Y小学校6年3組 第17話

欲望の行進

「ええ〜〜、僕がぁ!?」
 瑞貴の困惑した声が響く。
近所に住む同級生の谷口姉妹に無理難題を突きつけられることはいつものことだが、今回は洒落にならないレベルだ…

 Y小学校が所在するこの区で行われる『区民まつり』の開催が迫ってきた。
年に一度の大掛かりな行事で、今年はY小学校も出し物の一つに参加することとなった。
5年生と6年生のうちの希望者で、マーチングバンドを結成して行進するのだという。
瑞貴はこれに参加するつもりなど初めからなかったのだが、萌香と萌里が勝手に希望を出してしまったらしい。
その上、今日瑞貴用のパレードコスチュームをこうして彼の目の前に持ってきた後で、
彼に初めて参加するように要請してきた、いや、強制してきたと言ったほうが正しいか。

「困るよ!なんで勝手に…」
「だってみずきちゃん、かわいいもんね」
「ねー」
 顔色を失っている瑞貴をよそに、萌香と萌里はニヤニヤしながら顔を見合わせる。
「こ、これ…女子用の制服だし…こんなの着れないよ!!」
「どうして着れないの?」
「…え?」
「あたしたちの前でよく、女の子の格好してくれるじゃない。この前は、ブルマ姿も見せてくれたし。
それにこれ、みずきちゃんの体のサイズもちゃんと調べて借りてきてあげたんだよ。ピッタリに決まってるって」
「そ、そういう問題じゃ…」
 確かに瑞貴が谷口姉妹の前でスカートやブルマを穿かされたことは一度や二度ではない。
しかしそれは決して自発的にやった行為ではなく、180cmもの長身いじめっ子姉妹に凄まれたら
小さく華奢で弱気な瑞貴が毅然とした態度に出られるはずもなく、仕方なしにやらされたことだ。
しかもこのマーチング用ユニフォームを着るのは彼女たちの前だけではない。
区民まつりの会場で、大勢の人たちに見られるということだ。
「街中の知らない人たちの前でなんて恥ずかしすぎる!絶対いやだ!!」
 想像するだけで顔を真っ赤にしてしまいながら、瑞貴はいつもより強気に抵抗の姿勢を見せた。
この意地悪な双子の前だけならまだしも、学校のみんなや一般の人々に女装姿を見せ付けるなどということを、
さすがに受け入れるわけにはいかなかった。
しかし…

「知らない人だからいいんじゃない。みずきちゃんが本当は男の子だって気付く人なんかいないって。
こうやって普段の服装でいるときだって女の子と間違われちゃうみずきちゃんだもん。それにすっごくレベルの高い、ね。
このかわいいユニフォームで、街中にスーパー美少女・みずきちゃんの存在を思い知らせてあげればいいの。
もっと自分に自信を持ちなよ」
「そ、そんな…」
 萌香は瑞貴の反対に全く耳を傾ける様子はなかった。
「それに、あたしたちだってみずきちゃんに意地悪したくて頼んでるわけじゃないんだよ。
本当ならあたしたちが自分で参加したかったんだけどさ、ユニフォームのサイズがないからって断られちゃったの。
このユニフォームってけっこう高いらしくて、あたしたちみたいなのは大きすぎるから急に用意できないってさ。
体のせいであきらめなきゃいけないなんて、ひどい話だと思わない?
だから、せめて仲良しのみずきちゃんに、代わりに夢をかなえてもらおうって2人で話し合ったんだ」
 言いながら、少し悲しそうな顔をしてみせる双子の姉妹。
これを目にして、要求をはねつけようとする瑞貴の気持ちは勢いを止めさせられる。


 2人に押し切られるまま、瑞貴はパレード用コスチューム一式の入った大きな紙袋を持って帰った。
その道すがら、瑞貴は当日のパレードに参加するのであろう他の少女たちが、渡されたコスチュームを手に
楽しそうにわいわい騒いでいる姿を目にした。
それは同級生の舞、アリサ、ジェニーたちだった。
「…!!」
 彼女たちを見た瞬間、瑞貴は罠にはめられたことを悟った。
『ユニフォームのサイズがないから断られた』という谷口姉妹の言葉が、真っ赤な嘘だったと気付いたのだ。
あの姉妹よりさらに大きな女子にもしっかり配られてるじゃないか…
元々参加したかったなんて適当なことを言って、はじめから僕を出させて楽しむつもりだったんだ…
彼女たちのたくらみを知ってがくりと気を落とし、鉄のように重い足取りで帰路につく瑞貴。
「あ、あれみずきちゃんじゃない?」
「ほんとだ。なんか同じような紙袋持ってるけど…」

 帰宅後、改めて袋を開け中身を確認する瑞貴。
「こ、これを…着ろなんて……」
 床に広げたそれらを見れば見るほど、瑞貴の顔は紅潮していく。
白と赤を基調とした鮮やかな衣装。
詰襟の軍服のようで勇ましいイメージを与える反面、袖はなく、着れば肩から大きく露出するはず。
肩には金色に輝く無数の紐状の装飾、胸元を飾るのはこれも眩いゴールドのボタンとロープのようなアクセサリー。
重装備に見えて大胆なそのジャケットに息を飲む瑞貴だったが、それだけでは済まされない。
一緒に下半身に身に付けるのは、極めて丈の短い純白のミニプリーツスカート。
加えて同じく純白の、エナメル素材でテカテカと輝くロングブーツにロンググローブ。
「……!!」
 瑞貴も思春期を迎えた男の子。こんな衣装に身を包んだ女の子の姿を目にすればたまらない。
だが、当日にこれを着用するのは自分自身。それも、大規模なイベントで人目に晒されながらだ。
普通の女の子にしてみれば憧れの綺麗なコスチュームが、瑞貴の視界からは涙でぼやけてきた。


 区民まつり当日。
会場となる大通りに集結した多くの人々が息を飲んだ。
パレードで行進する女子児童たちも、演奏で参加する男子児童たちも、引率でやってきた学校関係者も。
参加メンバーのことを知っている者たちのほぼ全てが、そこに現れた1人に目が釘付けとなる。
6年3組にこんな小柄で華奢な女の子がいただろうか…
それもTVのCMでイメージキャラとして登場しそうなほど清潔感漂う美少女。
外部の見物客、つまり瑞貴の正体を知らないでこのパレードを見に来た人々はほとんど、
彼のことを本当の女子小学生だと信じて疑わないまま通り過ぎていくのに違いない。

 参加する子供たちも、瑞貴のマーチング用ユニフォーム姿を見るのは初めてだったので驚いたのも無理はない。
前日までの練習は体操服で行われていたから。
加えて、瑞貴がこれに参加することは練習に出ていた時点で周知の事実だったが
まさか本当に女子用のユニフォームで出てくるなんて……
普段から男の子らしくない、女の子の格好が似合いそう、そう言われ続けていた瑞貴。
しかし、こうして本当に女装姿でみんなの前に姿を現したのはこれが初めてだった。当の瑞貴も凄く恥ずかしそうにしている。
股下部分からほとんど距離のない、こんなに短いスカートを穿かされた経験など当然ないのであろう、
しきりにスカートの裾を下に引っ張って、むき出しになった太腿を隠そうとする仕草を見せている。
エナメルロンググローブにロングブーツも、おそらくこのユニフォームが生まれて初めての着用になるのだろう。
その不思議で違和感たっぷりの感触に戸惑い、照れているのが手に取るようにわかる。
ミニスカートに加え、ジャケットもノースリーブで肩から肘のあたりまでさらけ出されている。
どんなに恥ずかしがろうとも、この格好でいる以上隠す方法などない。

 …だが、その瑞貴を見て否定的な反応を示すのは誰一人としていなかった。
「かわいい〜!!」
「みずきちゃんって、本当ははじめから女子だったんでしょ!絶対!」
「超似合う!ねぇねぇ、一回だけ抱きしめさせてよ!」
 一緒に参加する、または応援にやってきた同学年の女子児童たちからの黄色い歓声が辺りを埋め尽くした。
さらに、瑞貴よりも大きい5年生の女の子数人までが珍しがって集まり、
彼を覗き込んだり調子に乗って頭を撫でたりベタベタとくっついてきたりする有様だった。
「え〜この人、男子なの?見えな〜い」
「もったいないよね、こんなにかわいいのに」
「あたしよりユニフォーム似合ってるんだもん。なんか悔しいよ」
 キャピキャピと分厚い輪になって群がってくる少女の軍団に圧倒され、またその本物の女の子特有の甘い香りに
何重にも包まれる感覚についうっとりと酔い痴れてしまいそうになる瑞貴。
そんな喧騒を遠巻きに見つめているほかの男子参加者たちもみんな口には出さなかったが、思ったことは一緒だった。
6年3組から初めて誕生した、自分たちを見下ろしてくる視線じゃない、恐怖を先に抱かせない女の子。
自分たちより小さくか弱く、守ってあげたくなるというか、男らしい気持ちで接することのできそうな美少女。
これまでに味わうことのできなかった新鮮な気持ちでついつい見つめてしまう彼らだった。
(森野君…本当に女の子だったら……)
(なんであいつ男なんだよ、もったいなさすぎるぜ……)
(神様なんてのが実際いるとしたら、瑞貴を女の子に変身させてくれって頼むな、俺…!)


「みずきちゃん、ちょっといいかな」
 騒ぎが一通り収まってきた頃、瑞貴をここに送り込んだ張本人である谷口姉妹が私服姿で現れた。
やはり冷やかしで見物に来たのだろう、あんな嘘をついて迷惑なことをしてくれて…と抗議でもしたかった瑞貴だったが
やはりこの2人そろって180cmの長身で目の前に立たれると反抗の火は一気に消されてしまう。
「始まる前にちょっと確認したいことがあるの。来て」
 萌香が明らかに何かを含んだ笑顔で、瑞貴の手を引っ張り一旦人気のない場所へと連れて行く。
何やら嫌な予感を覚えながらも瑞貴は、その引く力に逆らえずついていくしかない。
人目の遮られた物陰に連れてこられたところで萌香が突然瑞貴からバトンを奪い取り、
同時に瑞貴の両手は背後から捕まえられて自由を奪われる。萌里が素早く後ろ手に拘束したのだ。
 ぐりっ。
「くぅっ……!」
「ふふん、やっぱりね。なんだかんだ言ったって女の子の格好するの気持ちいいんでしょ、みずきちゃん」
 萌香が取り上げたバトンが瑞貴のミニスカートの上から突き立てられ、刺激を加えてくる。
谷口姉妹は瑞貴が女の子用の制服姿で人前に立つ倒錯的感覚と、ミニスカートにブーツの慣れない奇妙な穿き心地に興奮して
自分の気持ちと裏腹に勃起してしまいもじもじしているのを鋭く感じ取っていたのだ。
これまでに何度も瑞貴をおもちゃにしてきている経験から、瑞貴の微妙な性的反応もお見通しとなっている2人だった。
「この前ブルマ借りてきてあげたときもビンビンだったよねぇ、みずきちゃん。
スカートはいてるからってあたしたちの目がごまかせるなんて思ったら大間違いだよぉ。
やっぱりみずきちゃんは元々こういうのが大好きな、女装マニアのM男君なんだ〜☆」
 背後から瑞貴の抵抗を封じ込めながら、萌里も言葉で責め上げてくる。
「ち、ちが…はぐぅぅ!!」
「どこが違うって言うの。こーんなにバトン押し返してくるぐらいバキバキに硬くしちゃって。
それにこれだけ感じまくってて普通の男ですなんて言わせないからね。この女装露出マゾ。ド変態」
 前後から罵りの雨に打たれる羞恥と快感で真っ赤に俯き、両の目尻に涙を浮かべていやいやと首を振りながら
非力ではかない抵抗を続けている瑞貴の姿に、ついつい責めの手に力がこもっていく萌香と萌里だった。
いつしかこのサディスティックな双子の姉妹はバトンを2人で片手に持ち、瑞貴を前後から挟んだままそれを持ち上げて
瑞貴の股間を苛烈にいたぶっていた。金属のバーに真下から圧迫され、瑞貴は爪先立ちで悶絶する。
「くぁ、あふっ……」
 このいやらしい拷問に瑞貴は、口から漏らす喘ぎ声さえも幼い女の子を思わせる高く細いトーンだ。
「あーあ、下に穿いたブルマもぬるぬるにしちゃってる。パレードの最中もこうやって一人で感じて楽しむつもりだったの?
お姉さんはみずきちゃんをそんなはしたない子に育てた覚えはありませんよ」
 少し芝居がかった口調で瑞貴をなじりながら、萌香は瑞貴のミニスカートを捲り上げて勃起に引っ掛け、
股間の膨らみを外からわかる状態にしてしまう。
このパレード用ユニフォームはスカートの丈が極端に短いため、アンダーとしてブルマの着用を全女子児童に義務付けてあった。
谷口姉妹は瑞貴に、それもしっかり守るよう言いつけていたのだ。
ブルマを真上に突き上げ、軽い素材のミニスカートを跳ね除けるように股間をそそり立たせたまま
取り上げられたバトンで責め嬲られ悶え喘いでいるバトンガール…そんな異様で背徳的なシチュエーションを作り出した
いじめっ子姉妹自身も、この様子にドキドキしてしまい、空いた手がつい自分の胸や股間に伸びてしまっていた。
「ん…」
(みずきちゃん、かわいい……!)
(この行事終わったら、また改めてかわいがってあげなきゃね…もちろんこのユニフォームで)
 いたぶっているだけのはずの萌香と萌里も、いつの間にやら顔に熱を帯びて呼吸を乱し始めていた。

 はっと我に返った谷口姉妹。そろそろパレードの始まる時間だ。
そろってバトンを手から離すとバトンはアスファルトの上でカラーンと音を立てて転がり、
支えを失った瑞貴も真っ赤な顔で力なくへたり込む。
「ぅ…ぁぁ……」
「いっけない。みずきちゃん、もう時間みたい。このへんで勘弁してあげるからもう行っておいで」
(ほんとにこの子かわいすぎ…つい熱くなりすぎちゃった。危うくパレードの前にイかせちゃうところだった)
「知らない人たちの前でスカート持ち上げて男の子だってバレないようにね。さ、頑張って!」
(続きは帰ってからのお楽しみってことにしとこうっと)
 熱の冷めやらない2人はそれぞれ意地悪なたくらみを心に隠したまま瑞貴を起こしてあげて、
めくれ上がっていたスカートの裾を戻して勃起を隠してあげた後、彼の背中をポンと叩いてパレードの本番へと送り出した。
少し前屈みでよたよたと慌てて他のメンバーの待つ場所へ向かう瑞貴の後姿を眺めながら、
先送りにしたお楽しみへの期待に、2人で顔を見合わせてまたニヤニヤと笑みを浮かべてしまう萌香と萌里だった。

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 一方こちらでも、Y小学校が参加するこのマーチングパレードをめぐってはある思惑が渦巻いていた。
児童同士が悪戯で参加を決めてしまうどころの話ではない、もっと黒い欲望の…

 引率、世話係としてこの会場に姿を見せている教諭の1人、畠中伊佐夫。
彼は現在4年生を受け持つ身であり、特に学校側からこの役への打診があったわけではないのだが、
参加する児童が決定した頃のタイミングで突然、彼の側から申し出てきたのだった。引率を務めさせてほしいと。
普段見せないほど積極的に出てきた畠中の態度に教頭は半ばたじろぎながら、沼田と交代させる形で
6年生の担当の1人に畠中を加えることにした。
不自然な形で役割にねじ込んできた畠中のお目当ては、もちろん…このパレードに参加している篠田アリサだった。


 昨年度まで教え子だったアリサに恋焦がれ、いや、崇拝している畠中の想いは、
最近特に危機感をも含んだものへと変わってきていた。
アリサに対してただのファン以上の気持ちで注目している男たちが少なくないことは畠中も知っている。
単にスケベな視線で見つめている連中のことは別に気にする必要などないが、
問題は自分と同じ思いでアリサを見つめる、つまりアリサ様の前に跪きたいマゾ男が想像以上に多いことだ。
ネットのSNSでも、『篠田アリサ女王の下僕たち』なるサイトを先日発見してしまった、畠中。
参加人数も相当な数になっており、その中では連日、長身ジュニアアイドルへの熱い被虐願望が渦を巻いていた。
やはり日本中にいたのだ…誌面や映像を介する形で彼女に服従の悦びを教え込まれた男たちが。
この中の誰が、今日にでも自分を出し抜いてアリサ様の足元に平伏し、その歪んだ想いを告白しないとも限らない。
普段学校という場でいつもアリサ様の近くにいる男としての優位性など感じている場合ではなかった。
知らない男に先を越される前に、何としても自分こそがアリサ様に奴隷として受け入れていただかなければ…
危機感を募らせていた矢先、今回のマーチングパレードの話を聞くに至った。
それに彼女が参加するとなれば、行かないわけにはいかなかった。気付けば、教頭に半ば食って掛かるようにして
引率係としての参加を要求していた畠中だった。


 手段はどうあれ目的の第一段階が果たせた畠中の前に、ついにアリサが姿を現す。
吹奏楽団を従えるように、勇ましく大胆なマーチングバンドのユニフォームに身を包んだアリサが大通りを行進していく。
(うおおおおっ!!)
 畠中は熱くなるあまり叫びを口に出してしまいそうになる。
可憐、勇壮、そんな表現が高次元で両立したそのユニフォームを、どんな見本よりも美しく着こなして
観衆や後続の男子児童たちの目を奪いながら綺麗な足取りで進んでいくアリサ。
(なんという凛々しさ…ああ、なんとしてでもアリサ様にお仕えせねば…!)
 男たちの目を釘付けにするのなら、近くにいる舞やジェニーも決して引けを取らない。
しかし畠中にとってはやはり、一番はアリサだ。
ジュニアアイドルとしての経験か、こんな大舞台で行進しながらもあの自信に満ちた雰囲気、
それが女主人としての威厳にも似たオーラを畠中に感じさせ、痺れさせる。
畠中のマゾヒズムを刺激する天性のものを、アリサ本人は意識せずとも持っている。
不恰好な低身長、短足の自分が横に並べばきっと観客たちから笑いが起こるであろう圧倒的違いのスタイル。
離れた場所から見つめているだけで、自らとの格の違いを思い知らされるような美しいお姿…
その美脚が1歩進んで地面に下ろされるたび、畠中には踏みつけられる快感を呼び起こしていく。
加えてしなやかで長い腕を包むロンググローブと器用で華麗なバトン捌きは畠中に、
そのバトンがうなりを上げて背中や尻に炸裂することを予感させ、甘い疼きを伴った戦慄でゾクゾクとさせる。

 本来の仕事も忘れ、畠中は一心不乱にアリサを目で追い、写真を撮り続けた。
ほとんど、単なる部外者のカメラ小僧と化していた。
撮影しながら、歩を進めていくアリサのブーツに踏みしめられるアスファルトの路面に嫉妬を覚えた。
もし透明人間になれたら、迷わずこの行進の前に先回りし、全裸で仰向けとなって待ち構えるだろう。
そして最下級の視点から、はるか遠く高い位置にあるアリサ様を拝み、その高さをもたらしている長く長く美しい脚を包む
エナメルブーツの底をたっぷりと味わわせていただき、その重みを全身で享受して悦びに震えたい…
いや、それよりもこの場に他の児童も観客たちもおらず、もしアリサ様1人だけだったら絶対躊躇せず
全裸となって駆け寄り土下座、もしくは野生動物の降参のポーズにも似た姿勢で絶対服従を誓い、
お好きなだけ踏み躙って頂くよう懇願する…本当に誰もいなかったらしたい!!
そして使い古されたマットのように、全身くまなくアリサ様のブーツの痕を深く刻み込まれて無様に転がっていたい…
単なる下足掃除用具でいい…アリサ様に使われたい!!

 傍目から見て悟られないよう気を配りながら、心の中での熱狂のうちにY小学校の出し物は終了した。
バトンや楽器は一箇所に集められ、児童たちも更衣室へと向かっていく。撤収に入ったのだ。
アリサ様の凛々しく美しいお姿の余韻にもっと浸っていたかったが、彼にも一応表向きの仕事が残っている。
いまだ収めきれない昂りにやや不自然な姿勢となりながらも、畠中も後片付けに参加していった。
さすがに衆人環視の中、パレード参加中の女子小学生の前で奴隷志願をするほどの度胸があるはずもなく、
畠中の願望は今日もかなえられなかったものの、最高の夢を見させてもらうことができた。

 自宅に帰り着いてからも畠中は、興奮が過ぎ去っていなかった。
むしろ、現時点のほうが高まっていると言ってもいい。とてつもなく尊い『宝』を手にすることができたのだ。
それは…アリサが今日のパレードで着用したユニフォーム一式だった。
児童たちの着たユニフォームは着替えが終わったあと現地で元の紙袋に戻した形で教職員たちのもとに回収され、
学校が用意したワンボックスカーに載せて学校まで運び、翌日クリーニングに出すという手はずになっていた。
そのワンボックスを運転する役割を、幸運にも畠中はもらっていたのだ。
さらに好都合なことに、それぞれの紙袋には使用した児童の名前がマジックで書かれている。
この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかなかった。
Y小学校に到着した後、畠中は荷物を運ぶ作業に紛れて素早く、篠田と書かれた紙袋を抜き取った…


 自室に並べた、アリサ着用の衣装の前に、畠中は全裸で平伏した。
昼間、パレードの行われていた街中でできなかった、やりたかった本当のことを、畠中はここで行った。
客観的に見ればそこにあるのはあくまで彼女が一度着ただけの衣装に過ぎず、本人がいるわけでは決してないのだが
畠中からすれば、今ここにあるこのブーツのほうが、自分なんかより遥かに位の高いものだった。
(私は本来…アリサ様の足元より目線を高くしてはいけないんだ!)
 土下座の体勢のまま這いずって、畠中はさらに目の前にそびえる白いブーツににじり寄る。
渇愛するアリサ様の美しく長い脚を包んでいた、白いエナメルロングブーツ。

 アリサが履いていたブーツの爪先に唇を捧げようとする畠中。
光沢を放つ白いブーツの表面に、畠中自身の顔が鏡のように映りこんでいる。
極めて変態的な行為に及んでいる最中の、素っ裸の己自身が。
萎えるかと言えば、決してそうではなかった。
去年まで自分の教え子だった女子小学生が着用した衣装を勝手に持って帰ってキスをしようという背徳、
かつての教え子にして熱烈な崇拝の対象であるアリサ様の使用した道具にご奉仕できる悦び、
全国に多数存在するアリサ様の潜在的奴隷たちを差し置いてこの機会に恵まれた優越感、
そんな数々の思いを、この状況が却って熱く増幅させていった。

 冷たく硬く、エナメル素材の滑らかな感触が唇に伝わる。
ついにやった…本人が履いている状態ではないので完璧とは言えないながらも、
長い間夢見続けていた、アリサ様のお靴の爪先への服従の接吻が、実現した瞬間だった。
胸の高鳴りに呼吸は乱れ、痛みを感じるほどの喉の渇き。
心臓がついていけず苦痛を覚えるほどの愉悦に畠中は喘ぎながら、アリサのブーツを捧げ持つ。
そのまま畠中は仰向けに転がり、自らの胸板の上にブーツを立てた。
アリサに踏みつけられること、彼女の下敷きとなることをイメージし始めたのだ。
アリサのブーツの前に一糸纏わぬ姿で跪いたときから既に怒張しっぱなしの畠中の一物も、
包皮を破裂させてしまわんばかりにいきり立って天井を向いている。

 ただ自分の手で持って胸の上に置くだけでも、重みを感じる。
間近で見ると、想像以上に細く高いヒール。
身長186cmで体重も平均的な小学生以上は確実にあるアリサ様がこれを履いて自分の上に乗ったら…
きっと無事では済まない。肋骨が折れるかもしれないし、一生消えないようなヒール痕が刻み込まれるかもしれない。
それ以後、決して人前で裸を見せられない身となるかも…
しかしそんな恐怖は、直後には切ない期待感にすり替わってしまっていた。
アリサ様に、奴隷の印を付けていただける!目に見える形で、所有物としての証を!
それを思い描いているうちに、ブーツの上にパレードコスチュームのアリサが、半透明の幻となって畑中の目に映り始めた。
「あ、ああ!!」
 一人ぼっちの部屋の中、畠中は思わず大声をあげてしまう。
昼間あれだけ胸を焦がした、勇ましい軍服のようなジャケットにミニスカート、ロングブーツ姿のアリサが
バトン片手に、蔑みを湛えた視線を下ろしてくる幻覚が、彼には確かに見えた。
地面と同じように扱われる自分から見上げる186cmのアリサ様は、天と地を思わせる高さ。
その絶望的な落差、格の違いを感じて、畠中はより胸と股間にキュンと甘く痛烈な締め付けを感じ、息を荒げる。

『こんな奴が担任だったなんてね。私の足の下で潰れてるのがお似合いの虫ケラが』
 畠中の脳内に、アリサの声色の侮蔑がエコーを奏でながら響いた。
そんな想像が、彼の最後の引き金を引いた。

「あああ!!アリサ様アァ――――――――!!」
 びく、どくん、ぶっぴゅるるるるぅ――――――――――――っっ!!

 手でしごく動作さえ要さずに、畠中はアリサのブーツに呼び起こされた妄想のみで大爆発させられた。
意識さえ飛びそうな快楽の中、畠中はのけぞりながら手に持ったブーツを移動させ、ソールを自らの顔面に擦りつけながら
高い踵を舐めしゃぶっていた。
アリサに人間未満として扱われ、顔面を踏み躙られてヒールへの奉仕を強制されることを夢想して。


 ああ…いつの日にか、アリサ様ご本人の靴にご奉仕したい…本物のアリサ様の重みを、全身で受け止めたい…
遠く離れてしまわないうちに、きっと、必ず……!


つづく