KP06−1




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参考資料:田中将大の動画

田中 将大(北海道・駒大苫小牧)投手 185/83 右/右





                「こんな田中を見たことがない・・・」





 2006年度・高校生ドラフトの目玉・田中将大(駒大苫小牧)投手の投球を見て、スカウト達はこう呟いていると言う。2年生の春、甲子園で鮮烈デビュー遂げて以来、12球団のスカウト達は、田中の成長を見守り続けてきた。今の田中将大の姿を見て、歯がゆくて仕方がないのだろう。それでも、もがき苦しみながらも田中は、決勝戦の舞台にまで勝ち上がってきた。そのことは、けして本調子とは言えない状況でも、負けないピッチングに徹する彼の底力を、改めて実感させてくれるのには充分であった。

 では何故、怪物・田中将大が本来の力を発揮出来ないのか?その要因について推測してみよう。多くの方がご存じのように、駒大苫小牧は、先輩方のやんちゃが過ぎて、ついこの間まで練習試合すら許されない状況だったのだ。練習試合が解禁になったのは、春季大会直前の5月ぐらいだったと記憶している。ただでさえ雪深い北海道の地。その調整が、遅れるのは北国の宿命でもある。それに追い打ちをかけるかのように選抜辞退。自分達が問題を引き起こしたわけでもないのにこの処分。一度は、チームがバラバラになったとも聞いている。人一倍気の強い田中の集中力が、この時プッツリ切れたのではないかと言うことも容易に想像が付く。ひっそりと田中や4番・本間を中心に、グランドのゴミ拾いから再起を誓ったのは、地元の人なら周知の事実。そんな精神状態で、いつ解禁されるかわからない試合への望み。その中で18歳の青年が、順調な仕上がりを魅せることは極めて難しい。それでも春季北海道大会を制し、夏の北海道予選も苦しみながら代表権を手に入れてきた。このことを知らずして、今年の田中将大、駒大苫小牧を語ることは出来ないだろう。


 私はようやく公式戦に登場する田中将大を見に、北海道まで足を運んだ。残念ながら私が観に行った試合では、田中は死球を受けて登板なく退場してしまう。しかしそれまでは、ブルペンで熱のこもった投球を魅せてくれていた。その時私が感じたのは、非常にフォームのバランスが乱れていたことを記憶している。夏の南北海道予選。甲子園出場に立ちはだかる最大のライバル北照戦。それでも田中の投球は、以前程の輝きはなかった。そんな調子の上がらぬまま、田中は甲子園にやって来る。走らない速球を抱えながら・・・。

 私が考えるに、今年に入っての田中は、常に本来の調子からかけ離れていたのではないかと想像する。そこで彼の最もベストであるだろう投球を考察にするのには、昨秋の明治神宮大会ではないかと考えた。まさに昨秋の11月、同じ決勝戦の相手・早実と、この時対戦していたのである。そこで今回は、明治神宮大会・早実戦の投球を元に、田中将大の可能性について考察してみたい。

(投球スタイル)

 実はこの明治神宮大会・早実戦でも、田中は三連投の登板であった。序盤3失点した先発岡田の後のロングリリーフとなる。この日の詳しい投球については、下記に記載されている
 DINAMO-JIN氏 の寸評を参考にして欲しい。ストレートは常時140キロ台〜145キロぐらい。相手を追い込むと147〜MAX149キロの速球を投げ込んで来る。ただ追い込むと圧倒的に縦・横二種類のスライダーを多投し、空振りを誘う。少なくてもカウントを取りに行くストレートは、この時から早実打線は対応しつつあった。

 そう田中の速球とは、渾身の速球を覗けば、あくまでもスライダーを活かすための魅せ球でしかない。そして高校生レベルでも充分に対応出来るレベルの球なのである。その要因として考えられるのは、やはり身体の開きが早く、球の出所が見やすいからだろう。田中には、この他にカーブを投げ込んで来る。しかしその割合は少なく、完全に現在甲子園で多投しているようなスライダー投手なのだ。しかしこのスライダーは、プロの世界でも充分通用するであろうキレを誇る。一年間研究してきた智弁和歌山でも、そして以前対戦した早実でさえ、今回延長15回まで対戦しても、それでも打てない代物なのだ。田中には、プロでも武器になるであろうスライダーと言う魔球を身につけている。例えストレートが走らなくても、田中に対するスカウト達の評価が不動なのは、このスライダーがあるからだと言えよう。

<右打者に対して> 
☆☆☆☆

 田中の右打者への攻めは、アウトコースに集中している。アウトコース高めのゾーンに速球を集め、真ん中〜低めのゾーンに、横滑りするスライダーを多く多投する。また追い込むと低めの地面めがけて、縦に切れ込むスライダーで空振りを誘う。そう田中の投球は、意識的に右打者の懐を突くようなリスキーな球は投げ込んでこない。それだけ田中は、この三つの球種に絶対的な自信を持っているのだ。


<左打者に対して> 
☆☆☆☆

 左打者に対しては、両サイドに球を投げ分けて来る。アウトコース真ん中〜高めの高さに速球を、真ん中〜低めのゾーンに横滑りするスライダーで、カウントを整える。右打者との違いは、積極的にインコースに速球と横滑りするスライダーを食い込ませて来る点だ。また追い込むとお得意の縦に切れ込むスライダーで空振りを誘う。

 左打者の場合、右打者よりも甘いゾーンに球が入って来るケースが目立つ。しかしながら、右打者のアウトコース一辺倒の配球に比べ、両サイドを活かし、左右・高低の配球が出来る分、コンビネーションは多彩になる。甘く長打を食らう可能性は左打者の方が多いが、連打を食らう可能性は右打者の方が高いのではないかと考えられる。

(投球のまとめ)

 一見ラフそうに見える田中の投球だが、実は意外に制球力も安定しており、コンビネーションも多彩で高校生としては非常にレベルが高いことがわかる。勝負どころでの力の入れ加減にもメリハリがあり、追い込まれた状況では最高の球が行く。これこそが、好い投手の必須条件だ。またこういった投球に目が奪われがちだが、フィールディングや牽制の技術も高いことを補足しておきたい。





(投球フォーム)

 今度は、投球フォームの観点から、彼の可能性について考察してみたいと思う。あえて画像は、この夏の模様ではなく、明治神宮大会のものを参照したい。

<踏みだし> 
☆☆☆☆

 写真1は、田中投手がワインドアップで構えた時のものである。まずは足元に注目してもらいたい。両足の横幅が狭いことがおわかりだろうか。ここでしっかり両足の横幅を取っておかないと、フォーム全体のバランスが悪くなりやすい。ただし田中投手場合、足をしっかり引いて立つことでバランスを取ろうとしている。

 足をしっかり引くと言うことは、無理なく大きなエネルギーを導きやすい構えなのだ。こういったフォームは、昔の投手に多く見られた投げ方だが、最近ではフォームのブレから来る制球の乱れやスタミナのロスを嫌って、足を引いて構える投手は少なくなってきた。あえて田中投手は、オールドスタイルの力投派なのである。

 この構えから引き上げたグラブを一気におへそあたりまで降ろしてきて、大きな反動をつける。そして勢いよく足を写真2の位置まで引き上げるのだ。この反動の付け方、勢いは、中々他の投手では観られない迫力である。この投げ方で、連投なり長いイニングを投げるのだから、田中投手の体力は、すでに相当なレベルまで引きあげられていることがわかる。

写真1              写真2
 


<軸足への乗せとバランス> 
☆☆☆☆

 今度は足を引き上げ、軸足一本で立っている写真2に注目して欲しい。軸足(写真左足)の膝から上が、少々膝に力みは感じられるものの、真上に伸びきることなく適度な傾きがあるのがおわかりだろうか。この膝に余裕がないと

1,フォームに余計な力が入り力みにつながる

2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい

3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い

などの問題が生じる。しかし田中投手は、実にバランス好く立てているし、軸足の股関節にも体重が乗せることが出来ている。

<お尻の落としと着地> 
☆☆☆

 写真3を見ると、引き上げた足を空中でピンと伸ばすことができており、お尻がしっかり一塁側に落ちているのがわかる。お尻を一塁側に落とす意味としては

身体をしっかり捻り出すスペースを確保して、ブレーキの好いカーブや縦に落とす変化球を投げるための充分なスペースと時間を確保する意味がある。

彼が非凡なまでに縦の変化を使える大きな要因が、このお尻の落としにも大きな要因があると言えよう。

 またそれ以上にフォームで大切なのが、着地のタイミングを遅らせることなのだ。着地のタイミングを遅らせる意味としては

1,打者が「イチ・ニ〜の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ〜の」の粘りこそが、投球動作の核となる。

2,軸足(写真後ろ足)〜踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。

3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放られる下地になる。

と言う意味があり、投球フォームで最も重要な動作となる。田中投手の場合、前へしっかり足を逃がすことが出来ているのだが、上半身の力に頼った投げ方で、足のステップが狭く充分に下半身が使えていない部分がある。そのため着地までのタイミングは、けして粘り強い方ではない。今後は下半身や股関節の鍛錬を行い、この部分を少しずつ改善していって欲しい。今のステップだと踏み込んだ足元が急激なブロックをかけ、腰に大きな負担をかけているのではないかと心配になる。

写真3              写真4
 

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆☆

 写真5と6のグラブの位置に注目して欲しい。特に写真6では、グラブを内に抱えることが出来ず、後ろに溢れて抜けてしまっている。グラブを抱える意味としては

外に逃げようとする遠心力を、グラブをしっかり抱えることで内に抑え込む働きがあるのだ。これにより体軸が左右にブレるのを防ぎ、両サイドの制球力は安定しやすくなる。

などの働きがある。お尻を一塁側に落とすタイプのフォームでは、このグラブをしっかり最後まで内に抱えることが、より左右の制球力を安定させるのには重要な動作となる。

 今度は、写真5の右足スパイクに注目して欲しい。ややつま先は地面を捉えているが、足の甲でしっかり地面を押し付けられていないのがわかる。足の甲で地面を押し付ける意味としては

1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ

2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える

などの働きがある。彼の場合、足の甲での押し付けは浅いのだが、比較的長い時間、地面を押さえていられるのだ。上体は高いのだが、意外に粘り強いことがわかる。

写真5              写真6
 

<球の行方> 
☆☆☆

 写真7を見ると、グラブが上手く球を隠せている印象はある。ただし前の肩と後ろの肩を結ぶラインが、打者に真っ直ぐ伸びているタイプなので、打者からは角度がなく球の出所はわかりやすいタイプだろう。写真8を見ても、着地の瞬間にボールを持っている腕は見え始めているのがわかる。極端に開きが早いとは言い切れないが、比較的早い部類であると言え、これが140キロ台の球でも高校生に簡単に打ち返される要因となっている。

 写真8では、前肩と後ろの肩を結ぶラインよりも、肘がしっかり引き上げられているのは好い。ここで肘が下がってしまうと肩への負担が大きくなるからだ。また写真9を見ても、腕の角度がしっかり取れている。けして上体投げに見えても、腕が下がって出てこないところが素晴らしい。

 また写真9を見ても、意外にボールを長く持っていられていることがわかる。前で押し込める程の球持ちの長さは感じないが、けして単なる力投派ではないことが窺える。ボールを長く持つ意味としては

1,打者からタイミングが計りにくい

2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる

3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい

と言う働きがある。投球フォームでは着地に次いで重要な動作であり、生涯追求して行って欲しい。


写真7              写真8              写真9
  

<フィニッシュ> 
☆☆☆

 写真10でわかり難いのだが、腕を強く叩くことが出来ているのがわかる。その際に振りおろした腕は、身体に絡んでいる。この上体の強さは、田中の真骨頂とも言える動作だ。

 ただ投げ終わった後、写真右足が跳ね上がってこない。これは、着地する位置が悪く充分に前に体重が乗って行っていないからだ。そのため、この後上体は大きく一塁側に流れるのである。まだまだ上半身に頼り、ロスの大きなフォームをしているのがわかるのである。

写真10


(投球フォームのまとめ)

 意外に荒々しく見えるフォームなのだが、押さえるべきポイントは、結構押さえられていることがわかる。実は現時点でも、完成形と評されるされる 斉藤佑樹 よりも、私の評価では技術的なポイントが、田中の方が高いことがおわかりだろうか。確かにプロの世界を意識するのならば、まだまだ改善して行かなければならないポイントも多いし、鍛えなくては行けない部分も多いだろう。しかし彼の場合、単なる素材型で片づけられてしまう程、技術的にも低くないことが、ここで証明された。





(最後に)

 投球技術もフォーム技術も、かなり高校生としてはレベルは高い。それに加え、天性のハートの強さ・試合をまとめるセンス・総合力の高さなども加味すると、やはりこの投手が「高校NO.1」だと評価される理由には充分納得出来るのである。まだまだ上積みが期待出来そうな奥行きも素材から感じられる。けして松坂大輔のような完成度の高さはまだないが、比較的早い段階でプロの第一線に出てこれるだけの技術と体力・精神力・総合力を兼ね備えている投手だろう。そんな怪物・田中の無愛想な顔が、一瞬緩む瞬間がある。それを見ると、やっぱり彼はまだ高校生なんだなあと改めて驚かされる。末恐ろしい18歳だ!


蔵の評価:
☆☆☆☆


(2006年 8月21日更新)



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田中 将大(北海道・駒大苫小牧)投手 183/73 右/右




                   「捕手田中を考える!」




 2006年度の高校生ドラフトの目玉・田中 将大。今や松坂大輔の高校時代と比較される程、田中の投手としての力量は、高く評価されている。しかし田中が、初めて全国の舞台に登場した1年秋の明治神宮大会。彼は、投手としても活躍したが、背番号2を付け捕手としても活躍した。この秋・北海道大会で4本塁打。神宮大会でも本塁打をかっ飛ばした長打力・一年秋に示した捕手の適性からも、今なお「捕手・田中論」を推すものも少ないない。そこで今回は、あえてピッチングではなく、捕手・田中に焦点を当てて考えてみたい。

(守備面) 配慮・細心の注意が払われる捕手になれたかは疑問。

 今でもガッチリした体型を見るたびに、体型は投手としてよりも、むしろ捕手の雰囲気を醸し出す。キャッチング自体悪くない。多少落ちる系の球への対応に課題を残していたものの、一年生捕手としては充分なレベルを誇っていた。今や150キロを記録する圧倒的な地肩の強さ。ピッチングフォーム同様に、二塁までのスローイングも上体の強さを活かしたスローイングをしている。しかしその形に破綻はないし、一連の流れの中でボールを放ることは出来ていた。

 この体格の割には、捕手・田中はフットワークも悪くない。ただリード全体が、投手との組み立て重視で、あまり相手の特徴や動作を理解するまでのリードは、当時の田中には出来ていなかった印象だ。特にそれを感じたのは、積極的に左打者のインコースを要求していた点である。その打者は、左のオープンスタンス・アウトステップ打者。腰の回転を活かして巻き込む打撃を得意としているのは、容易に想像が付くところである。そういった打者に、勝負どころで内角球を連発するのは、強気のリードと言うよりも、洞察力の無さを顕著に現すものだと私は考える。きっと気持ちの強い選手なのだろうが、リードとしてはムラッ気の多いタイプの捕手だと言う印象を持ってしまった。それでも球一つ一つを散らす意識などもあり、けして考えていないリードではなかったと言えよう。頑強な身体付き、圧倒的な地肩・それにパワフルな打撃、もし一度たりとも投手・田中を全国にアピールしていなくても、捕手としてドラフト候補に名前が挙がるレベルになっていたと確信が持てる。

 ただプロの捕手に適した性格の持ち主なのかも含めて考えると、捕手・田中が指名されるレベルにまで到達するようになったかまでは、正直ディフェンス面だけでは推測出来ない。そこで、今なお道内屈指のスラッガーとして本塁打を連発する打撃にスポットを当て更に考えを含めてみたい。

(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆ 後ろ足に重心をかけたグリップを下げた特殊な構え!

 写真1は、田中選手が構えた時のものである。前足を引き後ろ足に重心をかけたオープンスタンスで構えている。グリップは下げて、バットを長く持っている。腰の据わり具合・前の見据え方は好いが、重心が後ろ足にかかっていることからも、バランスとしては極端なタイプだろう。少々癖のあるフォームではあるが、悪くはない構えだと評価したい。またボールを迎える直前、肘のあたりに意識的に「揺らぎ」を加えている。

写真1


<仕掛け> 
平均的な仕掛け 意外にも中距離タイプの打者なのか?

 興味深いのは、田中選手の仕掛けのタイミングが、投手の重心が沈みきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用している点である。通常このタイミングで始動する選手は、ある程度の対応力と長打力を併せ持った中距離打者が多く採用する仕掛けなのである。少々粗削りでも一発屋のイメージのあった彼だっただけに、少々意外だった気がする。ただ速球でも変化球でも打ちに行き対応しようとしていることからも、意外にこの選手の本質は、仕掛けの通り中距離タイプなのかもしれない。

<足の運び> 
☆☆☆ 上半身と下半身のバランスの取れたスイング!

 写真2のように足を引きあげ、写真3のように後ろ足よりも踏み込んだ足が、ベースから離れたアウトステップ気味な打者であることがわかる。踏み込みの強さ・ステップの幅などをみると並程度に見えるが、インパクトの際に、足元はブレずにしっかりスイングが出来ている。上半身と下半身のバランスの優れたスイングは、出来ているのではないのだろうか。

写真2              写真3              写真4
  

<リストワーク> 
☆☆☆ スイング最後のフォローは必見!

 写真3をみても、トップの段階で前腕の肘が後ろにしっかり引かれていることからも、トップが深いことが窺われる。その際にグリップが少し身体の陰にまで入り込み(写真では少し分かりにくいが)、ヘッドの出はあまり宜しくない。

 何より気になるのが、写真3の時点でバットのヘッドが下がり過ぎて、明らかにいびつな形のスイングになっている点である。これでは肘がグリップの下に入り込んで、インパクトまで遠回りなドアスイングになってしまう。それでも非凡なまでのヘッドスピードが、それをあまり意識させるない速さがある。

 写真4のインパクトの際の強烈な押し込み、大きな弧を描いたスイング軌道、そして写真5のような豪快なフォロースルーは、まるで外国人のスイングを見ているようだ。特に写真5の段階で、グリップが上の方に引き上がって行く選手は、ボールをまさに遠くに飛ばせるロングヒッターの証しなのだ。捕手・田中を後押しするものがあるとすれば、絶対的な地肩の強さと、この豪快なまでのスイングに集約されることになる。

写真5


<軸> 
☆☆☆☆ 開きを我慢し、身体の回転で打てている!

 写真2〜4の頭の位置。後ろのアルファベットEの字を目印に見ても、比較的頭の位置は変わっていないことがわかる。写真5を見ても、前の足が後ろの足と交差するような形になっていることからも、身体の開きが我慢出来ていることがわかる。写真4では、軸足(後ろ足)が、地面から真っ直ぐ真上に綺麗に伸びており、軸足が崩れず綺麗に回転出来ている。ただし写真5の時点、軸足が後ろに入り込む動作が、スイング上好いのかはわからない。

(最後に)

 捕手・田中を考える時のポイントとしては、プロの捕手に相応しい性格のタイプなのか?打撃の対応力はどうなのか?と言う疑問が残る。気持ちを全面に放出するタイプの田中のプレースタイルは、投手の気持ちを察したり、細かい洞察力で観察することが求められる捕手と言う繊細なポジションよりも、投手としての方が華開く可能性が高いのでは?

 打撃に関しては、一塁までの塁間4.55秒前後(左打者ならば4.3秒前後に相当)と並程度で、やはり野手ならば捕手として勝負したい。ただ対応力に欠ける一発屋的な要素が強いだけに、どうこの粗さを解消出来るかがポイントになるだろう。

 圧倒的な地肩と長打力に強い精神力を兼ね備え、ひょっとすると次世代の日本を代表する捕手へ化ける可能性すらあるのかもしれない。しかし松坂と並び称される程のパフォーマンスを見せつける彼が、再び捕手としての可能性を模索する日々が来るとは考え難い。もし清原が投手に専念していたら、桑田が野手でプロ野球人生を全うしていたらと言った、タラレバな話の中で想像を膨らませるのも、両方の可能性を知っているアマチュア野球ファンならではの醍醐味ではないのだろうか。それだけ 田中 将大 と言う男は、投打に圧倒的なスケールを兼ね備えた男なのだ!


(2006年 1月27日更新)




《この日の投球内容》
 4回途中、先発岡田が3点目を失ったところで登板。以降を一人で投げきった。5回2/3を投げて何と!13奪三振。被安打2本、四球1と全く付けいる隙を与えなかった。序盤はリードを許していたということもあるが、どちらかというとストレートを見せ球にしたスライダー主体の投球だったが、味方が追い上げ追い越してからは俄然力のこもったストレートをビシバシ☆投じるようになった。

《球種とスピード》
 ストレート   Avg143`ぐらい MAX149`
 スライダー   135`前後
 フォーク    130`台
 例えば同じ140`でも高校生の140`という球質ではない。伸びや威力は大人の140`のソレである。常時143,4`はいつでも出せるといった感で、来年にはMAX150`overも頻繁に記録するのでは!?そして、松坂も真っ青?の最速140`近い高速スライダー。これは多少コースが甘かろうと、高校生にはちょっと攻略困難なキレ!加えて落差のあるフォークまであるのだから、まさに難攻不落な存在である。

《投手スタイル》
『私見だが、この選手はプロが非常に好みそうなタイプだと思う。個人的には、先日観た同じ1年生の福田(横浜)よりも魅力を感じた』

去年の神宮大会で松橋の球を受けていた“捕手”田中を観たときの印象である。捕手としても将来のドラフト候補を予見させるスケールの大きさを披露していた田中だったが、今春、今夏、そして今秋と観ていくにつれ、何だかマウンド捌きがどんどん投手らしくなってきてるよなぁ…というのを、ふと、観ていて感じました。。。

 あのスピード・球威と変化球のキレでそこそこ放られたら、高校生では5,6イニングぢゃちょっと攻略できないだろう!?というぐらいのボールを放る。
 フォームは美しい流れるようなフォームといった類ではないが、バランスとタイミングがとても良いように見受けられた。例えば、右足一本で立ったときのバランスだとか、ボールに力を加えるタイミング、放すタイミング…みたいのが様々あると思うが、いずれも絶妙。躍動感があり腕も大変良く振れている。
 コントロールも高校生の本格派としてはまずまずで、そこから破綻を来すということもなさそうなだけに、ますます難攻不落である。得意のスライダーで簡単にストライクを取れるというのが、この投手のピッチングを大いに楽にしている。

 いよいよもって松坂大輔との比較論みたいのも巷でチラホラ見聞きするようになったが、私見を述べるとするならば、個人的には高2秋の現時点においては、体力面を除いては田中のほうがやや上回っているのではないかという気がする。それぐらいに今の田中の充実度は素晴らしいモノがある。しかも、これだけの能力を示しておきながら、まだ、来年以降も更に伸びるであろう伸び代を秘めていることを感じさせてくれるのも、大きな魅力のヒトツ☆駒大苫小牧と田中がどういった道のりを歩んでいくのか…来年の高校野球は取りあえずそこから目が離せない。
 誌面・紙面の評価で「S」とか「特A」とかいう評価受ける選手が年に何人かいるが、そういった評価を受ける選手とはこういう選手なんだ!というまさに最高に分かりやすいお手本?

2006年 11月27日 投稿者:DINAMO-JIN 様




選抜の逸材NO.1 田中 将大(北海道・駒大苫小牧2年)投手 183/73 右/右



                    「第三の男」



 昨夏、道内に初の優勝旗を持ち帰った駒大苫小牧。2005年度の新チームには、プロも注目する松橋 拓也、好投手の吉岡 俊輔と言う二人のドラフト候補がいる。そんな一学年上の先輩達を押し退け、夏・春連覇で注目される2005年度。今年初の公式戦のマウンドを任されたのが、田中 将大(新2年生)だったのである。

 田中は、ただマウンドに上がったわけではない。1学年上の新3年生でさえ、この時期には、常時135キロ以上を記録すればドラフト候補としてマークされるほどなのだが、彼は新二年生にしてすでに常時140キロ台(MAX145キロ)の速球を記録したのである。速球のみならず、キレの好いスライダーや落差のあるフォークを披露し、一躍2006年度のドラフト候補として、大いに注目されることとなったのだ。


(ピッチングスタイル)

 ワインドアップから繰り出される速球は、コンスタントに140キロ台を記録(MAX145キロ)し、セットポジションでも、141キロを叩き出すなど、非凡な球速能力を秘めている。立ち上がりこそ高めに浮いて打たれたスライダーも、回を追うごとにキレを増し低めに集まるようになってきた。追い込んでからは、落差の大きなフォークを披露し、狙って空振りを取れるところを示したのである。また緩急を効かせたカーブも併せ持ち、2年生の春の時点では、破格の球速と変化球レベルを有した投手だと言えるであろう。


<右打者に対する攻め> 
☆☆☆☆

 下の図1を観て欲しい。この図は、投手側からホームベース側を観たストライクゾーンの分布図だと思って欲しい。

 田中の投球は、右打者外角クロスにあたるA,Dのゾーンを中心に、速球とスライダーを集めることで組み立てられている。立ち上がりは、右打者アウトコース高め、すなわちAのゾーンにスライダーが浮くことが多く、その球を痛打されるケースが目立った。私がチェックした最初の5イニングは、いずれもAのゾーンに浮いたスライダーのみを右打者に打たれている。イニングが進むにつれ、アウトコース低めのGのストライクゾーンからその外側のボールゾーンにスライダーを逃がして来る。すでにこの年齢にして、ボールになる変化球を意識的に使えるのだ。

 緩急を活かす意味でのカーブに関しては、かなり使う頻度が少ない。私がチェックした5イニングまででは、僅か3球程度だった。またその制球はバラバラで、現時点ではそれほどカーブを有効に投球に組み入れていないことがわかる。内外角の比率は、2:8程度。所謂インコース(図C,F、I)のゾーンに来る球は、さほど多くない印象だ。しかしこのゾーンに速球を時々魅せることで踏み込みを封じ、外角中心の投球を活かしている。

 彼の三振の多くが、追い込んでから繰り出されるフォークにある。右打者に対しては、図のG,H、Iのいずれかの低めのゾーンのストライクゾーンから、その下のボールゾーンに落ちて行き三振を奪っている。また図のBやEと言った、真ん中近辺の打ち頃のゾーンには、ほとんど球は集まってこなかったことは、制球力の観点でも、この新二年生は、非常にレベルの高いものがあることがわかる。



図1
                   右打者頭

                    右打者足元


<左打者に対する攻め> ☆☆☆

 図2は、今度は左打者に対してのものである。左打者に関しては、的を作れず制球が定まらない傾向にある。ストレートは、図のA,B、Cのゾーンに浮き気味に行くことが多い。ストライクを取りに行くのも、特定のコースに投げ別けると言った意識ではなく、ストライクゾーンの枠の中に決まればと言ったアバウトのものになる。

 ただ特徴的なのが、右打者の内角を突くのが速球だったのに対し、左打者の内角を突くのは、AやDのゾーンから左打者の身体に向かってくるスライダー、所謂インスラで攻めて来ることが多い。カーブやフォークの制球は、右打者の時同様に制球力が定まっておらず、変化や緩急で相手を仕留めて来る。特に左打者に対してのフォークは、やや左打者の外角に逃げながら落ちるシンカー気味の変化をしてくるようだ。

 一回戦の戸畑戦よりも、2回戦の神戸国際大附戦では、球を低めに意識的集めようと言う意識も強く、内外角にも球をアバウトながら投げ別けることが出来ていた。ただ現時点では細かい投げ別けよりも、球の勢いや変化で相手を仕留めることが目立ち、その部分を磨くことが得策だと言えるであろう。


図2

                             

                            



(投球フォーム)

<踏みだし> 
☆☆☆

写真1


 まず少々写真が醜いので申し訳ないが、田中投手の足元に注目して欲しい。両足のスタンス幅が狭く、両足が左右揃った位置に置かれている。このような体勢から踏み出すと、せっかくワインドアップで大きな力を導き出そうとしている割に、大きなエネルギーは導き難い。

 それでも写真2では、足を高く引き上げられエネルギーを捻出している。もっと投球動作の構えを工夫をして投球動作に入られると、更に力強さを増して行けるだろう。


写真2


<軸足への乗せとバランス> 
☆☆☆

 写真2は、田中投手が足を引き上げた時のものである。軸足の膝がピンと真上にぐ伸びることなく、軸足一本で立てているが、あまり軸膝に余裕がなく、やや直立気味で立っている。そのため軸足への体重の乗せは甘くなり、身体が前に突っ込み気味で、着地が早くなりやすい。これだとセットポジションだと、更にその特徴が顕著になり、身体が突っ込みやすくなりそうだ。

<お尻の落としと着地> 
☆☆☆

写真3


 写真3は、田中投手がお尻を最も落としていた時のものである。引き上げた足を空中で三塁側にピンと伸ばしているので、一塁側にしっかりお尻が落とせている。このお尻の落としが、身体の捻り出しを可能にし縦のカーブやフォークなど好い変化球を修得しやすいフォームを導き出す。

 写真4は、着地の瞬間を捉えたものである。少々画像が粗くわかりにくいのだが、軸足(後ろ足)の陰になる位置まで、踏み込み足(前の足)を持ってきて着地出来ており適度なスタンス幅を稼ぎ、軸足〜踏み込み足への体重移動を可能にしている。ただし着地までのタイミングを観ていると、あまり打者のタイミングを狂わせるような着地までの粘りに欠ける印象だ。打者にとっては、球速ほど苦にならない速球ではないかと思うのである。現に田中は、高校生相手でも140キロ台の速球で空振りを、あまり取れていないのである。

 
写真4



<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆☆

写真5              写真6
 

 今度は写真5と6のグラブの位置に注目して欲しい。腰の位置にグラブを添え、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込んでいる。これに左右の軸のブレを防ぎ、両サイド制球を安定させやすい。

 わかりずらいのだが、写真5の右足に注目して欲しい。右足の膝が地面に着きそうなくらい沈み、右足のスパイクのエッジが地面を捉え難い形になっている。所謂支点が潰れると言った状態だ。そのためエネルギー伝達や制球を乱す要因になりやすい。特に写真5の両足の足の形に注目して欲しい。がに股気味になっているような選手は、エッジがしっかり効いていない場合が多い。

<球の行方> 
☆☆☆

写真7              写真8              写真9
  

 まず写真7では、斜め前にグラブを突きだし、球の出所を長く隠すことは出来ている。しかし写真8のテイクバックの時点では、前肩の開く際にボールを持った方の腕が、打者から見え始めている。開きが早く球の出所が観やすい投手だと言えるであろう。

 今度は写真9を観て欲しい、腕を角度好く振り抜かれているのがわかる。この角度こそが縦の変化球を身につける時に必要なのだ。ただしその弊害として左肩が極端に落ちてしまい、身体の開きが早いことを物語っている。

 最後は、写真9のボールを持っている腕に注目して欲しい。少々写真がぶれて分かりにくいが、この時期の高校生としては球持ちも悪くない。もっとボールを押し込み球持ちが我慢出来ると、ボールにバックスピンをかけることが出来、球に伸びを加えたり、指先まで力を伝えられ微妙な制球も付けられるようになるだろう。

<フィニッシュ> 
☆☆☆

写真10


 写真10は、田中投手のフィニッシュのものである。振りおろされた腕が、グラブと左足の間に絡みついているのがわかるだろうか。腕が身体に絡み付いてくるのは、縦にしっかり腕が振られている証なのである。

 今度は跳ね上がった右足に注目して欲しい。足の上がりは並程度である。これがもっと引き上がって来ると、しっかり前足(左足)に体重が乗っている証なのだ。


(最後に)

 投球の課題は、左打者に対しての攻めや制球。フォームは、まだまだ課題を残すものの、全体的には無難にまとめられたフォームだと言えるであろう。非凡な球速や変化を生み出す一方で、特に開きが早く球の出所がみやすいことが、今後の大きな課題だと言えるであろう。

 今後もそのスケール感を増しつつ、投手としての完成度も増して行ければ、2005年度の目玉選手にも成り得るほどの素材である。地道に精進し続ければ、来年の夏には先輩達をも凌ぐ選手に成長出来るかもしれない!


(2005年 3月28日更新)