そこで目が覚めた。
彼はベッドから降りると、大きく伸びをした。顔を洗い歯を磨き、服を着替え、そしてキッチンでパンをトーストしそれを口に挟みながら、ふと時計に目をやったその瞬間!……彼は真っ青になって家を飛び出し、駅へ向かった。
道の途中で電柱にぶつけた頭をさすりながら、小銭入れ開く。いつも使っていた定期を家に置いてきてしまったようで、券を買わなくてはならない。
―まったく、今日は運が悪い……―そんなことを考えつつ、百円玉を二枚取り出し、一枚ずつ券売機の投入口に投入した。いや、投入しようとした。
―入らない。百円を入れようとした途端、何か大きな力に逆から押されたようになって、入れることが出来ない。
―だれかが、悪戯で透明なアクリル板か何かを貼り付けたのかもしれないな。
そう思った彼は、別の券売機を使うことにした。
―今度も入らない。
その後全ての券売機を試したみたがが、結局のところどれも一緒で、券を買うことは出来なかった。
―まったく、今日はのっけからさんざんな日だ……
そんな事を考えながら、券売機を尻目に、一路定期を取りに家へ急いだのだった。