小さすぎる僕 第1話

小学校時代1

 僕の名前は山野富士夫。19歳の大学生。自分で言うのも変だけどコンプレックスのかたまり
のような男だ。

 はっきり言って僕は小さい。本当に小さい。136cmしかない。もう19歳だからこれ以上伸びる
ことはまずあり得ない。実際、身長は中学1年で止まってしまった。幼稚園の頃から背の低い順で
毎年1番前だったけど、学年が進むにつれて2番目との差は広がっていく一方だった。自分の
成長がほとんど自覚できないほどチビリチビリとしか背の伸びない僕に対して、同級生たちは
日に日にぐんぐん大きくなっていき、僕だけが置いてきぼりにされていった。それまで友達だった
奴とも対等には付き合えなくなっていった。

 小学校4年生の時点で1年生の大柄な子より小さかった僕。当然いじめられた。
 背の届かないような高い場所に持ち物を隠されるのは序の口で、意味もなく突き飛ばされて
どこまで飛んでいくかの競争に使われたり、ゴミ箱に投げ捨てられたり、持ち上げられたまま
校舎の3階の窓から出され泣かされたりと、もう思いつく限りのいじめを受けてきた。
体格、体力差はどうしようもなく、毎日毎日泣きながら帰った。

 時には下級生にまでいじめられ連日泣かされていた情けない僕を、同級生の中村真帆だけは
守ってくれていた。真帆は学年で飛びぬけて背が高く、学年一の力持ちだった。子供会対抗の
相撲大会で、4年の真帆が6年の男子を投げ飛ばして校区一になったほどだった。ちなみに、
その6年の男子は真帆より体重こそ勝っていたが、身長では明らかに真帆のほうが上だった。
さらに話がそれるけど、その後行われたわんぱく相撲区内大会には校区最強の真帆は女の子
だからというだけの理由で出場は許可されず、かわりにその負けた男子を代表として出場させ、
優勝したそうだ。真帆が出場していれば区内最強は4年生の真帆だったのかも知れない・・・

 話を戻すと、真帆は明るい性格で誰にでも優しく接することができ、こんなチビないじめられっ子
の僕に対しても優しくしてくれていた。体育の授業なんかで僕だけできないことがあったりすると、
放課後残って練習させられる僕にわざわざ遅くまでつきあってくれたりした。そしてやっとの思いで
僕が成功させると、真帆はまるで自分のことのように喜び僕をほめてくれるのだった。

 そんな優しい性格の持ち主な真帆だけど、曲がったことは一切許せない性格でもあった。
弱いものいじめを見つけると、真帆は鬼神へと変貌を遂げた。僕がいつものように泣いていると、
真帆は優しい声をかけて慰めてくれた。そのあと誰にどんなことをされたのかを僕から聞き出すと
とたんに険しい表情になってどこかへと駆け出していった。気になって真帆を探すと、
たいてい僕をいじめた奴が真帆によって何倍もひどい目に遭わされていたのだった。真帆は相手が
何人いようとおかまいなしで、すさまじい制裁を加えていた。

 僕のズボンを脱がして隠した奴にはパンツを脱がしてほうきで百叩きを与え、僕を3階の窓から
両手で吊るした奴はパンツ一丁にして4階から片手で吊るし、僕を『どこまで飛んでいくか競争』に
使った奴らはその腕力から繰り出されるビンタでさらに遠くへブッ飛ばし、僕を3人がかりでゴミ箱に
放り込んだ奴らは3人まとめてボコボコに痛めつけて火のついてない焼却炉に放り込んだ。
 真帆はいつも、いじめっ子たちを叩きのめすと僕の前に連れてきて、土下座させて謝らせた。
『もうしません』『ごめんなさい』などと僕の前で頭を地面に擦り付けるいじめっ子たち。でもたいがい
真帆から『声が小さい』『悪いと思う気持ちがこもってない』などと容赦なく尻に蹴りをブチこまれ、
最後にはうわずった涙声で何度も謝罪の言葉を繰り返させられ、ようやく真帆からのお許しが出る。
「今度山野君に変なマネしたらこんなもんじゃすまないんだから!・・・さ、行こっ、山野君」
 僕の手を引いて真帆が去った後も、彼らは土下座のままの惨めな格好でただただ泣き続けて
いるのだった・・・

 特に、僕をゴミ箱に入れた3人組を懲らしめたときは凄かった。その3人組は5年生と6年生
だったんだけど、真帆は上級生にも一切容赦はなかった。しかもその3人のうち1人はあの
相撲大会で負かした、6年で1番強いといわれていた男子だったのだ。真帆が4年生としては
桁外れのデカさと強さだったことを差し引いても、3人がかりで下級生の女の子に完膚なきまでに
打ち負かされヒイヒイ泣かされる屈辱はハンパなものではなかっただろう・・・
 真帆は3人組を立ち上がれないぐらいブチのめすと1人づつ軽々と抱え上げて焼却炉にポイッと
投げ入れた。太った3人の男子を入れると狭い焼却炉はギュウギュウ詰めとなり、自力では容易に
出られない状態となった。そしてそのままの体勢で僕に謝罪をさせたのだ。
「ご・・・ごめん・・・なさぁぁひぃいいい」「もぉ・・・にどと・・・し、しま・・・せええぇん」
 スシ詰め状態の狭い空間に押し込まれ、出してもらいたい一心で必死に謝る3人。しかも
泣いていて鼻が詰まっているため、その苦しさは相当なものだったと思われる。
「あんたたち、そんな謝り方で許されると思ってるの!?あんたたちのせいで山野君がどれだけ
悔しくて悲しい思いをさせられたかわかってるんでしょうね!・・・ほら、何やってるのよ!
しっかり謝らないと火ぃつけて燃やすわよ!!」
 凄いセリフで怒鳴りながら真帆は焼却炉にガンガン蹴りを入れる。焼却炉の表面は真帆の蹴りで
ベコベコに変形していった。激しい衝撃と騒音に包まれ、炉の中で3人の男は真帆の迫力に
ただ悲鳴を上げながら震え上がるしかないようだった。
「うわあああぁん!!ずびばぜんでじだああぁあぁあ!!」
「もおじまぜん!!むぉーじまぜんがら・・・やべでぐだざああああいい!!」
「ぐぉむぇんだざい!ぶぉおおひゅるじでええええええ!!ぶぇえええええ〜んんん!!」
 規格外に強い真帆が相手とはいえ、僕からしたらあれだけデカくて怖かった3人の上級生の
男子が1、2年も下の女子にコテンパンにやられて乳幼児みたいな泣き声を上げて許しを請う。
完全に他人まかせではあるけども、何だか胸がスカーッとした。
「まっ、このくらいで許してあげよっかな・・・でも覚えときなさいよ!今度弱いものいじめとかそんな
卑怯なマネしてるの見つけたらまたここに放り込んで今度は本当に火ぃつけるからね!!
それがイヤなら男らしく正々堂々としなさい!わかった!?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・グスン・・・グシュ・・・」
「ううううぅ・・・」
「わかったかどうか聞いてるの!!」 
 ガアアアアン!!
「ひいい!!ごべんだざぁいいい!!」
「はっははいぃ!わがりばじだぁあ!!」
「わかりました・・・もう・・・もうしませんからぁ・・・許して・・・・・・ゆるし・・・て・・・」
 汗と涙と鼻水で顔も体も灰にまみれてグチャグチャのまま、下級生の真帆に敬語で謝る3人組。
「しばらくそこで、頭冷やしてなさい」
 真帆は近くに置いてあったゴミ箱を手に取ると、中のゴミをドサドサと3人組の上から投棄して
炉の扉を閉め、最後にもう一発ガアンと強烈な蹴りを叩き込んだ。
「ふふっ、気は済んだでしょ?山野君。さ、行こっか」
 僕のほうを向くと真帆はいつもの優しい笑顔に戻っていた。そして僕の手を引きゴミ捨て場を
あとにする。焼却炉からは3人のすすり泣きだけが漏れていた・・・

 そんな真帆のおかげで僕へのいじめがなくなったかというとそうではなかった。真帆の見ていない
ところでさらに陰湿化しただけに過ぎなかった。
「お前、中村がいねーと何にもできねーんだろ、クソチビ」
「中村さ〜ん、助けて〜ってか。ギャハハハハ」
「お前の大好きな真帆ちゃんは助けにこられねぇってよ」
「こんな虫ケラみてぇなののお守りはもう飽きちゃったって言ってたぜ」
「ワハハハハハハハハ!!」
「オラ、泣けよ、うじ虫が!」
 上は中学、高校生から下は小学2年生まで日々様々な組み合わせで僕を袋叩きにする。
「おい、今日はこんぐらいにしとこうぜ、簡単に死なせちゃつまんねぇからよ」
「明日も遊んでやるからな、逃げんなよ」
「中村にチクったらブチ殺すぞ!」
「言っとくけど自殺なんかすんなよ、つまらねぇからな、ウヒャヒャヒャヒャ」
 暴行の度合いが増しただけで、毎日泣かされることに変わりはなかった・・・前に真帆にあれだけ
ひどい目にあわされた3人組も、以前にもまして活発に僕をいたぶるようになった。喉もと過ぎれば
熱さを忘れる、とはまさにこのことだ。

 いつもより余計にボッコボコにされて泣きながら帰宅の途についていたある日のこと(その日は
5年生6人、6年生2人、中学生と高校生が1人づつの10人がかりだった)。真帆とその女友達
数名がサッカーをして遊んでいるところに出くわした。
「あっ、山野君。今帰り?遅くまで何かやってたの・・・って、ど、どうしたのその顔!?」
 えらいところを見つかった、と思った。真帆には見られたくなかった。
『中村にチクったら殺す』・・・この言葉が胸に突き刺さっていたからだ。
「い、いや・・・何でも・・・ないよ。ただ・・・こけただけで・・・」
「ウソばっかり!こけただけでそんなになるわけないじゃない!!
・・・どうしたの?・・・誰にやられたの!?」
 周りの女子は明らかに僕を蔑んだ目でヒソヒソ何やら話していたが、真帆だけは本気で心配
してくれていた。後から気がついたけど、その時の僕の顔は原型をとどめていなかったのだ。
「ねぇ、教えて?・・・誰がこんなひどいことを・・・」
「・・・本当に・・・なんでもないったら・・・」
「隠さなくてもいいの。誰?・・・そうか、脅されてるんでしょ?あたしに告げ口しないようにって。
そうでしょ、絶対そうだよね!」
「・・・・・・」
「大丈夫、あたしにまかせて!山野君にはこれ以上絶対手出しさせないわ!
お願い、誰がやったのか教えて!」
「あの相撲のときの6年が・・・あとは知らない人ばっかりで・・・中学生とか高校生とかいたし・・・」
「・・・中学生に高校生!?あきれた・・・いい年してこんな小さい子を・・・絶対許さない!!
・・・1人だけでもわかれば十分よ。ありがとう山野君。よく勇気出して話してくれたね」
 真帆は僕にまたやさしく微笑みかけると、僕をその胸にぎゅっと抱きしめた。
「なっ・・・中村さ・・・ん・・・」
「怖かったでしょ、山野君・・・もう大丈夫だよ、もう怖くないからね・・・」
「中村さん、僕の血がつく・・・服が・・・汚れる・・・汚い・・・よ・・・」
「ううん、そんなことどうでもいいの。・・・山野君、あたし、あいつら絶対許さないから・・・」

 僕は真帆の大胆な行動に驚くとともに、真帆のその大きさにあらためて驚かされたのだった。
真帆が僕の頭を胸に抱きしめる際、僕は全く屈んでもいなかったし、当然真帆も背伸びなど
していなかった。たしか当時で僕の身長は130cm、真帆の身長は167cmだった。
背の高さだけではない。真帆は身長同様、他の部分もかなりの発育を見せていたのだった。
小学校4年生とは思えない胸のふくらみ。そんな真帆の胸の谷間に顔をうずめ、抱きしめられ
2つのあったかく、やわらか〜いおっぱいにサンドイッチされてる僕・・・
ソフトブラとTシャツ越しのぽにょぽにょした感触・・・息をするたびに伝わる、女の子独特の
甘酸っぱい香り・・・僕は真帆の腕と胸の中でとろけてしまいそうだった。力が抜けていく・・・
ある一部分を除いて。・・・・・・全身を襲うムズムズした切ないような感覚・・・今までに経験した
ことのないような胸のあやしい高鳴り。・・・じっとしていられない・・・でも離れたくない・・・
何だかわからないけど何かが爆発しそうで・・・ムズムズ・・・ああぁ、たまらない・・・
 ビキン!!
 ああっ・・・いっ痛い・・・!・・・う、でもなんか・・・ああぁ・・・
 僕の、障害初勃起の瞬間だった・・・

 き、気持ちいい・・・ああ・・・真帆ちゃあぁん・・・
しかし、本気で心配してくれて抱きしめてくれている真帆の前で僕はなんていやらしいことを・・・
これじゃ変態みたいだ・・・中村さんごめんなさい・・・そんな理性も少しは残っていた。
 しかし実際、そのとき流れていた鼻血は殴られたことによるものだけではないことは自分でも
わかっていた。
 真帆は最後に優しい言葉を掛けながら僕の頭をなでなですると、僕から離れた。
幸いにも僕と真帆の股下にあまりにも差があったため、勃起は悟られていないようだった。
「あいつら弱いものいじめなんて最低!!謝ったって許さないんだから!
山野君、あたしに全部まかしといて!」
 血まみれのTシャツもそのままに、真帆は走っていった。その直後、真帆の抱擁の余韻に
ぽへ〜っとだらしなく浸っていた僕を女子たちが取り囲んで口々に罵った。
「山野!!あんたどうして中村さんを止めなかったのよ!!」
「ど・・・どうしてって・・・」
「このチビ何考えてるの!?中村さんは男子にケンカ売りに行ったのよ!」
「でっでも、中村さんって・・・強いし・・・」
「バカ!!いくら真帆ちゃんだって、中学生や高校生に勝てるわけないでしょ!!」
「・・・う・・・」
「あんた真帆がケガでもしたらどうしてくれるのよ!!」
「・・・・・・そっ・・・それは・・・」
「高校生とかが相手だったら乱暴されるかも知れないのよ!!あんた責任とれるの!?」
「・・・・・・」
「それなのにあんた何なわけ!?真帆ちゃんに抱かれてのんきに鼻血ブーしちゃって!!」
 バ、バレてる・・・
「真帆がちょっと親切にしてあげてればつけあがっちゃってさ!
なにチンチンおっきくしてんの!!バッカじゃないの!?」
 バ、バレてるぅ・・・
「えー!!うそー!!」
「やらしー!!」
「エッチー!!最っ低〜!!」
「キャーほんとだー!ふくらんでる〜!!」
「変態!死んじゃえ!!」
 ボスッ!
「あぁ!!・・・あぐぅ・・・・・・」
 真後ろにいた女子が、僕の股間を思いっきり蹴り上げた!・・・スニーカーのつま先で・・・
男の痛みなど知るはずもない女の子は何の手加減もなかった。僕は下腹部から襲ってくる
凄まじい鈍痛と吐き気に大量の脂汗と涙をしたたらせながらアスファルトに崩れ落ちた。
「今の見た〜?なっさけな〜い!!きゃはははははは」
「ぐぅう・・・う・・・うぇええ・・・!」
「だらしねー。女の子に蹴られたくらいで泣いてる〜」
「しょうがないよ。山野は虫ケラだもんね。ね?山野虫」
「違うよ。弱虫っていうんだよ」
「泣き虫の間違いじゃないの」
「あはははははははは」
 悶絶する僕を取り囲んで見下ろしながら、女子は好き勝手に罵詈雑言を浴びせて踏みつけ
靴で小突きまわす。僕の体、体操服、ランドセルが女の子たちの靴跡まみれになっていく。
男10人につけられた分と合わせて、真っ茶色になってしまった。
「や、やめて・・・やめてよぉ・・・グスッ・・・」
「やめてほしかったらかかってくれば〜?男でしょ」
「違うよ、虫だよ」
「虫なら飛んで逃げればいいじゃん」
「ほんと。飛んでけよ、ほらあ!」
 ガスッ!!
「ひいい!い、痛いいいぃ・・・」
「あれぇ、飛ばないよ。つまんなーい」
「虫が飛べなかったら意味ないじゃん」
「ほんっとこいつ虫ケラだよね。つまんないタマはついてるくせに」
「きゃははははははは!!」
 頭をガードしていた両腕も蹴りで外され、踏みつけは頭、顔に及んだ。汗や涙が女の子たちの
靴の裏の泥を吸着し、あっという間に顔も髪の毛もドロッドロにされていくのがわかった。
「虫ケラ君、きったなーい。きゃはははは」
「泣き虫にはお似合いよ。ほーら、ぐりぐりぐりぐり」
 赤、白、黒、ピンクと色とりどりのスニーカーが僕の顔面をいいようになぶりつくす。しまいには
僕の顔を踏み越えて向こう側に渡ったり、口を無理やりこじ開けて靴のつま先をねじ込んだり
する女子もいた。口が裂けそうになる苦痛。さっき殴られて口の端が切れている僕にとっては
まさに拷問級の責め苦だった。
「あ、あたしもう塾の時間だ。バイバイ」
「えー、もうそんな時間?早いねーこいついじめてると」
「時間忘れちゃうよね、楽しいもん」
「全然かわいそうじゃないけどこのへんにしといてやるよ、・・・言っとくけど、もし真帆になんか
あったらあんたただじゃ済まさないからね!タマ蹴りつぶすから覚悟しときなさいよ!!」

 女の子たちはそれぞれ自分の自転車に乗るとさっさと行ってしまった。ようやく開放された・・・
しかしすぐには動く気になれず、それから1時間は道路の上に大の字で泣き続けていた・・・

 次の朝。僕の学校へと向かう足取りは極めて重かった。中高生のところにも復讐に向かった
(と思われる)真帆の安否。もしなにかあったとしたら僕のせいだという罪悪感。その場合、
あの女子軍団に処刑される恐怖。それから、当然真帆に告げ口したことは明るみに出ている
はずだからあの男子グループにもより凄惨な暴行を加えられるに違いないという憂鬱。
考えるだけで脚は震え、歯の根も合わなくなり、脂汗が噴出してきた。あそこは梅干のように
ガッチリと萎縮してモノは皮ごと下腹部に埋没し、動悸も激しく吐き気までもよおしてきた。
だ、ダメだ怖すぎるぅ・・・今日だけは・・・行きたくないぃ・・・

 ポン。
「おはよ!山野君♪」
「・・・え??」
 いきなり背後から両肩に手が置かれたかと思うと、真帆が・・・真帆が後頭部越しに
真上から見下ろしてきたのだった。
「おはようったら。や・ま・の・くん!」
「あ・・・あぅ、あ、お、おはよう・・・中村さん・・・」
 これだけ接近して見上げるとやはり真帆は凄かった・・・む、むねがあぁ・・・
「くすくす、な〜に〜、変だよ山野君。ほんと大丈夫?汗びっしょりだよ?顔色も悪いし・・・」
「・・・い、いや、なんでもないなんでもない!大丈夫だから・・・!」
 僕は急いで汗をぬぐいつつ平静を装った。
「ふふ、なら安心しちゃった。どうせだから、一緒に行こ!」
「う、うん・・・ところで中村さんは何ともなかった?」
「ん?何が?」
「あ、いや、だから・・・昨日・・・あれから・・・」
「あぁ、あれね。ぜ〜んぜんなんともなかったよ。そうだ、今日からもう山野君は絶対にいじめ
られたりしないから安心していいよ」
「え?なんで??」
「あれでまだいじめるようなら、あいつら・・・いや、なんでもないよ。とにかくもう大丈夫だからね!」
 それ以上は口に出さなかった。一体どうなったのか、当時の僕には皆目わからなかった。
それはそうと一緒に歩いてみると真帆の歩く速度はハンパではなかった。脚の長さが
圧倒的に違っていたからだ。颯爽と歩く真帆を僕はほとんど小走りで必死に追いかけていた。


つづく