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柳田 将利(青森・青森山田)投手 174/89 左/左





                    「何が変わったのか?」





 中学時代から柳田の才能は、関西でも鳴り響いていたと言う。そんな図抜けた才能が、青森の地にやってきた。その才能が青森のみならず、全国の人達に知れ渡るのに、それほどの時間を要さなかった。1年時から「青森に柳田あり!」と言われ、御山の大将的な存在ではあったが、年々着実な成長を遂げてきた。

 その柳田に大きな転機となったのが、今春の選抜大会だったのではないのか。大会屈指の左腕投手として注目を浴びた緒戦、天理高校に見事なまでに粉砕され、柳田の評価は急落した。しかしリベンジを計ったラストサマー、再び柳田の評価は、再評価されることになる。この春〜夏にかけて、柳田はどのような変貌を遂げたのか、考察したいと思う。



(投球内容)

 まず一番の違いは、春よりも上体を強く振れるようになった点である。そのことにより球速のみならず球自体にキレが出てきたこと。ゆったりとしたフォームで振りかぶりながら、鋭く上半身を振ることで、打者はギャップを感じ、ワンテンポ差し込まれるフォームになってきたことが、大きな成長だと言えるであろう。

 球速面でも常時140キロ台を記録し、MAXでは140キロ台中盤をも叩き出せるまでになってきた。常時140キロ台を連発出来る選手は、左腕豊作と言われる05年のドラフト戦線でも、高校生では、辻内(大阪桐蔭)と、この柳田将利ぐらいだと言えよう。主な変化球は、110キロ前後のカーブとのコンビネーション。時には120キロ前後のスライダーを織り交ぜるが、現在ではまだまだと言った感じだ。

 高校生左腕と言うこともあり、速球と、もう一つの変化球レベルが高ければ問題はない。ただしここで一つ大きな問題が生じる。この緩急・カウントを稼ぐのに重要なカーブが、プロでも使える代物であるかと言うところである。このことについては、後ほど投球フォームの解説のところで触れて行きたいと思う。


(右打者に対する攻め)☆☆☆

 図1は、投手側から捕手側を観た時の右打者に対するボールの分布図である。A〜Iは、ストライクゾーンを示し、その周辺の(あ)〜(た)は、ボールゾーンである。

 投球の大部分は、速球とカーブとのコンビネーションで成り立っている。内外角の比率は、3:7程度と効果的に内角を活かした配球が出来ている。主に速球(青字)は、右打者アウトコース高めAのゾーンとその周辺の(か)(い)のゾーンかアウトコース低めのGのゾーンに球を集める。特にアウトコースのAとGの高低差は、意識して使われているのではなく、リリースが安定しないために球が散っていると考えられる。勿論アウトコース低めのGのゾーンに決まる速球で三振を奪うことが多い。

 内角への速球は、空振りを誘うとか詰まらせると言う意味合いよりも、外角の球を活かすためのものだと考えられる。ただ全体的に速球の制球力は、大まかな両サイドの投げ別け程度で比較的アバウトな制球力だと言えるであろう。時には、ど真ん中のEのゾーンに甘く入ることも少なくない。

 もう一つの球種であるカーブ(赤字)は、DやCと言った良いゾーンに決まることが多い。ただし、これがどこまで内外角を投げ別けて投じられているかは疑問であり、たまたまチェックした試合が、両コーナーに綺麗に散っただけなのかもしれない。この球で三振を奪うことは少なく、緩急・カウントを稼ぐ意味合いが強い。


図1
               

                         右打者頭 
                          右打者足元



(左打者に対する攻め)
☆☆☆

 図2は、左打者に対する配球分布図である。左打者に対しても右打者と同様に、速球とカーブとのコンビネーションである。最大の違いは、左打者に対しては、真ん中〜アウトコースにのみ球が集まると言うことはなく意識的に内角を突くことはない。主に速球は(青字)は、アウトコース高めのCのゾーンから高めに抜けた(お)のゾーンに多く集まる。そうかと思いきや、アウトコース低めのI周辺の(き)や(た)と言ったゾーン、あるいは低めボールゾーンの(そ)のあたりに行く球も少なくない。これは、高低に投げ別けていると言うよりは、リリースが安定せずに力の入れ加減で制球が随分と左右することを意味しているのではないんだろうか。

 左打者に対するカーブ(赤字)は、アウトコース高めの(き)や低めの(I)のゾーンなどに行くことが多い。しっかり指にかかって曲がりきった時とそうでない時の違いだと考えられる。気になるのは、速球もカーブも、真ん中〜高めの甘いゾーンに行くことが多い点である。そして何より、この投手は左打者からも結構痛打される投手であり、左対左の有利さが意外に少ない左腕ではないかと予測される。


図2
               

                         
  



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(投球フォーム)

<踏みだし> ☆☆☆

 写真1は選抜の時のもの、写真2はこの夏のものである。やや写真を写すタイミングと寄り方が違う点があることは予めご了承願いたい。ただ両方の写真からわかることは、両足のスタンス幅は、肩幡程度と平均的なことがわかる。また写真右足にあたる助走を付ける足が、比較的後ろに引かれていないので、それほど大きな反動を得にくい大人しい踏みだしのフォームだと言えるであろう。

写真1              写真2
 

 写真3と4を比べても、足の引き上げの高さは変わらない。それなりの高さまで引き上げられており、そこそこのエネルギー捻出が出来ている。全体的に躍動感溢れる力投派と言うよりは、静かに自分のペースで投げ込む先発タイプのフォームだと言えよう。

写真3              写真4
 

<軸足への乗せとバランス> ☆☆☆

 写真3や4を見ても、軸足の膝がピンと伸び気味で、やや上体が立ったフォームになりがちだ。これだとフォーム全体に力みが生じやすかったり、身体が突っ込みやすくなったり、軸足への体重の乗せ具合も甘くなる。もう少し背中を後ろに預けられると良いのだが・・・。

<お尻の落としと着地> ☆☆☆

 それほど選抜の時の夏の時とでは、動作に差がないように見える。引き上げた足をピンと伸ばす時に、地面の方向に伸びているので、ややお尻の落としが三塁側ではなくバッテリーライン上に残る。これだと身体を捻り出すのに充分なスペースが確保出来ず、ブレーキの効いたカーブの修得やフォークなどの縦系の球種の修得が苦労することが予想される。すなわち緩急・空振りを狙う球種の修得が難しく単調で一本調子の投球に改善が見られず、伸び悩む可能性が高い。

 私が冒頭でも触れたように、柳田のカーブがプロで使える代物かどうか?と言う疑問は、まさに、この部分のフォームに大きな原因がある。身体を捻り出すのに充分なスペースがないと、手首を捻ることでカーブを曲げることになる。これでもカーブを曲げることは可能であるのだが、どうしても腕の振りが鈍くなり、打者からは球種が見破られてしまうのだ。現代野球では、カーブを武器に出来る投手が少なくなったのは、このお尻の落としがしっかり出来る投手が減り、腕の振りが緩まないでカーブを投げられる投手が少なくなったからである。プロで通用するためのカーブとは、手首で曲げるのではなく、指の間から抜くような感覚のカーブが求められる。そのためには、手先で捻るのではなくフォーム全体で身体を捻り出さないと投げられないのだ。すなわち柳田のカーブが通用するのは、対戦機会の少ない高校生相手・それも打力が劣る高校生相手だからであって、プロ相手にこのカーブが使えるかは大いなる疑問となる。

 ましてカーブ以外の変化球がまだまだ未成熟な彼にとって、プロで使える可能性がある球種は、速球のみと言うことになってしまうのだ。これは彼の将来を予測する時に、大いに暗雲が立ちこめる部分である。

写真5              写真6
 

 ちょっと写真7と8のタイミングが違うことをご了承願いたい。ここで注目されるのは、軸足(写真左足)の陰に隠れることなく踏み込み足(写真右足)が着地されている。ただ着地の位置・スタンス幅は、ほとんど春と変わっていないのではないのだろうか。

 ただし春は粘りなく身体突っ込んで着地が早くなってしまっていたところを、空中で足をピンと伸ばすことを多少なりとも意識出来たのか、あるいは下半身強化の賜なのかはわからないが、着地するタイミングが春よりも遅れ、フォームに粘りが出てきた点である。この着地のタイミングを遅らせることこそ、投球動作の核となる部分で、彼の技術的な一番の変化は、ここにあると言えるであろう。

写真7              写真8
 

<グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆

 まずは、写真9と10の時のグラブの位置に注目して欲しい。腰のあたりにしっかり添えられていることがわかる。これは、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込むことが出来ている証なのだ。そのため左右の制球力は安定しやすい。

 写真7,8の左足のスパイクに注目して欲しい。足の甲で地面を押し付けることに成功している。これにより浮き上がろうとする力を抑え込み、球が浮き上がるのを防ぐ。ただし柳田投手の場合、重心が深く沈み込み過ぎて膝に土がつきそうである。ここまで重心が低いと足裏のスパイクのエッジが地面に引っかかり難く、その効果が薄くなりやすい。

 ただこの二つの動作を見る限りもっと制球力があっても良いはずなのに、実際は、かなり制球力はアバウトだ。それ意外に制球を乱す要因として、リリースの仕方に問題がある可能性が高い。

写真9              写真10
 

<球の行方> ☆☆☆

 少し遡って、写真5,6を見てもらいたい。グラブをそれほど高い位置でフォームをリード出来てはいないが、前肩を斜め前に突きだし、後ろ肩と前肩を結ぶラインが、打者に真っ直ぐになっていないことがわかる。これは、長くボールの出所を隠すのに重要な要素だ。写真7,8を見ても、前肩が開き始めてもボールを持った腕は、背中より後ろにあるので、打者からは中々球が見えてこないはずだ。このことからも、柳田投手は、けして球の出所は見やすい投手ではないだろう。むしろ見えないところから、ピュッと上体を鋭く振るので打者は、差し込まれやすいのである。このことこそ、柳田の最大の良さである。たたし、ここまで肩が中に入り込むと言うことは、肩の稼働域が広く非凡な資質の持ち主であることがわかる。ただし肩が背中のラインよりも入り込む投手は、肩を痛めやすいので充分アフターケアに注意してもらいたい。

 今度は、写真9,10のリリースの角度に注目して欲しい。それほど腕の角度も変わっていないことがわかる。角度自体は並で上背もない投手だけに、球の角度で威圧したり、幻惑するタイプではなく、フォームの動きのギャップで勝負するタイプの投手だと言うことがわかる。

 問題は、リリースの仕方である。写真9,10を見て頂けるとわかると思うが、身体から遠い位置で腕をブンと振るタイプのフォームである。このような投手は、リリースが早くなる。リリースが早いと言うことは、打者からタイミングが取りやすいだけでなく、球にバックスピンがかけられず、球が打者の手元での伸びに欠け(ただし彼の場合は、上半身を鋭く振れるのでキレが生まれるので問題はない)たり、指先まで力を加えられないので、リリースが安定しなかったりして、制球力が安定しない。柳田投手の制球力が大きくバラツクのは、このリリースの仕方に大きな原因があると考える。こういったフォームが改善出来るかは、かなり疑問だと言わざる得ないだろう。

<フィニッシュ> ☆☆

 面白いのは、写真11の選抜の時の方が、写真12の夏の時よりも、フィニッシュに躍動感がある。それは、跳ね上げられた左足の上がり方を見れば、前にしっかり体重が乗っているのがわかるからだ。だからと言って選抜の時のフォームの方が好いと言うつもりはない。写真12の夏のフォームを見ると、蹴り上げが弱く体重の乗りが、もう一つなのがわかるのである。

 この原因として考えられるのは、着地の時のスタンスを取りすぎて、膝に土がつくぐらいに重心が沈み込み過ぎているからだろう。踏み込んだ前足と軸足の間にお尻が落ちてしまい、重心を深く沈めているにも関わらず体重が前に乗ってこないことが考えられる。

 最後に、振りおろした腕が身体に巻き付いてこないところが気になる。一つはリリースが早く腕の角度が並なためだろう。もう一つは、体型に比べ腕が短いことが考えられる。「腕の短い投手は大成しない」とよく昔から言われることだが、もしその理論が正しければ、柳田の投手としての将来性に不安がよぎる。

写真11             写真12
 


楽天


(最後に)

 投球フォームを見る限り、春〜夏にかけて大きな変化は感じられない。選抜の悔しさを糧に下半身をいじめ抜き、キレのある身体と着地の粘りを生んだのが、甲子園での好投につながったのではないのだろうか。技術的・素材的な観点で言えば、ドラフト候補としては際だつ程の素材ではない。

 何より気になるのが、将来的に速球以外の変化球や制球力に改善が期待出来るか疑問が残るところである。この部分に改善が見られさえすれば、マウンド度胸もいいし、マウンド捌きなど総合力に優れた投手だと言えるであろう。

 一部で評価される打撃センスに関しては(私も打者としての資質を買う一人だが)、走力・守備力などに不安がある点と高校生左腕で140キロ台を連発素材から言っても、市場のニーズは完全に投手だと言うことになるであろう。彼が打者としての才能を発揮する時は、すでに投手としての見切りが付けられた時と言う、あまり有り難くない状況だと思われる。まずは、プロスカウトが評価する「投手柳田」で、プロ世界に挑んでもらいたい。実際には



                    「嶋二世(広島)」




として、素質が開花する日が来るのかもしれない。 


(2005年 9月30日更新)


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蔵の評価:
☆☆







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柳田 将利(青森・青森山田)投手 177/89 左/左


 中学時代は関西屈指の左腕として知られた逸材で、ズングリムックリな体型ながら青森では、下級生ながら投打でトップクラスの力量と迫力を兼ね備えた将来楽しみな逸材として県内の話題を独占してきた。そんな彼が始めて全国大会に、その姿をみせたのである。今回は投打の両面から彼を考察したいと思う。

(投球編)

 昨夏までは、MAX138キロと言われていた球速は、常時125〜130キロ強程度であったが、この夏には、正真正銘で135〜140キロ級の球速をコンスタントに叩き出すまでに成長している。こと投手としての力量は、昨夏よりも一年で格段に成長を遂げていると言えそうだ。

(右打者に対して) ☆☆

 ウエートを活かした重い速球を武器に、ほとんどがカーブとスライダーとのコンビネーションで構成されている。右打者には、外角中心にアウトハイとアウトローの二箇所に球が散っているが意識して高低を投げ分けているわけではないと思う。インハイにも速球を投げ込むなど、両サイドにアバウトに投げ分ける制球力はあるようだ。

 真ん中近辺に甘く入る球は、それほど多くないのだが、ヒットを打たれているのは、ほとんどが右打者に対してである。そしてその球は、高めに甘く入った速球であるようだ。カーブは投球の中で有効に作用しているようで、狙い打たれることは少ない。今後は、後もう一つ縦系の変化球が修得出来ると面白いのだが、現状のフォームだと難しいのかもしれない。

(左打者に対して) ☆☆☆

 左打者に対しては、内角を突く意識はないようだ。これは腕が身体から離れた位置を軌道しブンと投げ込むフォームだけに、左打者の内角への制球は球が抜け気味で、非常に危険だからだと思われる。現状は、アウトコース高めに速球、そして真ん中〜外角にカーブを決める投球に終始している。配球自体には偏りがあるのだが、左対左の球筋の有利さと重く力強い速球が、外角に決まれば並の左打者では、なかなか彼の球を捉えるのは難しいのかもしれない。

(投球フォーム)

写真は、05年の選抜の時のものを参考にして技術編を進めて行こうと思う。

<踏みだし> 
☆☆☆

写真1


 ワインドアップから振りかぶり、ゆったりと静かに入って行くフォームだ。プレートに両足を揃えることもなく、適度に両足の幅も取っていることからも、エネルギーが捻出出来る体制で構えられている。

 足の引き上げはさほど高くないし、躍動感があるタイプではない。どちからと言うと先発タイプで、静かなフォーム導入を心がけ、スタミナのロスと制球の乱れを防いでいる。

写真2


<軸足への乗せとバランス> 
☆☆

 写真2を観て頂ければわかると思うが、軸足一本で立った時のバランスがやや突っ込みがちになっている。以前に課題にあげていた軸足の膝が充分に体重が乗る前に折れてしまう欠点が修正され、重いウエートをフルに活かせるようになってきたのは好感。ただし全体のバランス・体重の乗せ具合は、イマイチだ。

<お尻の落としと着地> 
☆☆

写真3              写真4
 

 昨年までは、空中で引き上げた足をピンと伸ばす動作がなく、お尻を三塁側に落とすことが出来なかった。選抜では、一塁側ではなく地面に向けてではあるが、足をピンと伸ばす動作が出来るようになり、お尻を三塁側に落とすことが出来るようになってきた。

 ただし、昨年までは引き上げた足を二塁側にまわし込むことで、やや突っ込みがちの身体のバランスを修正することが出来ていたが、選抜ではこの動作が陰を潜め着地が早くなってしまっている。これでは、身体を捻り出す充分な時間を確保出来ないだけではなく、打者からはタイミングが合わせやすく、身体の開きも早くなる。選抜で140キロ台の速球をことごとく打たれた最大の理由は、ここにあるのだろう。着地までの時間を稼ぎ、打者のタイミングをずらすことが、最大の課題だと言える。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆☆☆

写真5              写真6
 

 まず写真5.6のグラブの位置に注目して欲しい。腰をしっかり腰の位置に抱えられており、投げ終わった後は、少々腰の位置から離れてはいるが、グラブを抱えることを意識出来ている。これにより外に逃げようとする遠心力を押さえ込め、左右の制球を中心に安定しやすい。これは、昨夏よりも格段によくなっている。

 また足裏の一部分を支点にして回転出来ているが、足の甲でしっかり地面を抑え続けていないので、上に浮き上がろうとする力を抑え込めていない。この部分は、昨夏同様に改善出来ていない。しかし足の甲では押さえつけられてはいないので球は上吊りやすいが、写真左足が身体を回転させる際に、浮いてしまっていないので最低限の働きは出来ている。

<球の行方> 
☆☆

写真7


 写真7を観てもわかるように、テイクバックした際に肩の稼働域の柔らかさから腕が遅れて出てくる良さがある。これは、彼の優れた資質の一つだと言えるであろう。

写真8


 少し肘が下がって身体から遠回りの軌道を辿り、腕を強引にブンと振るので、肩への負担も大きい。こういったフォームの選手は、指先で微妙なコントロールがつけにくいので、制球力はアバウトになりがちだ。腕を身体から離れた位置でリリースするので、どうしても球の押し込みは悪く球が抜けやすい要因を作る。

<フィニッシュ> 
☆☆☆

写真9


 腕を強く振れるところは評価出来るが、腕をブンと身体から離れた位置で放すので、振り抜いた腕が身体に絡んでこない。

 ただし投げ終わった後、写真左足が高く引き上がっている。これは、地面を捉え続けることで強く地面を蹴り上げているだけでなく、踏み出した足(写真右足)の着地位置が的確で、軸足から踏み込み足へしっかり前に体重移動出来ている証なのだ。この投手は、意外に身体に頼った投手に観られがちだが、しっかり下半身が使えている投手なのだ。

(最後に)

 ワインドアップの際には、腕を振りかぶっている時間を変えて、間合いを一球一球変えているような非常にクレバーな一面も観られる。投球全体にも冷静さがあり、胆が座っているだけではないようだ。終盤になっても球威が衰えることのないスタミナ、ピンチにも強い精神力など投手としての適性を兼ね備えた逸材だ。

 この一年で、かなり持ち得る肉体を活かしたエネルギー捻出が出来るフォームに改善されている。そのため、肉体的成長共に大きく球速を伸ばすことが出来ている。この方向性は間違っていないと思うし、今後も更に追求して行って欲しいと思います。その一方で、制球力を中心とした部分では、昨夏よりも粗くなっているのが残念。若いだけに球の力で抑え込む意識は悪くないが、球速と制球力を共に向上させることは技術的にも無理なことではないだけに、その辺の配慮が、今後は望まれる。

 パワーのある選手なので、このまま順調に精進して行けば、左腕から145キロ〜150キロだって望めるかもしれない。そこを追求しても充分構わないだろう。しいて気になるところは、やはり腕の軌道が、身体から離れた位置を軌道している点であろうか。この一年での成長ぶりを考えれば、来夏も相当期待出来そうな印象を持った。

(2005年 5月14日更新)




 ズングリムックリな体型を活かした長打力と上から被せるスイングが魅力の強打者。しかしながら甲子園では、内角への脆さと落ちる系への弱さを露出したことで、打撃での良さを完全に相手チームに封じられた印象だ。結果試合でも敗れる原因になったのではる。

(打撃スタイル)

 投手としてのフィールディングの良さなどからも、見かけ以上に、この選手の運動能力は高い。ウエートを絞りキレを出させれば野手としての適性も期待出来るかもしれない。現時点では足が遅いだけに、完全に打撃を全面に出したプレースタイルなのだが。

 全打席とも初球から振ってきたり、二球目あたりで終わるなど来た球は、なんでも打ってやろうと言う姿勢が目立つ。コースや球種に一貫性がないのでボールゾーンへ球を放れる投手ならば、彼を討ち取ることは、それほど難しくない。その悪球に手を出してしまう選球眼の悪さは昨夏のプレーぶりでも指摘したが修正されていない。完全に積極性をはき違えている印象だ。こういったプレーが許されるのは、完全に彼がチーム内で特別な存在であり御山の大将なのだが、これは指導者にも責任があると思う。最終学年を迎える今後は、自覚を持った打撃に専念すべきではないのだろうか!

<構え> 
☆☆☆☆

 前足を後ろに引いた軽いオープンスタンス。グリップはバットの重さを感じにくい0オジションで、バランスの取れた構えをする強打者スタイルだ。前の見据えはオープンスタンスをとっている割には平均的なのだが。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 見た目のパワフルさと違い、この選手は投手の引き上げられた足が下がる途中の段階で始動する「早めの仕掛け」を実践している。どんな球にも対応しようとするアベレージタイプの打者が好んで採用する仕掛けであり、彼も打撃スタイルにも一致している。彼は持ち得る肉体的パワーを全面に活かしたスラッガータイプに見えるが、実は本質的には、打撃スタイル共々アベレージ打者なのである。どんな球でも打ってやろうと言う完璧主義が、早いカウントでの悪球打ちにもつながっている。

<足の運び> 
☆☆☆

 早めに始動して足を引き上げ、空中で上げた足を止め踏み込むタイミングを調整している。これは、ある種世界のホームラン王、王選手の一本足打法の動作と共通する動作だ。この動作を物にするのには、相当なバランス感覚を磨く必要があるだろう。そのための意識も欲しいところだ。

 踏み込むタイミングを自在に調整し対応する極めて高度な技術を有しているが、バランス面を磨く意識に欠けているのか、ボール球を投げられるとバランスを維持出来なく打ちとられてしまう。そのためにも、自分の打てるポイントを把握し、その球を狙い打つ選球眼を磨くことは、この選手の打撃に不可欠な要素だ。

 また昨夏からそうだが、オープンだった足をスクエアに戻し踏み込んで来るのだが、前への踏み込みが甘いので、軸足〜踏み込み足への体重移動が悪く、しっかり前に乗ったスイングが出来ていない。着地時のスタンスの狭さが重心を高くし、より低めへの対応も難しいものにしている。

 踏み込んだ足元は、それでもインパクト際にブレることなくスイング出来ている点は好感が持てる。少ない体重移動によるエネルギーのロスは少なく、身体の開きも抑えられている。

<リストワーク> 
☆☆☆

 トップは、それなりに深く、それでいって身体の奥に入っていない。この辺は、この一年間で修正出来た大きなポイントだ。これによりヘッドの出遅れを抑え、早い球へ対応やトップ〜インパクトまでのスイング軌道も無駄が少なくなっている。

 気になるのは、スタンス幅が不充分で体重移動の少ない下半身のために、スイングが窮屈になっている点だろう。下半身の体重移動を覚えればスイング全体の振り抜きももっと好くなり、内角の捌きも上手く行く可能性は高い。

<軸> 
☆☆☆

 ボールを自分から呼び込んでしまう部分があるのか、結構頭が動く。これだと目線がブレ球筋を的確に捉え難い。軸足の崩れや身体の開きが抑えられている点には好感が持てるが、これも体重移動が不充分なために安定していると言う見方も出来る。


(最後に)

 踏み込みのタイミングを自在に調整出来るタイミングの取り方は、彼の優れた才能の一つだ。それ故に、どんな球でも打てると言う自信が、逆にボール球でもなんでも振っていってしまう悪球打ちへと変わってしまう。

 全体のバランス感覚を養い、下半身の体重移動が出来るスイング、打てる球を絞り込み叩く好球必打の制球眼を磨くことなど、天賦の才がある彼故に高いものを要求したい。現状、140キロ台を出せる左腕としての資質の方が、付加価値の高さからも投手としての評価が高いだろうが、それにも負けないぐらいの打撃の可能性を秘めていることも忘れてはいけない。

 この夏もチームの命運を投打共に期待される存在だけに、打撃に関しても高い意識を望みたい。あえて、厳しいことを言うのも、その才能を買っているからである!



(2004年 夏)




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