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大田 阿斗里(東東京・帝京)投手 185/91 右/右





                    「一回も持たずに・・・」





 帝京高校のエースとして挑んだ選抜大会。20奪三振の離れ業で、大いに大会を盛り上げた豪腕。その最後の夏は、見る影もなかった。夏の東東京都予選から続く不調で、背番号1も剥奪。それでも、甲子園緒戦では、先発のマウンドを任された。しかし結果に応えることが出来ず、僅か1イニングも持たず、甲子園をあとにする。

 昨秋の明治神宮大会〜選抜までには、着実な成長を感じさせてくれた。しかし彼の評価を決定づけるのは、夏までの成長力と記載したが、その上積みは残念ながらなかった。その原因がなんなのか、今回は、考察してみたい。



(投球スタイル)

 恵まれた体格から投げ降ろされる速球は、常時140〜145キロ強。手元までの伸びはないが、球威溢れる速球は、まさにプロのボリューム感。スライダーにフォークだろうか?縦に落ちる球・それに左打者には、チェンジアップのような球を投げ込む。この球のブレーキは中々好く、今まであまり目立つ球種ではなかった。唯一の収穫と云えば、この球を覚えたおかげで、投球の幅が広がるはずだったのだが・・・。

 球一つ一つは、選抜同様に健在だ。しかしバランスを崩し、身体突っ込んで来る。そのため元々早かった身体の開きがいっそう早くなり、打者からは球の出所がいち早くわかる。それほど甘くない球を痛打されたり、勝負どころでのコントロールミスを露呈し、初回降板の要因を作っていた。予選での不調を、そのまま引きずるように。

 今回は、詳細に投球内容を検証する程のサンプルがない。そこで今回は、早々投球フォームの分析を行い不調の原因を探ってみたい。



(投球フォーム)

 いつものように「野球兼」の
2007年8月30日更新分に、彼の投球フォーム連続写真が掲載されているので、そちらを参照しながら読み進めて欲しい。

<踏みだし> 
☆☆☆☆

 写真1は、大田投手がワインドアップで振りかぶった時のものである。背中の反り具合・下半身の充実度は、高校生離れしており、相当なトレーニングを積んでいることが伺われる。足の横幅も充分なぐらいに広く取り、球の勢いを重視したスタイルかと思いきやバランスを重視した立ち方になっている。

 写真2の足を引き上げるまでに、投げる前に一度ポ〜ンと反動を付けて投げる、今時珍しい踏みだしを行っている。そのため足を引き上げる勢いがあり、足もこれでもかと云うぐらい高い位置まで引き上げられている。確かに大きなエネルギーを導くには好いが、まずこの時の反動が制球を乱す要因になっていると考えられる。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆☆

 再び写真2を観て欲しい。軸足の膝がピンと伸びてしまい、力みを感じさせる。無理に速い球を投げようと意識しているのか、膝に余裕がないのが気になる。ただ高く引き上げた足に対し背中の傾きを上手く取り、バランス好く立てている。これにより軸足への体重の乗せ方も悪くないだろう。

<お尻の落としと着地> 
☆☆☆

 写真3では、引き上げた足を三塁方向に向かってピンと伸ばしているので、お尻がしっかり一塁側に落ちている。これにより身体を捻り出すスペースが確保され、ブレーキの好いカーブやフォークが投げやすくなる。ただこれだけ重心が深く沈んでしまっているので、どうしても着地が我慢出来ずに地面を捉えてしまう。

 足を三塁側にピンと伸ばした足を、幾分二塁方向に送り込むことで、バランスを取りやすくなる(ただし送り込み過ぎに注意)。そうすれば、お尻は一塁側にしっかり落ちつつ、着地までも時間を稼ぎ粘りのあるフォームが可能になるのだ。

 どうしても立ったときのバランスが維持出来ないので、着地は粘りなく地面を捉えてしまう。これは下半身の鍛錬が悪いのではなく、足をピンと伸ばした時の姿勢が悪いだけの問題だ。それほど修正には時間がかからないだろう。着地までの時間を稼げれば打者もタイミングが取り難いし、下半身の体重移動・身体を捻り出すために必要な時間もキープ出来、投球全体に好い循環が生まれる。まさに投球フォームの核とも云うべきポイントだ。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆ 

 写真6を観ると、グラブが最後に身体の後方にすり抜けてしまい、しっかり抱え切れていない。こうなると充分に身体のブレを抑え込めず、左右の制球力がアバウトになる。また写真5の右足スパイクを観ると、足の甲での押しつけは浅く・その時間も短いことがわかる。そのため球が高めに浮いたり、後の動作にエネルギーをしっかり伝えきることが出来ない。

<球の行方> 
☆☆☆

 写真3を観ると、前の肩と後ろの肩が真っ直ぐ打者に伸びてしまい、球を隠すことが出来ていない。また写真4の着地の段階では、ボールを持った腕は打者からいち早く見えてしまっている。これでは、いくらプロ級の球威・球速を持とうとも、打者からあっさりと打ち返されてしまう。

 写真5では、腕の角度は適正で、けして無理な振り抜きではない。ただ彼のような本格派は、もう少し肘をあげて腕に角度があっても良いはずだ。ただ球持ちに関しては、写真を見る限りかなり長く持ってリリース出来ているように見える。ただ本当にそうならば、もっと球にバックスピンがかかり、手元まで伸びる球質なはずだし、微妙な指先の感覚で投げられ、制球力が備わっていても好いはずなのだが・・・。

<フィニッシュ> 
☆☆☆☆

 写真6を観ると、腕の身体への絡み方が縦に絡むのではなく、横に流れて絡んでいる。これは、かなり腕を縦に振れていないのだろう。それでも強く腕が振られている点は高く評価する。足の甲での抑えが浅い割に地面の蹴り上げが強いのは、それまで作り出したエネルギーが尋常ではないのか、体重移動が不充分で力の逃げ道を、この蹴り上げる足に求めたからだろう。彼の場合、その両方の要素があるように思える。若干一塁側に流れる身体を、なんとか押さえ込むバランスはあるようだ。

 特に身体の突っ込みが顕著になるのは、ワインドアップの時よりも、セットポジションの時である。この時に、如何にからだの突っ込みを抑えられるかが、大きなポイントとなる。

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(最後に) 

 選抜時と比べても、体つきは更に逞しさを増しており、けしてモチベーションが低く伸び悩んだのではなく、急激な肉体の成長に、自分のフォームが合わなくなってきたことで、充分に修正出来なかったものと考えられる。また本人が、無理に球速を追求するあまり、フォームのバランスをいっそう崩してしまったことも大きな要因ではないのだろうか。

 気になったのは、身体の開きが顕著なこと。ただこれは、プロ入り後充分改善可能な部分であり、しっかりした指導者がいれば改善が期待出来る。むしろそれより心配な点が二つ。

1,勝負どころの制球力が悪いなど、精神的に意外と脆い部分がある。

2,帝京全体に云えることだが、早くからプロ級のトレーニングを積んでしまい、肉体の成長がその後あまり望めない。

そのため、彼を上手く促し、おだてながら育てられる環境じゃないと、彼は益々萎縮してしまう可能性すら感じさせる。別に肉体の何処かが悪いとかではないので、上手く導いてあげられる環境ならば、彼を再生させることはそれほど難しいことではないのではないのだろうか。

 今後爆発的な伸びは期待出来ないと思われる。そう考えると、如何に実戦的な術を身につけて行けるかで、その後の野球人生が大きく変わって来るはずだ。ただ本質的な素材が失われたわけではないので、評価は春のまま据え置きで良いのではないかと考える。充分に高卒でプロに進んで欲しい1人ではないのだろうか。


(2007年・夏)


蔵の評価:
☆☆☆







大田 阿斗里(東東京・帝京)投手 182/85 右/右





                「一冬越えても、着実な成長!」





 帝京高校の先輩・吉岡雄二(現・楽天)の高校時代を彷彿させる彼にとって、私の心配は2年秋〜3年春の間に、どのぐらい成長するのかと云うことであった。昨秋は、常時142キロ前後だった速球は、コンスタントに143〜145キロ程度になり、アベレージでの球速も、2〜3キロ程度速くなっているし、その球質もワンランク投手のそれとなりつつある。

 変化球は、スライダー・フォーク・更に縦に切れ込むスライダーらしき球も増え、投球の幅も広がりつつあるようだ。選抜での投球を見る限り、やはりこの投手をそれなりに評価しないと行けないなと実感させられた。ただ今でも、今後どの程度の上積みが、この投手に残されているのかには疑問を残す部分もある。

 気になるのは、左打者に対し真ん中近辺の甘い球が多い点。また右打者のアウトコース一杯の球でも、苦になく打たれるケースが目立つ。こういった投手は、やはり打者から球が見やすく、苦になりにくいフォームの投手なのだ。そういった部分での技術的な成長は、一冬越えても、あまり感じられなかったところは残念。

 これからプロで伸びるような投手と云うのは、春がピークなのではなく、夏までにポ〜ンとワンランク明らかな成長が観られる投手である。ぜひ大田が上位指名に相応しい素材ならば、ここでの成長を大いに期待してみたい。そこで大田の評価は、定まって来ると考える!


(2007年・選抜)



蔵の評価:
☆☆☆







大田 阿斗里(東東京・帝京)投手 182/85 右/右





              「吉岡雄二(現・楽天)とだぶるんですけど・・・」





 帝京高校が、全国制覇をした時のエース・吉岡雄二の高校時代と今の大田阿斗里の姿は、私にはだぶって見えてくる。吉岡も骨太の体格から投げ降ろす速球は、145キロ級の速球を投げ込んでいた。ただすでに高校の時点で吉岡はほぼ完成された投手であり、大田も高校2年の秋で、今後大きくは伸びないのではないかと言う不安を感じさせる。果たしてそれは私の先入観なのだろうか?2年秋で常時140キロ台・MAX146キロを記録すれば、普通に考えれば来年の目玉的存在だと思われてもおかしくない程だ。しかし私同様に周りのテンションがあがってこないのは、私と同じように感じる人が多いからではないのだろうか。本当に彼はもう完成した投手なのか、技術的な部分も含めて考えてみたい。

(投球スタイル)

 骨太で恵まれた体格を、まだ生かし切ってはいないように見えても、大田は常時140台・MAXで146キロを記録する重い球を投げ込む本格派だ。主な変化球は、スライダー。それにフォークなどを織り交ぜて来る。ただ一見荒削りそうに見えるこの投手、力むと力のいれ加減がわからなくなり上体が突っ込みまくるが、冷静な時はカウントが悪くなっても、速球の球速を殺してカウントを取るなど上手く力を抜いて来る。ようは好い時と悪い時のムラがある、まだまだ発展途上の投手なのだ。

(球種)

速球  平均:142キロ前後 MAX146キロ 

 コンスタントに140キロを超えて来る速球は、高校生としては非常に球威に溢れた球質である。その分、それほど空振りを誘える球種ではないが、やはり手元での伸びキレ以上に、この年齢ならばまず球威・球速があることが第一だだろう。カウントが悪くなれば、力を抜いてカウントも取ることが出来るなど、この投手は、見た目以上にしっかりした投球術の持ち主だ。ただ肉体的な完成度も高く、今後何処まで球速を伸ばせるかには不安がよぎる。それでも年齢的には成長期なのを加味すると、150キロ近い球速を連発出来る可能性はあるだろう。春までの成長に注目してみたい。

スライダー 120キロ弱ぐらい 

 基本的には、速球ともう一つの変化球が、このスライダーである。それほどキレがあるわけでもなければ、制球力に優れた球種でもない。あくまでも速球との球速差20キロ強の緩急とカウントを稼ぐ意味合いが強い。もう少しキレ・制球力を磨かないと上のレベルでは通用しないだろう。

フォーク   130キロ弱ぐらい  

 まだまだその精度は低く、狙って空振りが取れる可能性は低い。この球を活かすためには、まずもう少しテイクバックをしっかり取って、腕をしっかり捻り出すフォームにする必要性が求められる。その辺が改善出来るかで、この球の落差、効果は全然違ってきそうだ。

牽制・クィック・フィールディング

 この投手、大型だけに動きが緩慢かと思いきや、牽制も中々鋭いし、クィック動作が相当速い。さすが名門校の選手らしく、その辺の技術はもの凄く鍛えられている。そういった意味での総合力は極めて高い投手なのだ。

<右打者に対して> 
☆☆☆

 右打者に対しては、アウトコース高めに速球を集めるのが投球の基本。アウトコース低めに速球、更にそれよりも低いボールゾーンへのスライダーを投げ込むことも多い。あまりインコースに速球を決めることは少なく、真ん中高めの打ち頃のゾーンにも球は入って来ることもある。全体的に制球力はアバウトながら、アウトコース中心に投球を組み立てて来ると言った感じだろうか。速球・スライダー以外に、もう一つカウントが取れる球が欲しい。

<左打者に対して> 
☆☆

 左打者に対しては、アウトコース高めに速球、低めにスライダーと言う配球をアバウトながら投げ分けつつ、インコースにも速球が決まることがある。しかし右打者以上に制球力はアバウトで、真ん中〜高めのゾーンに甘く入る球も少なくない。ただ右打者にはあまり投げなかったフォークを投げる機会が増える特徴があり、この球の精度が上がって来ると投球内容も全然変わって来るだろう。


(投球技術) 

 ある程度アウトコース中心にストライクは先行出来るし、速球以外でも一応スライダーでカウントが取れる。左打者に対しては、ある程度内角への厳しい攻めも可能だと言える。ただ球速を殺したカーブやタイミングを抜くチェンジアップはなく、現在は一辺倒な投球が目立つ。縦の変化は、まだまだ発展途上でその精度は低い。そのため三振の多くは、ズバッと好いところに決まった時の速球であることが多く、球速ほど打者からは空振りは奪えない。勝負どころとそうでない時の力の加減は違うが、力むと身体が突っ込みバランスを崩しやすい。現時点ではややもっさりしていて、テンポ好く投げるとか「間」を考えて投げると言うよりは、力一杯投げ込む力投派の傾向が強い投手だ。





(投球フォーム)

 いつものように、「迷スカウトの足跡!」
2006年12月13日更新分に、彼の投球フォーム連続写真があるので、そちらも参照しながら読み進めて欲しい。

<踏みだし> 
☆☆☆☆

 足の横幅を取り、バランス好く立てている。ノーワインドアップから、足の反動を活かし勢いをつけ、足を高い位置まで引き上げることが出来ている。このように反動を活かすタイプは、大きなエネルギーを得られる一方、制球力は乱れやすい。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆☆☆

 写真2を観ると、軸足の膝がピンと伸びきることなく立っている。これにより余計な力みはなくなっており、背中も後方に預けることで、全体のバランスや軸足の股関節にもしっかり体重が乗せることが出来ている。恐らく彼のフォームがバランスを崩すのは、この軸足への体重の乗せが存在しないクィック動作に入った時だろう。

<お尻の落としと着地> 
☆☆☆

 写真3を観ると、引き上げた足を高い位置でピンと伸ばすので、お尻がしっかり一塁側に落ちている。これだけの体格の投手が、しっかりこういったフォームが出来ているのには好感が持てる。ここまでの動作ならば、将来的にブレーキの効いたカーブや落差の鋭いフォークの習得も可能なように思える。

 しかしこの投手が残念なのは、この後の動作から。着地までの粘りに欠け、実にあっさり地面を捉えてしまっている。これでは、打者からタイミングが計られやすいだけでなく、好い変化球を投げるための身体を捻り出す時間が不充分になってしまう。投球動作で最も大事な着地のタイミングを遅らせる意識が足りないのだ。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆

 写真6を観ると、投げ終わった後にグラブが後方に溢れ出している。グラブをしっかり抱えられないのと、外に逃げようとする遠心力を内に抱えきれず、左右の制球力が乱れやすくなるのだ。

 写真5を観ると、足の甲の押しつけが短く粘りに欠ける。これだと上体が浮き上がり、球が上吊りやすくなる。制球を司さどる2大動作が疎かなところが、制球力のアバウトさにもつながっている。

<球の行方> 
☆☆☆

 写真3の時点では、ある程度ボールを持っている腕を隠せてはいるが、写真4の着地の時点では、ボールは打者から見え始めている。すなわち身体の開きは早い方なのだ。身体の開きが早いと、打者から読まれやすく、例え150キロの速球を身につけても、その効果は薄くなってしまう。

 また写真4のテイクバッの際に肘が下がってしまい、そこから球を押し出すようなフォームになってしまっている。もう少ししっかりテイクバックを取りたい。ただ写真5の腕の角度、そして球持ち自体は悪くない。

<フィニッシュ> 
☆☆☆

 振り下ろした腕は身体に絡み、投げ終わった後も足が跳ね上がり、前には体重が乗っている。ただし写真6のように、投げ終わった後に一塁側に上体が流れることが多くバランスが悪い。これは、まだ下半身が未熟で、的確なステップの位置が出来ていない、あるいは上半身の力に下半身が負けてしまっていることを示している。

(フォームのまとめ)

 下半身の未熟さからバランスを崩すことが多く、それが開きの早いフォームにもつながって、制球力・実戦的なフォームと言った観点の課題となっている。最大の課題は、中途半端なテイクバックにあり、これを改善して行かないと、将来的にも厳しいことになりそうだ。肉体的な完成度は高いため、今後球速を伸ばし行けるかは微妙だが、技術的なロスをなくすことで、投球を改善して行くことは充分期待出来るであろう。





(最後に)

 投手としての技量は、全国制覇をした吉岡 雄二の2年時と遜色はないだろう。吉岡も、実は2年時にはほぼ完成され、3年時に大きく伸びた印象は少ない。それでも彼が高く評価されたのは、最後の夏に甲子園優勝投手と言うアピールが出来たこと、そして何より軸のブレない抜群の強打が、スラッガーとしての可能性を大いに感じさせてくれたからだ。

 あくまでも大田の場合は、投手・吉岡と比較しての問題で、打者として評価されていた吉岡とは少し立場が違う。ただ吉岡以上に未完成な部分を残している分、伸びしろも期待出来るのではと言う部分はある。いずれにしても、投球フォーム・投球内容とも課題も多いので、一冬超えての成長を期待したい。いずれにしても、来秋までドラフト候補としてマークし続けることが出来る素材には変わりはない。


(2006年 12月15日更新)