小さすぎる僕 第8話

置き去りの成長

 大学の後期が終わって春休みに入った今、僕は毎日のように午前中からバイトのシフトを入れてもらっていた。
それだけお金になるのでありがたいのはもちろんだけど、理由として一番大きいのは、気がまぎれるからだ。
学校がないからといってずっと部屋にいたら…一日中あんなことばかりしてしまう。
初めて彼女を思って射精してしまった直後は物凄い罪悪感で、その翌日は彼女の前に出たくないほどだったのに…
その日の夜にはもう彼女のきれいな長身と、あの日与えられたキスの甘い味わい、その後悪戯っぽく舌を覗かせながらの
子供とは思えない色気をまとった、心を奪うような予告…それらのフラッシュバックに胸を喘がせ、また悶え狂っていた。
欲望のままに握り、しごきたてるごとに、相手は小学生なのにという後ろめたさが削ぎ落とされていくようだった。
布団にもぐりこんでから、息を荒げるまでの時間は日に日に短くなっていく。
発射した後、我に返って自己嫌悪する気持ちもどんどん薄くなっている。
こんなにいけない、情けないことを考えてのオナニーだというのに……


 …仕事中に外を見て気づいたけど、今日は近くの小学校の卒業式だったらしい。
昼前ぐらいの時間、通学路を歩く小学生たちがみんな珍しく制服姿だし、
親らしい大人と一緒に帰っている子も多く見かける。
…今日小学校を終える子供たちのほとんどが、僕より大きいんだと思うと、また惨めな気持ちになってくるけど…
ため息をついたところで、見慣れた姿の女の子が店の前の横断歩道を渡って、こっちに近づいてくるのが見えた。
遠くにある私立小学校指定のセーラー服に、ベレー帽…それらを身にまとった、三つ編みの背が高い子…
心臓が飛び出しそうなほど、ときめいてしまう。同時に、あさましくもパンツが突き破られそうなほど…

「こんにちは、プチおくん!お仕事がんばってる?」
「り、理佳お…い、いや、理佳、ちゃん…」
 危うく、理佳お姉さんと口をついて出てしまうところだった。
毎晩、いや昼間でも構うことなく、部屋に一人でいたら夢の中の彼女に対して幼児のようにしがみついて甘え、
大きく、大人っぽくて優しい彼女にいい子いい子してもらうことを思い描きながら何度も果てている、僕。
いつの間にか心の中で彼女に対する呼び方は、『理佳お姉さん』になってしまっていた。
面と向かって、そんな恥ずかしい呼び方ができるわけがない。
小さいとはいえ年上の男からいきなりそんな呼ばれ方をしたら、絶対気持ち悪がるはずだ。

 そして彼女は、いまだに僕の本名さえ知らない。
あの中学生2人組に紹介されたときの、屈辱的な仇名…『プチおくん』としか呼ばれたことがないんだ。
情けないけど、恥ずかしいけど…今、僕は理佳お姉さんに、そう呼ばれることに悦びを感じてしまっている。
もし普通どおりの呼び方をされても、物足りなく感じてしまうかもしれない。
大学生の自分が、小学生の女の子に、本当の小さな子供に接するような態度で臨まれることが、嬉しいなんて…
絶対にそんなこと、口にはできない。ただのロリコンより、よっぽど変態じゃないか……

「私、今日卒業式だったんだ。この制服着るのも、今日で最後なの」
 理佳は手に持っている卒業証書の入った筒の蓋を抜き差しして、ポンポンといい音をさせながら言う。
「このまま来月から同じ私立の中等部に進むんだ。学校の場所はほとんど変わらないけど、
あそこの制服かっこいいから憧れてたんだよね。今から楽しみ」
 あの中等部のブレザーは僕も通学中に電車でよく見る。
制服がかっこいいと言うよりも、あの紺色ブレザーを着て、初等部よりも短くデザインされたスカートから
あの美脚を膝上からさらけ出して歩く理佳がかっこよく、たまらなく魅力的なのに違いない。
来月からはその姿で顔を合わせることになるのかと思うと、期待で胸がより加熱する。
…中学生になったばかりの女の子に、僕は何を期待しているのか…

 私立小学校に通っていて毎日制服姿で過ごす理佳たちの姿はいつも見かけるけど、
最初に会った日よりも、確実に彼女は成長を見せている。顔立ちも、落ち着きが出てきているし…
この制服の下には、この間学校での体操服姿で見せ付けられた、あの長い脚と見事なスタイルが隠されているんだ。
いや、隠せてはいない。胸やお尻は、このサイズの制服では少し窮屈だと本人も思っているかもしれない。
厚めに作ってある長袖セーラー服の上からでも、ボディラインの凹凸が確認できるほどだ。
ベレー帽とランドセルがなかったら、セーラー服が制服である高校生だと間違われてもおかしくない…
もっと言えば僕なんかよりもはるかに、コンビニでバイトをしている姿が似合っているのかも…
彼女はまだ中学生にもなっていないのでありえない話だけど、もし今理佳がバイトで入ってきたとしたら…
キビキビと働いて、小さくて力もなくて作業に時間のかかる僕なんかすぐに追い抜いてここの主力になるかもしれない。
ずっと年下の理佳に僕は仕事でも完敗して、何もかも劣る存在として心身ともに見下ろされてしまうのか…
勝手に変な想像をして余計な危機感に震えながら、同時にそれを望んでいるかのようなゾクゾクとした高鳴りに胸が締め付けられる。
ぼ、僕はいったい何を考えているんだ…
「プチおくん、どうしたの?なんだかぼーっと見つめてるけど」
「えっ…!?ぁ、いや、その…」
 理佳の、最後のセーラー服姿を見つめながらそんなことを考えて動きが止まっていた僕を、理佳はおかしそうに笑った。
僕は、取り繕う適切な言葉も見つからずただ慌てることしかできなかった。

「ついでにこの子供っぽいヘアスタイルも、今日で卒業かな」
 そう言うと理佳は、自分の髪を三つ編みにしていたヘアゴムに指をかけ、外し始めた。
右に続いて、左。初めて、三つ編みじゃないストレートヘアの理佳を、僕は見た。
結っていた髪を解いた後、頭を振った理佳の長い黒髪が、つややかに光りながらふわりと広がってから下に垂れ下がった。
辺りに広がったリンスの香りとともに、その美しさと大人っぽさに僕はなすすべもなく打ちのめされた。
10歳にも見てもらえないほど子供のまま成長の止まってしまった僕を置き去りにして、
彼女は日々大人の女性へと成長の階段を駆け上がっていく。
そして今見せられたストレートロングへの変身は、まるでその成長にロケットのような急加速を与えて
僕なんかじゃ絶対に手の届かないはるか遠くへと突き放されてしまう絶望感のような、悔しさと一緒に…
憧れ、恋心、欲望が混ざり合った複雑すぎる感情に心をかき乱され、
一方で股間はより硬く、熱く、高々とブリーフを内側から突き上げ、先端からの粘液は前のみならず
後ろにまでじっとりと濡れた感覚を伝えてしまっていた。

 それから理佳は何かポケットから取り出すと、それの蓋を開けて唇に塗り始めた。
(あ、そうか、乾燥を防ぐリップクリームか…)
それはすぐにわかったんだけど…一気に大人びた彼女がそれを塗りこんでいる姿は、まるで口紅でも塗っているかのようだった。
普段の何気ない仕草だけで、別に惑わせる意志も持っていない彼女に、僕は勝手に鼓動を高められ、呻かされてしまう。
クリームを塗り終えて潤いを補給された彼女の唇が、店内の照明を受けてつやつやと光る。
その色っぽさに、僕は気づけばレジのカウンターをつかんで激しい動悸に喘ぎながら、
身を乗り出して少しでもその唇に近付こうとしていた。
あの日、彼女の学校の物陰で高い位置から下ろされてきた、瑞々しくて暖かい唇の感触がよみがえってくる。
「り…」
 理佳お姉さんと、口のすぐそこまで出てしまうところだった。
今度は、思わず言ってしまいそうになったんじゃない。
自分の意志で、言おうとしてしまっていたんだ。
さっきよりはるかに色香を増した理佳に圧倒された影響で声がかすれてなかったら、おそらく実際に口からそう出てしまっていたのに違いない。
本当に、危ないところだったんだ…

 そんな、不自然に口をパクパクさせている僕を理佳は改めて覗き込んできた。
「あ、プチおくん、唇カサカサ」
「…え?」
「ダメだよ、男の子だってきちんとケアしとかなきゃ」
 理佳は膝を曲げて僕の高さにまで視線を下してくると、僕の顎に手を添えながら、
もう片方の手で一旦ポケットにしまったリップクリームをもう一度取り出して、指先で蓋を回して外した。
「じっとしててね」
 ま、まさか……

 ぬるっ。
「!!」
 ぴゅっ、ぴゅ―――っ……
 …突然のこととはいえ、これだけで射精させられてしまっていた。
今さっき理佳が使って、少しだけそのぬくもりが残っていたリップクリームでの、間接キス……
理佳はただ無邪気な親切のつもりで塗ってくれたんだろうけど、僕の心はまたも小学生の彼女にあっけなく犯されてしまった。
しかも僕は情けないことに、そのリップクリームの表面に残った理佳の新鮮な唇の跡を求め、
背伸びして自分から唇をより強く押し付け、理佳お姉さんとの甘い間接キスをより貪欲に味わいながらイかされ続けていたんだ……!
コンビニのエプロンをしていたおかげで、理佳にはその恥ずかしいお漏らしは気付かれずに済んだみたいだったけど…

「あっ、あんまり長くいたらお仕事の邪魔になっちゃうか。私、そろそろ行くね。バイバイ、プチおくん」
 理佳は卒業証書を脇に抱えて僕に手を振り、店から出て行った。
快感の余韻でボーッとしながら、僕は理佳に鈍く手を振り返すのがやっとだった。
その直後、冷たさとともにパンツとズボンが股間や足に貼り付いてくる不快感によって、現実に引き戻された。
僕は仕事中に、何をやっているんだ…とても、みっともなかった。
日々大人へと近付いていく理佳に対して、僕は何だというのか。
初めて遭遇したあの朝、満員電車の中で僕に気づかないままの理佳にランドセルで押し潰されながら
一人で興奮してガチガチに硬くさせていたあの日から、何の成長もしていないじゃないか…


 …その日の夜も、当然歯止めなんかきかなかった。
帰り着くなり部屋のドアも窓も密閉し、全裸で布団の上を悶々と転げ回った。
硬いけど、彼女が使った直後の生暖かさが残っていたリップクリームの感触を思い出し、
それにすがりつくようにして、一心不乱に。
初めて彼女を思い浮かべて…してしまった夜のような、良心が咎めて必死に抵抗していたのが嘘のように、
まったく手が止まらない。もう否定なんかできない。
僕は…こんな年になって、自分より大きな女子小学生に恋して、甘えたいなんて願っている、変態なんだ!
「はぁっ、はぁはぁはぁ理佳お姉さん理佳お姉さん理佳お姉さん!!ぼ、僕は、僕は…プチおくん!
うぅ、はぁっ…いい子に、するから…いっぱい、はひっ……いっぱいいっぱいかわいがって!
お願い……キ、キスして!チューして!!はっ、ぁぁぁ!!り、り、りかおねえさあああああんんん!!」
 どくんっ!びゅっびゅっぴゅるるるるるぅぅ―――――――――っっ!!
ずぷっ、びゅくくくくんっ、っぴゅ――――――――っ………
どろっ、ぼたっ……

「ぁ…はひ……、ぃ、ぃ…り…か…おね…ぇ…さ、ん…… zzz......」


 つづく