と言う非常に安定感のある中堅手と言える。これは、智弁和歌山時代からも指摘したことだが、打球への反応、追い方など非常に無駄のないプレーヤーだと言った感じで、強肩ではないが捕ってからカバーの内野手に素早く返球したり俊足を活かした広い守備範囲で、持ち得る能力を活かし安定した守備力を誇っている。 六大学での実績を観ても、かなり盗塁をコンスタントに記録しているのがわかる。一塁までの塁間を大体4.05秒前後で走るなど、脚力は絶対的なものはないが俊足の部類だと言えるだろうし、本人の足への意識は、かなりある選手だと思われる。守備・走塁面に関しては、上のレベルでも中の上レベルの基準に達していると言えるであろう。 (打撃スタイル) 智弁和歌山時代の強打者としての感覚が忘れられないのか?バットを長く持って振り回す傾向が強い。さすがに、その恩恵もあってリーグ戦では、コンスタントに本塁打は記録してきた。非凡なハンドリングの良さも、この長いバットに振り回され、いまいち絶対的な数字を残せないできた。彼の美徳なのかもしれないが、あまりにも頑固、もっと言い方を変えれば融通性のないプレーヤーだと言えるであろう。天才のプライドが、自らのプレースタイルの変化と言う切り替えには、結びつかないようだ。また彼の成績で驚くのが、犠打の少なさである。4年間で残した犠打の数は二つ程度。この数字が示す通り、池辺は4年間特別な扱いと存在の選手だったと言えるであろう。ただ今の彼は中距離打者だと言えば聞こえは好いかもしれないが、すべて無難にまとまり、悪く言えば中途半端な選手だとも言えるであろう。 (打撃フォーム) <構え> ☆☆☆☆ 投手側の前足を大きく引いたオープンスタンス。顔はしっかり前を見据え両目で球筋をしっかり追える体勢が出来ている。バットを長く握り、バランス・腰の据わり・雰囲気ともそれなりで、構え自体は好いフォームだろう。 <仕掛け> 平均的な仕掛け 投手の引き上げられた足が下がりきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を実践している。これは、アベレージ打者と長距離打者の中間の位置に属する仕掛けで、ある程度の確実性と長打をバランス好く打ち分ける中距離打者やポイントゲッターに適した仕掛けだと言える。まさに池辺は、その典型であるような気がするが、一つ間違えると特徴を見出しにくい中途半端なプレースタイルに陥りやすい仕掛けだと言える。 <足の運び> ☆☆☆ 少し時間に余裕がある彼の仕掛けを活かし、大きく足が弧を描いて回し込むことで、早く地面を捉えるのを防いでいる。着地する部分は少しアウトステップ気味で、真ん中〜内角の球を捌くのには適しているが、野球の配球が7割以上や勝負どころで外角に投げることが多い傾向を考えるとアウトステップ打者の確実性は、どうしても低くなる。 踏み込んだ脚元は、インパクトの際にブレずに我慢出来ているが、「平均的仕掛け」でボールが到達するまでに多少の余裕があるはずなのだが、足を大きくまわし込む動作に時間を使ってしまい、変化に応じて踏み込むタイミングを調整するような器用さはないようだ。 <リストワーク> ☆☆☆ トップこそそれなりに深いのだが、構え〜トップまでのグリップの移動距離が長いので、どうしても始動が遅れやすい。腰の逃げが早く、グリップも身体から離れ気味でトップ〜インパクトまでのスイング軌道に波が出来る。天性のハンドリングの良さは垣間見せる時はあるが、どうしてもロスの大きな動作が、高いレベルでの野球では、確実性が低くなる。 <軸> ☆☆ 天性の膝の柔軟さやハンドリングの打者なので、どうしても自分から球を追いに行ってしまう。そのため目線がブレ確実性を低下しやすい。前足がしっかり踏ん張れているので、前の崩れは我慢出来るのだが、腰が先に引けてしまうのは気になるところだ。これはアウトステップ打者なのも大きいだろう。軸足の安定感も含めて体軸の安定感は、もう一つだと言えるだろう。 (最後に) 守備・走塁などは、上のレベルでも無難でソツのないレベルだと言えるであろう。ただ打撃に関しては、そろそろプライドを捨てて、自分はイチローのようにアベレージなら徹底的にアベレージに徹したプレーヤーだと言う割りきりが必要だろう。すべてを欲張って、すべてが中途半端になっているのは、打撃技術を観ても感じられる。 まずは、アベレージ打者ならば(私は、そこに徹して欲しい)、圧倒的な割合で来る外角のストレートを確実に打ち砕く技術を身につけることだ。そのためには、インステップとまでは言わないが、スクエアでも踏み込むぐらいの意識をまず持つことである。そしてバットをもっと短く、コンパクトに振り抜けるアベレージタイプの打撃スタイルに移行すべきだ。あれだけ長いバットを扱いたいのなら、徹底的にバットを振り抜いたり、ウエートトレなどをやって格段のヘッドスピードを身につけなければ、バットにもて遊ばれるだけである。そこの努力をしないで、アクションだけ大きいなど身の程知らずだ。 彼が、心底変わりたいと願わない限り、彼は「智弁和歌山の池辺」で間違いなく終わってしまうだろう。今のままならば、社会人でも数年で静かに引退することになるのではないのか。変わることを恐れる選手は、すでに野球人として終わりを告げていると言えるであろう!才能だけでは、この世界は生き残って行けないのである、相手はいつも何とかして池辺を抑えてやると日夜努力をしているのだから! (2004年 11月10日 更新) |