6年3組物語 第18話

才能の種蒔き

「舞ちゃん!…はぁ、ちょっと目を離すとこれだもんね…」
 舞の相も変らぬ性質の悪いお遊びに、ちあきは溜め息をついた。
親友である舞の長く伸びる脚の前で、恍惚の表情をあらわにへたり込んでいる見知らぬ小男。
彼の穿くズボンは既に股間から裾に至るまで異臭を放つ染みに覆われ、下のアスファルトまで湿り気を帯びている。
…この男もまた、果てさせられたようだ。悪戯好きな長身美少女の、遊び道具となって。

「ほんっと…何しにここに来たか、わかってるの?舞ちゃんが言い出したことだから、私も付き添ってきたのに」
「まぁまぁ…そんなに怖い顔しないでってば」
「一人で行かせてたら、どんなことになってたか想像するだけでこっちが怖いわ」
 ここは、とある大学。
行事の都合によりY小学校の授業が午前までで終了したこの日、舞が突然、ここに遊びに来ようと提案したのだ。
ちあきの従兄妹、山野富士夫が在籍するこの大学に…
その話を聞いたとき非常に嫌な予感を覚えたちあきだったが、断っても舞は単独で出かけて行きそうな雰囲気だった。
自分が歯止めにならなければ、舞が向こうでどんなことをするか心配になり、ちあきも気乗りしないまま同行したのだった。
舞が今日になって突然言い出したことであり、現在学内で受講している富士夫はこの来訪のことを全く知らない。

 小学校とは全く違う空気を楽しむようにして、キャンパス内を闊歩する舞。
そんな彼女を監視するように、隣を歩くちあき。
そろって180cm超の長身、スタイルも抜群の2人組が道を行くその姿に、学内の男どもの視線が一斉に吸い寄せられる。
そしてこの2人の正体が、遠く離れた町に住む小学校の6年生であることなど、誰も気付けるはずがない。
白く輝く脚線美を惜しげもなく披露する膝上20cmのタイトミニスカート、艶めかしい光沢を放つホワイトのサテンブラウスは
第3ボタンまで開けられて、深い谷間を作った豊かで形の良いバストに押し上げられる黒い皮製のビスチェが覗いている。
12cmピンヒールを履き、美しい足取りで歩を進めるたびに悩ましくくねる、190cmを軽く超える高さとなった舞の長身。
そんな舞に見下ろされながら壁際に追い詰められ迫られれば、大抵の男はひとたまりもない。
心を絡め取られ溶かされていくような視線と甘い言葉の下で、女に免疫のない男は当然秒殺、
女遊びに慣れているはずの男も、麗しのお姉さまに狩られる坊やの悦びを教え込まれながら果てていく。
冒頭で、ちあきが発見して舞を咎めたときに足元にいた男は、実は本日学内で舞の手にかかった5人目の犠牲者だったのだ。

「あたしと少しタイプは違うけど、ちあきちゃんには素質を感じるの」
「素質…?」
「そ。男の子を思い通りに操れちゃう、素質」
「…い、いらないわよ、そんなの!」
「あら、もったいないわね。磨いていけば、こんなに面白いものはなかなかないのに。
男の子のハートを引き抜いて、手のひらの上とかヒールの下で転がしてあげちゃう感じでね。
優しく優しくコロコロしたり、ときにはきつくキュッ!てしてあげたり…
そうすれば、男の子は大体素直なペット君になってくれるわ」
 話を聞いているだけで、ちあきは同性でもゾクゾクとした感覚を覚えた。
改めて思わされる。この藤原舞という子は…とんでもない存在だと。
ちあきは舞と小学校入学以来ずっと同じクラスの親友だが、舞が4年生の秋頃から始めたこの遊びだけにはついていけない。
当時で既に大人の男も軽く見下ろす背丈となっていた舞の前で、小学校の上級生や近くの中学生はもちろん
自分たちの3倍、4倍、果ては5倍以上年上の男までもが、彼女に男の『子』として扱われ、
弄ばれるがままに裏返った絶叫を上げながら痙攣して、股間に湯気の立つ大きな染みを作りながらダウンしていった。
それが射精という男性特有の性的行動であることは、去年ようやく知ったちあきだった。
ランドセルを背負った女子小学生にからかわれるだけで、セックスみたいに興奮して気絶しちゃう大人の男…
全く手を出すこともできず、また直接触れられもしないのに、ほんの軽い遊びとして精を一滴残らず抜き取られる
マゾヒスティックな新しい快感に目覚めさせられ、目尻を下げ半開きの口の両端から太い涎の筋を作った
だらしない顔でカクカクと震えている男を、ちあきは何度も舞に見せられた。
それによりちあきは男という生き物に幻滅、特にいい年をして小学生の自分よりも小さな男には
より軽蔑の念を持って接するようになった。
6年3組の担任・沼田も、彼女から向けられる氷のような視線には一種の恐怖すら感じている。

「と、とにかく私は頼りないチビ男になんか興味ないから!
プチおは身内だし、私がついてないと舞ちゃんに余計変態に仕込まれちゃうかもしれないから仕方なく一緒にいてあげるけど…」
「あら、人聞きの悪い」
「人聞きの悪い?事実でしょ、全部。
学校でも外でも舞ちゃんが変な遊びばっかりするから、町内中の男がMみたいに思えるわ。
せめて遠く離れたこの街くらいではおとなしくしてて欲しかったけど、早速あんなことしてるんだもん」
「いいじゃない、楽しいんだから。それにあの子たちだって、最高に幸せそうな顔してるし。
男の子たちに何かかわいそうなことしてるって言うなら考えるけどさ。
ちあきちゃんも才能は確かにあると思うの。少し意識すれば、退屈しなくていいわよ」
「だから私はいいってば!そんな趣味ないし…
大体私はちょっと人より背が高いだけで、そんな才能なんてあると思わない!」
「そうかしらね…じゃ、今もあたしたちについてきてる子たちだけど…」
「え?」
「これ、もしかしたら半分くらいはちあきちゃんに惹かれて来てるのかもしれないわよ」
 舞に言われて、ちあきは初めて気が付いた。
ここの学生たちだろうか、自分たちの後ろを、何人もの男たちが呆然とついて歩いてきていることに。
皆一様に腑抜けた顔で、まるで見えない首輪をはめられて鎖を自分たちに握られているかのように。
「な、何こいつら……キモっ…!」
 モデル顔負けの悩殺美女2人組に奪われた魂をその手に握られ、散歩に引き連れられるペットのような小男たちを見渡して
それを作り出しているちあき自身が表情をこわばらせた。
「フフ、ちあきちゃんの実力が少し発揮されたって感じね」
「こ、これはどうせ舞ちゃんに…」
「さあ…わかんないわね」
 舞と対照的に、過剰なファッションはしていない普段着姿のちあきだが、ちあき自身は気付いていない。
自らのその類まれなる長身とボディライン、そしてスリムジーンズを張り詰めさせるヒップに日本人離れした長い美脚は
地味な格好をしていても、男たちにとって十分破壊力に満ちたものだった。
さすがに男を狂わせる遊びのために日々ファッションセンスや行動に磨きをかけている舞ほど洗練はされていないものの、
持っている素質が半端なものでないことは、男たちのうっとりとした視線がちあきにも向けられていることが証明していた。
そして彼らの存在に気付いてからのちあきが投げかける、汚物を見るかのような嫌悪を湛えた瞳は
男たちのハートに蹴りを入れるかのように、確実に彼らのマゾヒズムを痛烈に刺激し、痺れさせていた。

「やだ…こんなの…!」
「邪魔なんだったらさ、『もう付きまとわないで!』って、ビシッと注意してあげたら?
ちあきちゃんから見下ろされてきつく叱りつけられたら、Mっ気のある子ならきっとゾクゾクきちゃってその場で…」
「やめてよ、そんな話!冗談でも聞きたくない!」
 たまらずちあきは、ノロノロとついて回る男たちを振り切るように走り出した。
マゾ男の密集する淀んだ空気を感じ、近くにいたくない一心でちあきは逃げ出したのだ。
(あらあら…でもそのうちわかるわよ、ちあきちゃんにも)
 遠ざかっていくちあきを見つめながら舞はクスッと微笑むと、
ゾンビのようにワラワラと付きまとってきた男たちのほうをおもむろに向きなおした。

「ウフフ、残念だったわね。君たち、ちあきちゃんに嫌われちゃったみたい。
あたしもこれから用事があるから構ってあげられないけど…」
 腕組みをしながら、男たちを見下ろし歩み寄っていく舞。
廊下の床にピンヒールで奏でるコツコツという足音だけで、男たちのうち何人かはもう既に切ない喘ぎ声を漏らし始めている。
魂の全てを舞の掌中に捕らえられ、ローションまみれにされてしごかれるかのように。
「う、ぅぅ…」
「ハァ、ハァァ……」
 間近で視線を下ろしてあげながら、舞は組んでいた腕を少し解いて右手の人差し指を唇に沿わせ、
ただならぬ興奮ぶりの小男どもを見渡しながら少し小首をかしげ、甘い吐息とともに微笑を送る。
184cm+12cmの超長身から注がれる色香に満ちた視線、黒く輝くワンレングスから漂うリンスの芳香、
胸元に添えられた左腕に寄せ上げられ男たちの目線により近い高さで強調される96cmのバスト、
キュッと音の出そうなほどのくびれを見せるウエスト、タイトミニの裾が男たちのへその位置を軽く越える位置に達するほど
高々とそびえる瑞々しい輝きの脚。
男たちの熱く煮えたぎったような視線が舞のボディのあちこちに絡みついていく。
たとえ目を背けろと言われても、それに従える男は誰一人としていないはずだ。
男の目を吸い寄せるようにできている、そんな舞の肢体だった。
そんな彼らの反応を楽しむようにして、舞がまた口を開く。
「次にここに来る機会があったら、そのときは1人ずつたっぷりとかわいがってあげる。
もし泣き出して、許してくださいって言っても許してあげない。あたしが満足するまでね。
…覚悟なさい」
 甘く、それでも反抗を許さない厳しさを含んだ声での囁きとともに、舞は低い位置の男たちに一つ、ウインクを投下した。
「ああっ!はああ!!」
「ひぅうっっ!!」
「アアァ――――――――!!」
 どぷっ!ぐちゅ、っぴゅ―――――っ!!
 ぶちゅる!!どくどくどくっっ!!
 びくん、どっぴゅるるる――――!!
 時間がないと言いながら、大勢の男を鮮やかに、軽く一網打尽にして見せた舞。
ちあきの一瞥によりマゾ心をより高められていたと踏んで、いつもより厳し目の言葉でとどめをさしてあげるという
華麗なテクニックだった。
学内の通路が、己のパンツの中に精の全てを炸裂させて栗の匂いを立ち込めさせながら崩れ落ちた男子大学生で封鎖された。
精根尽き果てて、どの男も1時間はズボンを脚まで濡らした恥ずかしい格好のまま起き上がれまい。
この時間の講義が終わり、全ての学生が出歩くようになればおそらく騒然となるだろう。
名前も知らないお姉様にこの世の天国を覗かせてもらった男たちにこの後待ち受ける事態は…

 そしてそれを作った張本人の舞は、堕とした男たちにはもう目もくれず、その場から逃げていたちあきと合流していた。
「あっ、この音って終業のチャイム?プチお君、そろそろ出てくるんじゃない?」
「そりゃどこかからは出てくると思うけど…大学って思った以上に広いよ?どうやって探すのよ」
「プチお君はちっちゃいからすぐわかるよ。わかんなかったら、誰かに聞いてもいいし」
「また聞くふりして、男に変なことして遊ばないでよ、舞ちゃん…」
 この呑気な性格、しかし男の前では悪魔に変貌する舞の性格には少し疲れてしまうちあきだった。
そしてさっき舞に言われたことをきっかけに、やけに周りの視線が気になるようになり始めていた。
すれ違う男の多くが舞、または自分を見上げてきて、たまに振り返れば通り過ぎた男と目が合う。
「フフ、言ったとおりでしょ?ちあきちゃんには引き寄せられちゃうみたいね」
「わ、私は男なんて…」
「フフフ…」
 平静を装うちあきを見ながら舞は何も言わずに笑った。ちあきの中での何らかの変化を見透かすように。
そんな2人の長身美女小学生が歩くキャンパスの曲がり角の向こうから、
彼女たちと対照的に小学生にしか見えない男子大学生が歩いてきていた。


 つづく