10kp−10
| 風張 蓮(岩手・伊保内)投手 180/80 右/右 |
「本当に存在していたんだ。」 彼の名前を、初めてネットで目にした時、その聞き慣れない学校名や劇画チックな名前に、私は本当に実在する人物かどうか疑いを持った。しかしそれからしばらくして、実際に雑誌などでも、その名前を目にする機会も増え、この選手が本当に実在する人物だと納得できた。 今回は、試合の模様を録画して頂き、お送り頂いた方のおかげで、彼の投球のほとんどを確認することができた。ただ春季岩手大会の風張は、爪を割ってしまい本来の姿からは程遠い内容だったと言う。実際に生で確認した選手でもなければ、本来の彼の姿とは違っていたことからも、今回は、私が見た試合の模様から、簡単に感じたことを書き連ねるに留めたい。 (投球スタイル) 想像以上に骨太で、ガッチリした体格の持ち主。投球自体も完成度の低い素材型とか、球威に欠けるひ弱なタイプとか思っていたが、全く持って私の想像は間違っていたことを思い知らされた。まさに、百聞は一見にしかずである。 (投球内容) かなりマイペースな選手といった感じで、ランナーを背負っても、自分のペースを乱すようなタイプではない。そのためマウンドでは、随分と落ち着いて投げている印象がある。ゆったりとワインドアップで振りかぶり、そのフォームから投げ込まれる速球は、最速で147キロに到達したと言われる。 ストレート 135〜140キロ強ぐらいか この日は、爪の割れた影響からか、本来の球ではなかったと言う。しかし一球・一球・非常に球威のある力強い球を投げ込んで来るので驚いた。逆にスカウトが絶賛していたような、伸びのある球と言うよりは、球威で詰まらせる感じに見え、これが普段の彼の球とは、随分と違うと言うことなのだろうか?少なくても球威・球速は感じられ、非常にボリューム感のある速球を投げ込んで来る投手だった。 フォーク 爪の影響からか、変化球は速球とフォークとのコンビネーション。このフォークも、ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込むと言うよりは、チェンジアップ気味に、カウントを稼ぐ球となっている。落差としては、空振りが誘えない物足りなさはあるものの、すでにフォークを多投して操るだけの術は身につけているようだ。 その他 変化球は他に、カーブ・スライダー・シュート・チェンジアップ・ツーシームと、普段はかなり多彩らしい。特にブレーキの効いたカーブには定評があるそうで、そういった多彩な変化球を、実際にはどうやって織り交ぜて来るのかは興味深い。 牽制も鋭く、フィールディングも素早くマウンドを駆け下り、クィックも1.05秒前後と高速。打者の内外角を投げ別けられる制球力に、落ち着いたマウンド捌きなど、けして球の威力に頼ったり、素材の良さに胡座をかくような選手ではない。投手としてのセンス・制球力などに破綻のない、バランスの取れた投手だと言えそうだ。 <右打者に対して> ☆☆☆ 右打者に対しては、アウトコース中心に球を集めて来る。また時々意識しているのか?球が抜けていたのか?は定かではないが、打者の頭近くに厳しい球を多く投げ込んで来る。この日の風張は、内外角に球を散らせつつ、フォークで仕留めると言う投球パターンだった。 ただこの日は、外角高めに甘く浮いた球を、狙い打ちされることになる。普段は、もう少し球が低いのか?あるいはこの高さでも、伸びがあるから空振りが取れて大丈夫なのかは、この試合を見る限りよくわからなかった。彼の素晴らしいのは、外角への球筋だと言われている。 <左打者に対して> ☆☆☆ 左打者に対しても、外角高めに速球、低めにフォークとのコンビネーションでカウントを整えつつ、内角も突いて来る。やはりこの試合では、高めに甘く入った球を痛打される場面が右打者同様に目立っていた。この一番得意なゾーンへの球の伸び・微妙な制球に欠いたところが、花巻東打線に、今まで経験がないほど打ち込まれた要因だったのかもしれない。 (投球のまとめ) 速球とフォークのみの単調なコンビネーションで、狙い球を絞られ高めの甘い球を痛打されていた。またその高めの速球は伸びを欠いており、この球をことごとく打たれることになる。こうやってみると、やはり爪の影響が大きかったのかもしれないが、悪ければ悪いなりの投球ができなかったことに、まだまだ物足りなさを感じなくはなかった。 (投球フォーム) お尻を一塁側に落とせ、更に着地のタイミングも悪くない。そのため将来的にも、見分けの難しいカーブやフォークを武器にできる可能性を秘め、多彩な変化球を操る器用さは兼ね備えていそうだ。 グラブもしっかり最後まで内に抱えられるので、両サイドへの投げ別けもでき、足の甲での押しつけも、深さ・粘りとも悪くない。ボールが高めに浮いていたのは、フォームが原因と言うよりは、やはりこの日の爪の状態が大きく影響していた可能性は否定できない。 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」のいずれにも大きな欠点はなく、土台となる投球フォームは素晴らしい。あとは、腕をもっと強く振って、躍動感が出てくるようならば、将来的にもかなり期待できそうだ。この投手は、どちらかと言うと、柔らかさよりも、馬力のある力強さを売りにするタイプのように思えます。 (プレースタイル) ランナーを背負っても、ちゃんと一息つくように軽い牽制を入れ、自分を落ち着かせて投球できるなど、かなりマイペースでピンチに動じないタイプであるように思える。そういった肝の据わった部分がある反面、それまでしっかり投げ込んでいたピッチング練習において、最後の球を軽く投げていたのは、爪の調子云々ではなく、普段からそういったピッチングスタイルなのではないのだろうか?こういった最後に抜いて投げるタイプの投手は、詰めの甘いタイプが多く、勝負どころでポカを食いやすい。彼も勝負どころで甘く高めに入る球も多かったので、その辺を夏は注目してみてみたい。 (今後に向けて) これで本来なら、常時140キロ級・最速で140キロ台中盤を記録し、球の伸びが素晴らしいのであるならば、上位指名も意識できる素材なのだろう。カーブを中心とした多彩な変化球も織り交ぜられる器用さも兼ね備えるのならば、選抜大会中に岩手で行われた練習試合に、スカウトが殺到した理由も充分に頷くところ。 心技体の三つの要素でも、才能的な部分では、充分プロの素材であることがわかった。技術的にも、想像以上に土台のしっかりしたフォームであり、多彩な変化球を操れる器用さに、マウンド捌きもけして悪くない。その技量も、高校生としては合格ラインなのだろう。あとは、プロで飯を食いたいんだと言う貪欲さやこだわりが、そのプレーの端々から感じられるようになれれば、スカウト達も自信を持って指名へ動き出すのではないのだろうか。 その反面、普段から高めに浮くのか?勝負どころでの詰め甘さや投球のメリハリはどうなのかと言う疑問は、この試合で残った。それだけに夏には、ぜひ本調子の彼をみたいと思わせてくれる選手だった。そういった気持ちにさせてくれる投球が見られただけでも、春の時点では大いなる収穫。この試合の模様からだけでも、ドラフト候補のその片鱗は充分に伺うことはできた。あの菊地雄星(花巻東−西武)に続いて、岩手からプロの世界に足を踏み入れて行くのではないのだろうか! 楽天 (2010年 春季岩手大会) |