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香月 良仁(24歳・熊本ゴールデンラークス)投手 180/79 右/右 (第一経済大出身)





                 「130キロ台の速球派!」





 一見、平凡な投手に見える 香月 良仁。兄は、オリックスで活躍する香月 良太。130キロ台中盤のストレートと言う際だつ球威・球速がないのに、この速球で押す速球派なのだ。





6:37〜7:18

(投球スタイル)

 オーソドックスな右の本格派。球速は、常時135キロ〜後半程度と、際だつ球威・球速はない。変化球も、カーブ・チェンジアップと、それほど多彩でもない投手。適度にまとまった極普通の投手なのだ。

ストレート 135〜130キロ台後半ぐらい

 驚くような球威・球速はない。ただ彼のストレートと言うのは、打者が面白いように空振りを誘う。少なくてもその球速よりも、相当速く感じられるのか、タイミングが合わせ難いのだろう。ストライクの殆どは、この球で稼ぐ。

カーブ  105キロ〜110キロぐらい

 縦に大きく割れるカーブを織り交ぜて来る。この球は、カウントを稼ぐと言うよりは、ストライクゾーン〜ボールゾーンに切れ込む球で、緩急を効かせる意味と、空振りを誘う役割を果たす。少し西武の岸投手のようなカーブである。

チェンジアップ 110キロ台後半

 左打者のアウトコース中心に、思わずタイミングを狂わされる球で、その威力はかなりのもの。速球の割合の多い投手なので、この球が決め球的な働きをする。

その他

 牽制・フィールディングは、それなり。クィックも1.15〜1.20秒と基準を満たす能力がある。投球をまとめるセンスもあり、試合を壊さない計算しやすい投手。凄みはないが、安心して見ていられる投手だと言えよう。

<右打者に対して> 
☆☆☆

 この投手は、けして球威・球速があるわけではないのだが、完全に速球中心の組み立てとなっている。その投球を支えるのが、アウトコース高め、アウトコース低め、インコース低めの三つのゾーンに投げ別ける速球のコントロールにある。時々にカーブを織り交ぜて来るが、この球も先に述べた通り、ストライクゾーン〜ボールゾーンの低めに決まることが多く、目先を変えることはあっても、カウントを稼ぐ球ではない。

 この二つの球種で抑え込むと言う大変興味深いピッチングスタイルなのだ。速球を自在に投げ別ける制球力があれば、社会人レベルの打者にも充分対峙出来ると言う、ピッチングのお手本のような投球をするのだ。

 ただ如何せんそうだとはいえ、プロで勝負するのには、もう一つカウントの取れる変化球、空振りの取れる変化球が欲しいと言う気はしてくる。

<左打者に対して> 
☆☆☆

 左打者に対しても、アウトコース高め・アウトコース低め・内角と三つのゾーンを中心に、速球を集めて来る。最大の違いは、カーブの他に、アウトコースにタイミングを狂わすチェンジアップがある点だ。この球は、非常に有効で、投球の幅を広げるには充分だ。

 ただ球種が増えているのは良いのだが、左打者に対しては若干制球力が甘くなり、真ん中高め近辺に怖い球が行く傾向がある。この辺は、プロの打者は見逃さないだろうから充分注意したい。



(データから考える)

 今年の都市対抗予選で4試合に登板。まさにエースとして、チームを都市対抗に導いた時のデータを参考に考えてみたい。

4試合 24イニング 被安打16 11奪三振 四死球9 防御率 2.25


1,被安打は、70%以下に抑えたい ○

 被安打率は、66.6%。それほど連打を食らわないタイプの投手。それは、実際の投球を見ても、ランナーを背負ってからの粘り強さを感じさせる。

2,奪三振 ÷ イニング数 = 1.0前後 ×

 球の威力で圧倒するタイプではないので、この数字は当然だろう。ただ今年の都市対抗・東海理化戦では、6回1/3イニングで6奪三振と好投し、イニング数並の奪三振を奪うところも魅せていた。

3,四死球は、イニングの1/3以下に △

 予選の四死球率は、37.5%と若干数字をオーバーしていた。都市対抗本戦では、6回1/3イニングで、四死球は0と安定。元来は、この数字を満たすぐらいの制球力はありそうだ。

4,防御率は、2点台で並・1点台で一流 △

 社会人でプロを目指すならば、1点台ぐらいの図抜けた防御率が欲しい。その点2点台前半と言うことで、悪い数字ではないが、驚く程の安定感ではない。

(データからわかること)

 データからも、実際のピッチング同様に微妙な選手であり、現時点では、本当に今のピッチングスタイルで、通用するのかと言う疑問点は残る。



(投球フォーム)

 投球スタイルでも、データから考察しても、このピッチングスタイルでプロでも通用するのかは、はっきりわからなかった。今度は、ピッチングスタイルの観点から考えてみよう。いつものように「野球兼」の
2008年11月20日更新分に、彼の投球フォーム連続写真が掲載されているので、参考にして欲しい。

<踏みだし> 
☆☆

 写真1を見ると、ノーワインドアップで構え、足の横幅は狭く、足も引かれていないなど、あまり良い立ち方だとは言えない。写真2までの足の引き上げも静かで、それほど高い位置まで引き上げない。典型的な先発タイプで、フォーム序盤からのエネルギー捻出は低い。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆

 写真2の軸足の膝から上に注目して欲しい。多少背中を後ろに預けることでバランスを取ろうとしているが、膝から上がピンと真上に伸びてしまい、膝に力みを感じるのが気になる。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと

1,フォームに余計な力が入り力みにつながる

2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい

3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い

などの問題が生じる。

<お尻の落としと着地> 
☆☆☆

 写真3を見ると、引き上げた足が地面に向かってピンと伸びているので、お尻の一塁側への落としは甘くなる。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながるからだ。

 また写真4の着地までは、前に大きくステップすることで、そのタイミングを遅らせようとしている。いは、足を地面に着地させるまでに前への一伸びがあり、着地のタイミングを遅らせることが出来ている。着地を遅らせる意味としては

1,打者が「イチ・ニ〜の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ〜の」の粘りこそが、投球動作の核となる。

2,軸足(写真後ろ足)〜踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。

3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。着地は、投球フォームの核となる部分で、メジャーリーガーの一流選手の多くは、このことを強く意識してプレーをしている。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆☆☆

 写真6を見ると、最後までグラブを身体の近くに抱えられている。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。

 写真5の右足スパイクに注目してみると、足の甲の押しつけの深さ・粘りもそれなりだと言える。足の甲で地面を押しつける意味としては、

1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ

2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える

などの働きがある。

<球の行方> 
☆☆☆

 写真3を見ると、前の肩と後ろの肩を結ぶラインは、打者に真っ直ぐ伸びていないので、ボールを隠すことが出来ている。ただ写真4の着地の瞬間には、ボールを持っている腕が、打者から見え始めようとしているので、身体の開きはやや早いほうに見える。

 写真5を見ると、腕の角度に無理がなく、それでいてしっかり角度がつけられているのは良い。また何よりボールを長く持っていられる、球持ちの良さが素晴らしい。140キロ弱の球速でも、速球派であり続けられる一番の理由は、人並み外れた球持ちの長さにありそうだ。ちなみにボールを長く持つ意味としては

1,打者からタイミングが計りにくい

2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる

3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい

などがあげられる。

<フィニッシュ> 
☆☆☆

 写真6を見ると、振り下ろした腕は身体に絡んでおり、球持ち・腕の角度が良いのがわかる。また地面の蹴り上げも良いのは、前にしっかり体重が乗っている証だろう。ただ時々、身体が突っ込んで投げ終わった後、上体が流れることがあるのが気になる。

(投球フォームのまとめ)

 投球の4大動作である、着地・球持ち・開き・体重移動の観点で言えば、やや開きが早い気がするが、球持ちが素晴らしい。この点は、今年の候補でもトップ級の技術だと言えよう。





(最後に)

 実際投げ込む球の球威・球速不足は気になるが、それを補ってあまりある速球の質と制球力があるのは確か。ただやはりプロの一軍で通用するためには、カウントの取れる変化球と武器になる変化球が欲しいかなと言う印象は否めない。ただそのときに、カーブなりフォークなどの変化球を習得出来るフォームなのかと言われると微妙だと言わざる得ない。

 精神的な丹念に粘り強く投げ込む強い精神力があるのだろう。ただプロに混ぜた時に、何か突出した何かがあるのか?と言われると中々困ってしまう。こういった選手が、プロでどの程度やるのかは、個人的に大変興味深い。比較的完成度も高いので、ファームならば早い段階で実戦登板出来そうだし、そこで数字を残せば一軍も視野には入れられであろう。ただ一軍で活躍するためには、プロ入り後のプラスαが必要だと考え、現時点では「旬」ではないと判断する。今後の更なる武器の習得に期待したい。


楽天


(2008年・都市対抗)


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