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| 片山 博視(兵庫・報徳学園)投手 192/88 左/左 | |||||||||||||||||||||||||
「私の固定概念を破壊した男!」 日米14球団が注目すると言われる片山投手だが、昨夏までの私の印象は、どうももう一息だった。むしろ打撃の能力の方が魅力を感じる素材に、私には映っていたのだ。そんな片山が、今年に入り多くのスカウト達を引きつけていると言う。私は、半信半疑ながら、このスカウト垂涎の的を観に、尼崎に赴いた。 私は、彼の投球練習を観て、私の今までの固定概念が間違っていたことを痛感した。190センチを越える長身から投げ降ろされる速球の角度と球筋の良さ、そしてプロでも通用するであろうスライダーのキレ、何よりマウンドに立った時の威圧感が良い。こういった投手こそプロに行く投手なんのだろうと実感させられる投球だった。 (投球スタイル) 初回・二回ぐらいまでは、角度と球筋の良さこそ素晴らしかったが、球速は常時130〜135キロ程度と思ったほどの球速は出ていなかった。しかし徐々に肩が温まってきたのだろう。3イニング目ぐらいから球速は徐々に上がり、球速も常時130キロ台後半〜MAX89マイル(142.4キロ)まで記録する程になっていた。球速表示以上に素晴らしい球筋が、この投手の最大の魅力だ。 もう一つ素晴らしいキレを誇る球がある。それがスライダーだ。右打者でも左打者にも内外角に自在に投げ別けられる制球力があり、そのキレも一級品だ。どの選手も片山の速球を見せつけられての110キロ台のスライダーに、どうしても腰砕けになってしまう。 球種は他にも90キロ台のスローカーブがある。このカーブ、ブレーキがあり曲がり自体は悪くないので、緩急・カウントを稼ぐには重要な働きを担う意味がある。しかし、このスローカーブが立ち上がり、真ん中〜高めに浮き狙い打ちされる。この試合を最後に高校野球人生が幕を閉じることになるのだが、その一番の原因は、甘く高めに入るカーブが命取りになったからだろう。球威・球速の劣る変化球は、低めに、これは投球の基礎であることを、もう一度胆に命じて欲しいものである。 昨年に比べれば、球筋も非常に安定してきているし、制球力や投球術にも大きな成長を感じる。球速・球威も10キロ程度増し、センスこそ感じないが、牽制・フィールディングなどの技術も観られるレベルになってきた。この一年間の彼の努力を高く評価したいと思います。 |
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(右打者に対する攻め)☆☆☆ 右打者のアウトコース真ん中〜高めのAやDのゾーンに速球を集めるのが投球の軸となる。ただ制球力がバラツキ、(か)や(こ)と言ったゾーンに外れることも少なくない。その速球とカーブを集めてカウントを整える。ただしカーブに関しては、どこぞに決めると言うよりは、球速の緩急を効かせ目先をかわす意味合いとカウントを稼ぐための役割に限定され制球はバラバラだ。そのため真ん中高めからど真ん中に落ちて来るEあたり来るカーブを、打者に狙い打ちされる傾向が強い。片山の最大の課題は、このカーブの制球力にある。 インコース真ん中近辺のFあたりに速球で内角を攻めることもあるが、むしろ目立つのは、内角に食い込んで来るスライダーを投げることである。外角の速球に意識を奪われておきながら、内角にキレのあるスライダーを投げられては、並の高校生では太刀打ちできないだろう。このスライダーのキレこそ、片山の最大の武器である。 |
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図1 右打者頭
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(左打者に対する攻め)☆☆ 左打者に対しては、右打者に比べるとやや制球力にバラツキが出て、はっきりした配球の特徴が掴みにくい。速球に関しては、左打者内角〜外角の高めのゾーンA〜Cのゾーンに速球が行くことが多い。またカーブも真ん中高めのBのゾーンに浮いたりと、制球力よりも緩急を効かす意味が強い。むしろ評価したいのは、左打者のインコース真ん中のDのゾーンやアウトコース低めのIのゾーンなど、キレのあるスライダーを両サイドに決めることができる点だろう。 正直、左打者に対しての方が制球は甘い。しかし左対左の有利さがあり、ヒットの多くは右打者によるものが多い。しかしレベルが格段に上がるプロには、左の優秀な打者が多いだろう。このアバウトさが、痛手を食う大きな原因にも成りかねない。やはり左打者への制球力を磨くことが、今後の課題の一つとなりそうだ。 右打者にしても左打者にしても、ヒットを打たれた多くが、高めに甘く浮くカーブであった。このことを胆に命じ、今後の課題として欲しい。 |
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図2
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(投球フォーム) <踏みだし> ☆☆☆ 写真1 ![]() 写真1は、片山投手が構えた時のものである。まず両足元に注目して欲しい。両足の幅は、肩幅程度とやや狭く、両足をプレーと上に、揃えておいている。このような立ち方だと、地面の反発力や身体の反動が活かせず、エネルギーは捻出し難いと言え、あまり良い構えではないことがわかる。 写真2 ![]() ワインドアップでじっくり振りかぶり、エネルギーを内に貯め込めているところは良い。この段階に入り、写真右足である軸足が、後ろに引かれているところも良い。写真3観られるように、足を高く引き上げられている。その際にも勢いがあり、下から上へのの重心移動が高いエネルギーを捻出している。 写真3 ![]() <軸足への乗せとバランス> ☆☆☆ 再度写真3に注目して欲しい。まず軸足の膝に注目だ。膝がピンと伸びてしまっているので、身体が前に突っ込みやすかったり、フォームに力みが生じやすかったり、体重を軸足に乗せると言った観点でも、けして誉められた動作ではない。しかし高く引き上げられた足に対し、背中の傾きが程よく、全体的にバランスが取れていると言えるであろう。そのため軸足への体重乗りも、膝が伸びきっている割には、悪い方とは言えないだろう。昨夏と変わらず膝は伸びているのだが、全体的なバランスの取り方に工夫が観られるようだ。 <お尻の落としと着地> ☆☆☆ 写真4 写真5 ![]() 引き上げた足を下げる時に、地面に向かってピンと伸ばしている。これだとお尻が三塁側(左投手の場合)に沈み込み難い。お尻が三塁側に沈み込めない投手は、どうしても縦にブレーキの効いたカーブやフォークなどの縦系の変化球の修得に苦労しやすい。その理由は簡単で、身体を捻り出す充分なスペースを確保できないからだ。欧米人の多くが、こういった球種のマスターに苦労する原因も、この辺に大きな理由がある。 写真4の段階で、すでに地面に着きそうな高さまで足を降ろしているのだが、写真5の段階まで着地を我慢させ、上手く前に足を逃がし、着地のタイミングを遅らせることができている。昨年までは、下半身に粘りなく、いち早く着地してしまい、体重移動がままならなかったが、下半身の鍛錬の賜と本人の意識がそこにあったのだろう。お尻が三塁側に落ちない投手の割には、着地のタイミング・スタンス幅に非常に成長の跡が観られる点だ。 <グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆ 写真6〜8のグラブの位置に注目して欲しい。グラブを腰の低い位置に添えることで、外に逃げる遠心力をしっかり内に抱え込むことができている。やや写真7で身体から離れているのは気になるが、写真8の投げ終わった後でも、グラブを身体の近くに抱える意識を忘れていないことは、左右の制球力を安定させるには、重要な動作となる。 写真6 写真7 写真8 ![]() 今度は、写真6の写真右足(軸足)のスパイクに注目して欲しい。足裏を支点にして回転しているのだが、その際に足の甲で、地面を押さえつけられているのがわかる。ただし、片山投手の場合、その時間が短く、充分に浮き上がろうとする上体をおさえ込めているとは言い難い。そのため球が上吊るのをおさえ込めない時がある。また足の甲のおさえ込みが甘いと、作り出した下半身のエネルギーをしっかりフォームの後半に伝えきれなくなるのだ。 <球の行方> ☆☆☆☆ 写真9 写真10 写真11 ![]() 写真9の時点では、リードするグラブが少し斜め前に出ているので、球の出所を隠している。写真10の前肩が開き始める段階でも、テイクバックした腕はまだ見えてこない。球の出所は、まずまずの投手だと言えるであろう。 むしろ彼の良さは、写真11に凝縮されている。長い腕を角度よく振りおろされている。190センチを越える長身を更に大きく魅せる角度の良さこそ、片山投手の最大の魅力なのだ。そして球持ち自体も、まずまずと言えるであろう。昨年から比べると、球持ちを強く意識しているなど、成長を感じる部分である。球持ちが良くなったことで、指先まで力を伝えられるようになり、球質も格段に向上している。 <フィニッシュ> ☆☆☆☆ 写真12 ![]() 角度よく振りおろされた腕が、身体に絡んで写真12で見えなくなっている。また体重がしっかり前に乗っているのも、この写真からわかる。写真右足が、蹴り上げられ体重移動も、それなりにできていることもわかる。足の甲でもっと長くおさえ込めて来ると、ネエルギー伝達ももっと期待できるであろう。 写真13 ![]() 写真13を観てもわかるように、投げ終わった後、一塁側とか三塁側に流れることなく、バランスの良いフォームで投げられている。全体のバランスが取れるようになり、制球力や球筋も安定しつつある。この部分も大きく成長の跡を感じさせる。 (最後に) まだまだ細かい部分を言えば課題も多いのだが、この一年でおさえる部分はおさえられており、技術的にも格段の進歩を感じる。この一年と言う時間で、ここまで課題を克服してきた努力とセンスは高く評価したいと思います。問題は、お尻を三塁側に落とすタイプのフォームではないので、どうしても将来的に縦の変化が修得できるかが、気になる材料だと言えるであろう。ただし彼の場合、天性の角度、左の有利さ、スライダーの良さなどと言った違う武器があるので、その部分に期待したい。 私の固定概念を破壊した片山の投球は、この夏ようやく見つけたプロの基準を満たした逸材だったのである。秋のドラフト会議では、上位指名をされることは間違いないだろう。私にとって、関西に遠征した価値を充分実感させてくれる 「この夏・最大の収穫だったのである。」 (2005年 8月3日更新) 蔵の評価:☆☆☆ |
| 片山 博視(兵庫・報徳学園)投手 191/83 左/左 |
2年生ながら190センチ台の大型左腕と言うことで、大前(社高)投手と並んで、将来を嘱望される投手。125〜MAX132キロぐらいの速球に左腕らしい100キロ強の大きなカーブと110キロ台のスライダー、110キロ弱で沈む球と球種は意外に豊富だ。大型選手にありがちな牽制やフォールディングには、課題を残すなど、まだまだ投手としての完成度は高くない。 全体的には、ストライクゾーンの枠の中に決まれば良いと言った程度の制球力で、かなり、その制球力はアバウトだ。ど真ん中近辺など真ん中のゾーンに球が行くことは少ないが、両サイドの高低周辺にかなり球は、ばらついて決まっているし、ストライクゾーンを大きく外すボールも少なくない。かなり荒れているのと球種が一通りあるので、相手打者は的を絞り難いのかもしれない。 (投球フォーム) <踏みだし> ☆☆☆ ノーワインドアップからグイッと足を勢いよく高く引き上げられている。これにより、フォームに躍動感と勢いを付けることに成功している。 <軸足への乗せとバランス> ☆☆ 軸足の膝に余裕がなく軸膝がピンと伸びてしまっているので、軸足の後ろのラインと背中のラインが一直線になり直立した姿勢で立つことになる。こうなると身体のバランスを取るために足裏の一部分に余計な力を入れてバランスを取ろうとするために足の負担が大きくなるだけでなく、次の体重を落として行く段階で前に突っ込んだフォームを誘発することになる。軸足への体重の乗せ自体は悪くない。 <お尻の落とし着地> ☆ 引き上げた足をピンと空中で伸ばせないので、お尻がしっかり三塁側(左投手は)に落とすことが出来ずにいる。そのため身体を捻り出すのに必要なスペースを確保出来ていないだけでなく、前に突っ込んだ姿勢のため、着地をいち早く行い身体のバランスを整えようとする。着地が早いために充分な身体を捻り出す時間が乏しく、上半身と下半身がしっかり捻る動作が出来る前にリリースを迎えるのでしっかりした身体の回転を活かしたフォームが出来ないために、エネルギーを捻出出来なかったり、変化球をしっかり曲げることが出来ないなど中途半端なフォームになってしまう。当然、軸足〜踏み込み足への体重移動も不充分で体重が乗ってこないので、速球にも勢いが欠ける。 <グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆ グラブも内には抱えられているが、身体のそばで抱えられていないので、外に逃げようとする円心力を内に抱え込むことが出来ていない。そのため左右に軸がブレやすいので、両サイドの制球力は安定し難い。着地が早いことで重心が沈まず、軸足の甲で地面を抑えつけられないので、上に浮きあがろうとする身体の力を抑え込むことが出来ず球が上吊る原因を作る。 <球の行方> ☆☆☆ 彼の天性の資質は、腕がかなり奥まで入り込む肩の稼働域の柔らかさにある。そのため、なかなか球が見えてこないので、打者としてはタイミングが計り難い。また190センチ台の長身を活かすような腕の角度があるのは、打者としては球筋を観ても錯覚に陥りやすく球速以上に捉え難い嫌らしさは存在する。ただしリリースは、腕が顔の横を通過したあたりでボールを放してしまうなど、かなり押し込みが甘い。これだとせっかくの長身の持ち主でも、球が低めに来るのは、期待しにくい。 <フィニッシュ> ☆☆ 腕を縦に振り下ろし、最後には身体に巻き付くような腕の軌道は良い。ただし全くと言って良いほど地面の蹴り上げが観られないフィニッシュには、下半身の使い方に大きな課題を残すことを意味している。 (最後に) 大前(社高)以上の上背を持ち、非常に柔らかく角度のある腕の振り抜きが出来る点は魅力的な投手だと言える。ただし軸足一本での立ち方の悪さが、その後の動作を大きく狂わせるなど下半身の使い方を中心に非常に課題を残すフォームである。 これは修正することは容易ではなく、この投手が来年の今頃までに球速を常時10キロ以上上げるには、なかなか肉体の鍛錬だけでは難しいだろう。あえて高校時代の間に、しっかりしたフォームを身につけさせることが出来るのか注目したい。このまま3年時を迎えても、それほど大きな成長は見込めない可能性は高そうだ。可能性を持っている投手だけに、今後の変貌ぶりに期待したいと思います。 (2004年 7月9日更新) |