第三玉の湯
(Daisan Tamanoyu)



 神楽坂というのは不思議な街だ。1本の象徴的な坂道があり、その周りに店が集い、人々がその魅力に惹きつけられていく。坂の上側の交差点は坂上、下側の交差点は坂下。単純な名称だが、この交差点の名前が持つ響きは、坂上と坂下が神楽坂という名の「世界」の一部であることを強く印象付けている。
 坂道の周りには、昔ながらの古い店があるかと思えば、新しい店も同じ並びに存在し、無数の狭い路地、石畳、階段が複雑に絡み合って、まるで生き物のようにうごめいている。夜になれば、それらは一層輝きを増し、静かに、暗闇の中から鮮明に浮かび上がってくるのだ。
 この街をしかめっ面で歩いている人などいない。笑顔の人、目を細める人がこの街の主人公である。また、この街を急ぎ足で駆け抜ける人もまた少ない。ゆっくりと流れる時間に身を任せ、足の運びは自然にゆらりゆらりと前後だけでなく、左右にも動いていく。
 神楽坂界隈には2件の銭湯があるが、いずれも伝統的な破風つくりの銭湯である。そのうちの熱海湯は既に紹介しているが、今回紹介するのはもう一方の第三玉の湯である。第三と言うからには、第一と第二があってしかるべきであるが、フロント様によれば、第一玉の湯は阿佐ヶ谷にあり、一方、第二玉の湯はかつて羽田にあったらしいが今なもうないそうだ。いずれもフロント様のご親族が経営者だ。
 第三玉の湯は、見ての通り玄関にトタンの屋根がかかっているので、破風造りの建築の全貌を眺めることができない。これは少し残念だ。
 中に入るとロビーとフロントがある。ひっきりなしに来る客の対応でフロント様は大忙しのようだ。浴室内も結構混み合っている。
 第三玉の湯の浴槽は、薬湯、水風呂、その他の湯に大別できよう。薬湯は湯温が42℃で私にとっては適温。ヘルスケミカルの宝寿湯である。水風呂は3人くらいが横一列に並んで入れるような間口の大きいものだ。水温は20℃。その他の浴槽は湯温44℃で結構熱い。寝風呂、泡風呂、電気風呂等がある。サウナは定員15人ほどでかなり大きい。室内温度は102℃だ。
 常連客が、湯温について蘊蓄を教えてくれた。「あまり熱い湯に短い時間浸かっても、体の芯まで温まっているとは限らぬ。風呂は熱ければいいというものではない。」そうか、熱い湯が好きな江戸っ子も合理的なことを考えている。また、電気風呂の正しい楽しみ方についても伝授を受けた。「両側の電極に、それぞれ手を押し当てると良い。そうすれば、かなりの効きめがあるはずだ。」しかし、そんなことをしたら、危険だと思うのだが、、、。
 我が取材班の銭湯の楽しみ方も人それぞれである。あるメンバーは銭湯へ来ると必ず体を3回も洗う。またあるメンバーは、石鹸を持ってくるのが面倒だからと言ってシャンプーで全身を洗ってしまう。
 風呂の入り方は、千差万別。人の数だけそのノウハウがあるのだろう。だから、先の常連のような話も、面白おかしく聞けるのだ。
 第三玉の湯は、神楽坂の古い一面を残している。古いものと新しいものが混在する神楽坂は、これからどのような道を歩んでいくのだろうか。いずれにしても、いつまでも愛される神楽坂であって欲しい。そして、いつまでも第三玉の湯が愛されるように。

12歳以上450円、6歳以上12歳未満180円、6歳未満80円、サウナ追加料金550円


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
東京都新宿区白銀町1-4 1,000円 × 15:00〜25:00 水曜日

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2008年6月26日



 
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