妹のマウンド 第5話

進化

「哲夫君」
 投球練習中の哲夫に、瑠美子が声をかけた。
「少し、フォームに無駄な動きが多いようだわ」
 そう言いながら、瑠美子は哲夫に投球中の体勢をとらせてその節々を手で押したり引いたりして微調整を施す。
その様子を、哲夫は内心快く思っていなかった。
…急にやってきていきなり新しく監督の座に就いたこの女を、指導者として認めたくなかったからだ。
今まで世話になってきた監督の娘で、当然小学生の哲夫なんかよりはよっぽど成熟した人間であり
現在大学でスポーツトレーニングに関する学問に取り組んでいるということで
スポーツの指導の腕前は一応信頼の置ける人物であることは哲夫も十分理解していた。
しかし、わかっていても割り切れないものだった。
野球は男のスポーツなのに…そこに2人も女子が入り込んでさらに監督まで女に代わるなんて…
そんな指導、受けたくない…そう思いながらも、哲夫は傍に寄り添ってフォームの修正をする瑠美子の
大人の女性の香りと感触に鼓動を早めてもいた。

「そう、このあたりのポイントに注意しながら、投げてみてごらんなさい」
 少し渋々としながら、言われたとおりのフォームで哲夫は太郎のミットめがけてストレートを投げ込む。

 ズバン!!

「!!」
「…!!」

「どう?伸びてるでしょ、太郎君」
 瑠美子は自信に満ちた笑みを浮かべて問いかけた。
哲夫も太郎も驚いた。
確かに、球威がアップしたのだ。切れも増している。
「単に力の強い弱いでボールの勢いが決まるわけではないわ。重要なのはその力をうまくボールに伝えられるかどうかなの。
全身を使って、無駄なく力を伝えることができればもっと球速のアップも可能なはずよ」
 …今までに、教わったことのないような的確な指導だった。
「私は、やる以上は君たちにどんどんレベルアップしていって欲しいと思ってるわ。勝つためにね。
そのための努力は、惜しまないつもりよ。チーム内でも、少しでも高いレベルで競い合って欲しいわ」
 哲夫はこの言葉で、新監督・瑠美子に対する意識を大きく変えることになった。
同時に、女だからとわけもなく拒否反応を示していた自分を恥じた。
(この人は、チームのためにがんばってくれてるんじゃないか…それなのに、キャプテンの俺がこんなことじゃ…)
 もともと自分は、野球が好きで、そして野球で勝つためにいつも練習をしているのだという基本を思い出したのだ。
そのための力を貸してくれている指導者を、邪魔扱いして…哲夫は心の中で、瑠美子に詫びていた。
「そういうことだから、今言ったフォームのポイントを忘れないようにね。
…それから、このことは当然妹の愛ちゃんにもバッチリ指導してあるからね。
お互いに切磋琢磨してがんばるのよ。レギュラー争いのライバルなんだから」
 そう口にして去っていった瑠美子の背中を見つめながら、哲夫と太郎は背筋を冷たくしながら顔を見合わせた。
「い、今なんて言った…?」
「愛にも同じようにフォームの指導したって…そんなことじゃなかったか?」
 2人はそろって、少し離れた場所で投球練習中の愛のほうを見る。

 ズバアァン!!
 ズバアァン!!

「ナイスボール!ますます切れも重みもアップしてるわ」
「えへへ、監督さんのおかげでまた速くなっちゃった」

 遠目で見ても彼らが目視で追えないほどにスピードアップしたストレートを次々と放り込む愛と
それを平然と受け止め続けてニコニコと愛のパワーアップを称える夏美の姿を目に入れて、
哲夫も太郎も棒立ちの状態から動くことを忘れてしまっていた。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
 とある休日、着ているTシャツ全体が肌の色を透けさせるほど汗だくになって、哲夫が帰宅してきた。
愛に刺激されて、自分もランニングをしてきたのだった。
妹に負けるわけにはいかない思いで、妹を上回る距離を走るつもりだった。
…しかし、それほど甘いものであるはずがない。
愛が話していた、南町市民体育センターのあたりまでは遠く及ばず、半分の距離で腕も脚も上がらなくなってしまった。
情けなくもあっさり意思の折れた哲夫は途中で引き返し、復路はほとんどの行程を歩いて帰った。
結局往復のうち、実際走った距離は愛の1/3にも満たない。

 ゼイゼイ、ヒュウヒュウと喉を鳴らしながら、鉛でも巻き付けられたような重い足取りで帰途についた、哲夫。
その間、彼の頭の中を渦巻いていたのはやはり、妹の愛だった。
愛がランニングをしていることを知ってから数週間、愛は事実毎日走りに出ている。
雨が降れば、合羽を着用して。一日も欠かさずだ。
そして日に日に、帰ってくる時間が早くなっていく。
加えて日に日に、帰ってきてから呼吸を整え平静の状態に戻る時間も早まっていく。
日を追うごとに確実に進化していく、小学4年生の妹。
いつの間にやら両手に持って出るダンベルも、4kgに重量をアップさせていた。
あのスピードからして、日々行っているその往復15kmはあるランニングも、
もう愛にとっては特別つらい練習ではなくなっていることを哲夫は悟った。
…その、妹がもはや普通にこなしてしまっているいつものことが、哲夫にはできなかった。
しかも、手には何も持たない状態でだ。
圧倒的な差をつけられてしまったことに、哲夫の心は焦燥感で擦り切れてしまいそうだった。
体格、単純な力だけではない。スタミナ、そして、精神力の面でも妹に大差で置いていかれてしまった焦りと屈辱に。
そして今このように打ちひしがれている間にも、愛は上を向いてますます力をつけていることを思うと…

 とにかく、今こうして汗びっしょりで息も絶え絶えな情けない姿だけは見られたくないと思い
早く着替えてしまおうとする哲夫だったが、帰り着いた瞬間に庭でバッタリ愛と遭遇してしまった。
「お兄ちゃんお帰り〜。走ってきたの?あたしも負けられないな、えへっ」
 愛のその言葉にまた心をえぐられながら、哲夫は今愛がやっている行為に首をかしげた。
「はぁ、はぁ…お、お前、何やってんだよ…」
 途切れ途切れに、かすれた声で問いかける哲夫。
「これ?これはねぇ、昨日夏美さんに教えてもらった手作りのトレーニングマシンだよ。
これを使ったら、球を投げるときに使う腕の筋肉が強くなるんだってさ」
 愛は自宅の庭のフェンスに、何やら黒く太いゴム紐のようなものを巻きつけ、
その先端を手に握りシャドーピッチングに近い動作を繰り返していた。
腕を振るうたび、張り詰めたゴムが伸びると同時に愛の背後の金網がガシャッと音を立てる。
ゴムの反動で負荷をかけ、腕力をアップさせようというトレーニングのようだった。

「夏美さんのいたソフトボールのチームじゃ、みんなやってたんだって。どう、お兄ちゃんもやってみたら?
さっ、今度はあたしがランニング行ってこようっと。じゃね」
 そう言って愛は哲夫の横をすり抜け、ほんの近くまで用事でもこなしに行くかのように気楽そうな感じで
左右4kgずつの重りを手に、また約15kmにも及ぶ持久走を始めていった。
(くそっ…なんて奴なんだ。それに引きかえ、俺は…)
 妹の走る距離をダンベルのハンデなしで完遂できなかった上に、膝は笑い汗もとめどなく顔を流れ落ち、
ヒリヒリと痛む喉で満足に息も継げない自分の姿を見つめなおし、哲夫はまた屈辱に沈んだ。

 …数十分後、ようやく体力の回復が見えてきた哲夫は、ふと先程のゴム紐を手に取った。
(こんなもので、トレーニングだって?あの牛女、まったくバカなこと考えて…)
そう思いながら、ものは試しにとフェンスを背にゴムを握ったまま投球フォームに入った哲夫だったが…
 グッ!
「えっ!?」
 哲夫の右腕は、体の前まで振られなかった。
ゴムが、まったく伸びなかったのだ。
(何だ、そんなのおかしいぞ…伸びるんじゃないのか!?)
 グッ、グッ、グン!!
 顔面が脂汗に満たされる。…全然、ビクともしない!
ただ、後ろで金網が引っ張られて虚しく音を響かせるだけだった。
(こ、こんな硬いのか…!?だって、さっき愛がやってたときはあんなに伸びてたじゃないか!)
 哲夫はムキになり、ゴムの先端を右手に何重にも巻きつけて、何度も何度も腕を振り下ろそうとする。
だが、せいぜい動くのは肩の上あたりまで。このゴム紐の平常時の長さの範囲内に哲夫の右腕は封じ込まれている。
(く、くっそおおおお!!)
 半泣きの表情で哲夫は右手を左手で握り締め、ついには両腕を使って力一杯引っ張りだした。
ゆっくりと、伸び始める。
哲夫はこのトレーニングの本来の目的を忘れ、いつしか壁と綱引きでもしているかのような格好で必死にゴムを引っ張っていた。

「哲夫君」
「!!」
 いきなり背後から声をかけられた哲夫は驚きで力が抜け、ゴムの反動で体ごと金網にぶつかり大きな音を立てた。
「何してるの、そんなところで」
 体をさすりながら振り返った哲夫は、その声の主があの牛女であることを認識した。
「お、お前こそなんだよ…いきなりうちに来たりして、何の用だ?」
「これまでいろいろ、愛ちゃんにトレーニングの方法とか教えてきたんだけど、
うまくやってるかなって思って様子を見に来たの。愛ちゃん、今いる?」
「あいつなら…お前に教わったとおりランニングに行ってるさ。今いないから、もう帰れよ」
「あらあら、ずいぶん冷たいじゃない…あたし、一応哲夫君にも有意義な練習方法を教えてあげてもいいって思ってたのに」
「う、うるさいな、監督ならともかくお前に教わることなんか…」
「ただいまー。あ、夏美さんだー」
「!!」

 妹の愛が帰ってくる前にさっさと夏美を追い返してしまおうと思っていたその場に、もう愛は帰還してきた。
哲夫が長距離走の疲れを取ってからこの硬いゴム紐に悪戦苦闘している数十分間に、愛のロードワークは完了したのだ。
(そ、そんなに時間が経ったのか…?いや、こいつが速いんだ!)
「お帰り愛ちゃん。がんばってるみたいでうれしいわ」
「えへへ。あたし、夏美さんと監督さんに教えてもらったことしっかり守って、絶対レギュラー取っちゃうもん!」
 たじろぐ哲夫の横で、愛と夏美の楽しそうな会話が弾む。
あの距離をこんな短時間で走破して、その場でこうして普通におしゃべりしている妹…
哲夫は彼女たちに気付かれないように、手に巻きつけていたゴム紐を外してこっそりその場を立ち去ろうとした。

「哲夫君、そのトレーニングはどう?けっこう効くでしょ」
(ギクッ!!)
「あたしが転校してくる前にいたソフトのチームで、伝統になってた筋力トレーニング法なんだけどさ、それ。
哲夫君、気に入ってくれた?」
「こ、これはちょっと何だかわからなかったから見てみただけだ!」
「そう?さっき、汗だくになって両手で引っ張ってたように見えたけど…
ちなみにこれはね、両手で使うんじゃなくてこうして片手で、投げるようにして鍛える道具だからよろしくね」
 グイッ、グイィッ!
「ぁ、ぁ…ぁぁぁ……」

 哲夫は、震えた。
さっき自分が両腕で一生懸命になって、ようやく少し伸び始めたのを確認できた程度だったあのゴム紐を…
足をそれほど踏ん張るでもなく、片腕の力だけで、平気で反復して伸ばしている夏美の姿に。
「愛ちゃんはどうだった?このゴムを使った筋トレは」
「うん!すっごく力つくと思う、これ!もっと速い球投げたいし、あたしがんばって鍛えちゃいまーす!」
「ふふっ、その意気よ。愛ちゃんはこれからのライオンズを背負うエースとしての資格がありそうだわ」
(ぁ、ぁぁ…そんな…)
 2人の少女の楽しそうな笑顔を目に、話し声を耳に入れながら、哲夫は口をパクパクさせるだけだった。
もちろんこの太く硬いゴム紐は体に負荷を加えるためのトレーニング器具として用意したものであるから、
愛も夏美も別に普段の力で軽くこなしているわけではない。その最中は2人とも、うっすら汗を浮かべている。
しかし、哲夫ほど汗だくにならなければ少しも伸ばせないわけでは当然ない。
その上、哲夫が全身で牽引するようにしてようやく少しだけ伸ばせた程度のものを彼女たちは利き腕一本だけで、
何度も何度も倍以上の長さに伸びきらせて見せている。2人で、楽しげにおしゃべりしながら。
もし何かの理由で自分が彼女たちのどちらかに全力をもって襲い掛かったとしても、
愛や夏美にはその逞しい片腕一本だけで吹っ飛ばされ返り討ちにされてしまうかも…そんな情けない己の姿を想像し、
哲夫は歯の根も合わなくなり膝も震えだした。恐怖が、背筋を這い登る。

「さ、やり方はわかったでしょ?哲夫君。これ使って、ピッチングしてみなさいよ」
「そうだよ、お兄ちゃんもやってみて。きっと、速くなれるから」
 しかしそれに応えることなく、哲夫は彼女たちに背を向け家の中へと入っていこうとする。
「あら、逃げるの?弱い人は練習しなきゃいつまでたっても強くなれないことぐらい、わかってるでしょ?」
「う、うるさいっ!新入りのお前が持ってきたメニューになんでキャプテンの俺が従わなきゃいけないんだ!」
 そんな言い訳じみた捨て台詞を吐き捨てて、哲夫はドアを閉めた。
(じょ、冗談じゃない…あいつらの見てる前で全然伸ばせなかったら、いい恥さらしじゃないか…)

「お兄ちゃん…」
「ほっといていいのよ、愛ちゃん。男って、ああして精一杯強がってないといけない、不便な子たちなんだから。
意地とかプライドとか、いろいろややこしいものを引きずって、ね。素直になれないかわいそうな坊やなの」
「あたし、なんだかよくわからない」
「愛ちゃんもそのうちわかってくると思うわ。
…そんなことより、トレーニングよ。いつも腕を磨いてる人と、そうでない人との違いを見せつけてあげましょ。
愛ちゃんと哲夫君は、同じポジションを争うライバルなんだから手加減は無用よ」
「はいっ!」

 その会話を、哲夫は閉ざした玄関ドアの向こうで全て耳に入れていた。
もう全てを見透かされているような夏美の言葉に、哲夫の自尊心が改めて大きく切り裂かれる。
(くそっあの女、好き勝手なことばっかり…)
 心の表面ではそう毒づいて強がってみたものの、やはりその奥からは次第に強まる焦りが押さえようもなく溢れ出てくる。
現時点であれだけの力の差があり、そして今も着実にその力を増している愛と夏美。
このままでは、取り返しのつかないことになる…
しかしどのようにして差を詰める…?いや、男としてなら上回ってなければ話にならないじゃないか…
不安と焦燥が頭の中をグルグルと回り、哲夫は玄関に座り込んだまま頭を抱え続けていた。


 翌日。練習開始前に、全メンバーが瑠美子の前に集合していた。
哲夫の隣には、愛。
瑠美子と夏美がチームに入ってから、もともと逞しかった愛の肉体はますます向上が感じられた。
筋力トレーニングと持久走を積み重ねられたその体は、あらゆる部位において大きさを増している。
伸縮性のあるユニフォームとはいえ、もう太腿にも袖口にも布地の逃げ場はない。
上半身、下半身ともに窮屈そうなしわを刻みバチバチに張り詰めている。
そして何より、逞しさを増した大胸筋に下から持ち上げられるバストがその高さ、大きさで男たちを圧倒する。
男の欲情を知らずまだブラジャーをしようとしない愛の、ユニフォームにぷっくりと2つの突起を浮かべた巨大な肉球が
多くの男子たちの顔に近い位置に突き出されてゆさゆさと上下に弾み、男たちはそろって前屈みに整列している。
身長も、明らかに伸びている。169cmが今年の測定値だが、おそらくもう170cm台前半から半ばには達している。
少年野球用に作られたユニフォームは、愛にはもう最大のサイズでも限界が近づいていた。
縦、横ともに成長の見られない兄の哲夫との比較はもはや悲しいものがあった。

「今日、また新しくライオンズに加わってくれる新メンバーを紹介します。
いいわよ、こっちに来て」
 瑠美子に呼び寄せられて姿を現した2つの大きな人影。
「ああっ!!」
 その正体を確認してから、5年生の男子部員・磯野克臣と中島誠が驚きの声を上げた。

 今日から南町ライオンズのメンバーに加わる2人、それは、
克臣や誠と同級生、5年3組に属する女子・理沙とジェニーだった。
「妹尾理沙です。あたしは走るのに自信があるからスピードを生かしてがんばっちゃいます。
磯野君、中島君、よろしくね♪」
「ジェニー・レインデス。ベースボールニ、キョウミガアッテ、ハイリマシタ。
ヨロシク、オネガイシマス」

 男子一同は、唖然とする。
「で、でけぇ…」
「ジェニーって…そういえば学校で見たことあるな…で、でかすぎる……」
「ぁぁぁ…な、なんて、胸…」
 入団の挨拶だけで、男たちはもう呑まれてしまっていた。
158cmで細みな体型の理沙は確かに大きいが先に入っている愛や夏美に及ばないのでまだしも、
やはり驚きはこの巨大留学生少女・ジェニーだった。
今年度の身体測定で出た数値は、身長181cm・胸囲100cm。
凄まじい脚の長さ。明らかの今のユニフォームは寸足らずである。足の裏に通す細い部分はもうこれ以上伸びられまい。
小さな男子部員たちから見れば塔のようにそびえるその高さと、真正面に突き出されているあまりに巨大なバスト。
愛よりもさらにユニフォームを内側から強烈に苛め抜くダイナマイトボディ。
前で止められているボタンとボタンの間はガバッと開ききっており、
その空間からは窮屈に押し込まれてもがく爆乳の谷間がくっきりと確認できるほどだった。
いつボタンがまとめて弾け飛び、巨大なブラに包まれたその中身が勢いよく飛び出してもおかしくはない。
しわも自由に刻めないほどパツパツのその服は、ユニフォームというよりむしろボディスーツだった。
その危うさが、男たちをさらに狂わせる。
「このままだと、ジェニーちゃんは少しかわいそうね…このチームも大きな子が増えたし、
早急にユニフォームの新しいサイズを発注しなくちゃ」
 瑠美子は少し笑いながらため息をついた。

「か、監督…また女子なんか入れて…どういうつもりなんですか?」
 必死に勃起を抑えながら、哲夫が問いかける。
「どういうつもりでもないわ。男女の垣根を取り払っただけ。ライオンズは、古い時代の体制から生まれ変わるのよ。
男子も女子もなく、切磋琢磨しながらチームとして向上していくのが目標よ。
…プランとしては、女子も9人は入れたいわね。各ポジションに1人ずつ分けて…君たち男子と定位置争いをしてもらおうかしら。
刺激になって、いいでしょ?女の子には、負けられないわねぇ」
 自分たちが築いてきた世界を根こそぎひっくり返されるような計画を耳にして、哲夫と太郎は汗を浮かべる。
(やばい…やばいぞ、俺たちのライオンズが…)
(こ、このチーム…一体どうなっちまうんだ……)

 そんな焦りを落ち着かせる暇も与えず、瑠美子がこう口にした。
「再来週、練習試合が決まったわ。
みんなの実力、公平に見せてもらうからそのつもりでね」


 つづく