朧月 ―明星―






「それではただいまより、隊主・副官会を執り行うぞい。一護よ・・・何ぞ言いたい事でも有るのか?」

 



月に一度の定例会を始めてすぐに、相棒の視線に気づいて山元総隊長が話を振った。

 

「・・・各隊に聞きたいことがある―――どっかにウチの副隊長出来そうな奴いねぇか?」

「「・・・え?」」

 


声に出した奴こそ少ねぇが、一護の突然の申し出に思わず心中で聞き返した各隊長・副隊長陣。眉一つ動かさずに聞いているのは、最近一護の仕事を手伝っていた白哉と冬獅郎くらいのもんだな。

 


「只でさえ隊の特性上隊員は少ないし、かといって茜雫は未だ副隊長のレベルじゃねぇし・・・正直限界だ」

 



滅多なことじゃ不平不満を言わない相棒が訴えた限界だけに、各人皆しんと黙り込んじまった。ま、只でさえ相棒のこと猫かわいがりしてる奴ばっかりだからな、隊長格ってのはよ。

人員を回したいのは山々だけどって顔してやがる。


何せ、一護の率いる零番隊は、十一番隊に次ぐ戦闘特性もさることながら、“現世管理部署”っつー厄介な特性も持ってるからな。


最近様変わりしつつある現世に対応できる隊を、ってのが一番の設立目的だったから、入隊することの出来る人材は、死んでから三十年以内の奴、そんな若い奴らじゃ副隊長に値する実力を持った奴なんていねぇんだよなぁ。


まして全隊の援護に派遣されやすい零番隊だろ?並以上の実力・・・少なくとも一護が五十年前に恋次と戦った時くれぇの実力がねぇと務まんねぇ。



 

「ふむ・・・、確かに最近の零番隊の仕事量は他隊の倍か、それ以上じゃからのぅ・・・」

 

爺さんの言葉に再びざわめく隊長格。

相棒の奴、仕事の量が増えても文句一つ言わず平然とこなす振りするもんだから他の奴は気づかねぇんだよな。今度注意しとくか。


 

「他隊の援護もかまわねぇが、その間にウチの書類は溜まっていくんだ。このままじゃいずれ、ウチの隊は執務室に缶詰の日々になっちまうよ」

そうなれば、他隊への援護なんて行けねぇし、本末転倒だ。

そういう一護に零番隊に援護を頼んだことのある隊は一瞬口をつむがざるを得ない。

 

 

「だが、兄の隊に回せるほどの実力者となれば、各隊の上位席官・・・、皆手放すことは出来まい」

口を開いて静かにそう云った朽木白哉に頷く面々。

 

 

 


「・・・じゃあさ、俺が見つけてきた奴でもいい?」


 

それを見て一護は今までの苦悩に満ちた表情を一変させ、悪戯好きの子供のようにニッと笑ってそう言った。

楽しそうだねぇ、我が王は。

 

 

 

「どういうことだい?・・・と、それから今日茜雫くんはどうしたんだい?姿が見えないけれど・・・今日は副官代理として連れてくるはずだろう?」


そう問いかけてきた白髪のオッサン・・・浮・・竹・・・?だったか、ソイツに一護はさらに笑みを深めてこう言い放った。

 


「答えは一つだ、浮竹さん。口で言うよりも見てもらったほうが早いよな・・・」


 

そういうと辺りを軽く見回して、浅めに息を吸って、相棒は一つの名を呼んだ。

 

 

 


―――海燕!!」

 



相棒がその名を呼んだ途端、場に増える二つの霊圧、そして茜雫と、一人の男―――

 

「おっそいよー、隊長。待ちくたびれちゃった」

「どうも、ご無沙汰してます。浮竹隊長、皆さん」

 


志 波 海 燕。

 


どうやら昔一回死んでるらしいソイツが目の前に立って、喋っているってことに全員が驚きを隠せねぇみたいだな。平然としてんのは、一護と茜雫だけだ。

 



「生まれ変わりって奴だな、志波海燕の。コイツが死んでから結構経つんだろ?」

「どういうわけだか、記憶もあったし、霊力も変んねぇまま人間になっちまったんすよ。・・・あ、ちなみに俺、今は“黒崎”海燕なんで」

 

『!?』

 


「・・・ちょっっ、海燕さん!どういうことっすか、ソレ!?」

 


海燕が名乗った苗字に一番に反応したのは相棒の恋人である、恋次。まぁ、コイツにとっちゃ寝耳に水な上にとんでもねぇ話だよな。

で、その叫びに答えたのは海燕じゃなく、一護の方。

 


「オメーが心配するようなことじゃねぇよ、恋次。海燕は・・・俺の子供だ」

 

「・・・はぁ!?」

 

「っつっても養子だけどな。親は俺が小っさい頃に死んじまうし、病持ちだってんで誰も面倒見てくれなくて、病院の孤児室に入れられてたのを、黒崎先生が引き取ってくれたんだよ。しかも籍まで入れてくれて」

 


嬉しそうに話す海燕に誰もが黙りこくり、いや、口を開くことが出来ず、ただ奴を見ては信じられないといった顔をしている。

 

 

 

「で、結局どうなの?海燕さん副隊長になれんの?」

「こらっ、茜雫!口の利き方には気をつけろって!!」

「ごめんなさーい・・・」

茜雫が隊長たちへ結果を求めたんだが、口が悪かったな。相棒に怒られてやんの。

 



「・・・ふむ、信じられんが、実際に此処におる以上認めぬことは出来まい。どうじゃ、皆異存は有るか?四十六室から零番隊の人事に関しては儂が権限を得ておる。皆に異存がないようなら、この場で決めてしまうことも可能じゃ」

 


爺さんの言葉を受けて静まり返る室内。


相棒と茜雫は楽しそうにしてるし、他の隊長陣にも異論のある奴はいなさそうだ。

 



―――皆、異存はないな?では、志波海燕には明日午前、十三番対と技術開発局による試験を受けてもらう。・・・案ずるな一護、記憶の欠落や能力の低下がないかを確かめるだけじゃ」


爺さんの言葉に未だ信じていないのかと、一歩でかけた一護は、付け足された一言で退いた。



「では、これにて隊主会は閉会とする、解散せよ!」

 

 

 

 

 

 




「一護先生―――!!!」

「どぅわっ!?こらっ、海燕!!乗るな!ってか“先生”じゃねぇ!呼ぶなら“隊長”、“親父”、“一護”のどれかにしろっ、このバカ息子!!」

 

隊主会が終わって部屋を出た一護の背中に飛びついてきた海燕。

・・・テメェ、俺のに触るとは相変わらずいい度胸だな。

一護はそんな奴の頭に拳骨をくれて怒鳴る。よくやった相棒!

 


「酷い!!・・・悪かったよ、ようやく逢えたから嬉しくてさ。流魂界でフラフラしてるとこを茜雫が一護に頼まれた、とか言って迎えに来るまで三ヶ月!俺が死んでから一護が死ぬまで二ヶ月しかなかったってのに!」

「仕方ないだろ、こっちも色々有ったんだ。迎えを回しただけありがたく思え!」

「へーい。・・・ところで一護、色々有ったってことは・・・約束、果たせたのか?」

―――あぁ」

 


そう云って一護がチラリと恋次の方に目をやれば、ソコには低く唸ってこちらを見ている赤犬が一匹。

・・・やばい、笑いがとまらっ・・ねぇっ・・・・!!

 


「零破、笑ってやるなよ・・・。海燕、ちょっと放してな。・・・恋次?」

俺に一言呟くように注意した後、海燕を振りほどいて、恋次の名前を呼びつつ相棒が手招きをすればすぐさま駆け寄ってくる赤犬君。

その後ろには修兵、だっけ?恋次の副官が、ついてくる。

 


「一護ー・・・」

 

ぎゅっと相棒を抱き締めて難しそうに微笑む恋次は当に犬そのものだ。絶対尻尾振ってるよな、今。主人を他の犬に取られてジェラシーたっぷり、ってか?

にしてもこの野郎・・・、相棒が嫌がったら即刻突き飛ばしてやるからな!!

なんて相棒の中で中指立ててもあんまり意味はないんだけど。

 

「ったく、恥ずかしいからひっつくな、恋次。言いたいことは分かるけど、夜になったら全部聞いてやっから・・・、今はゴメンな?」

「・・・・了解」

渋々と言った感じで相棒から離れ、自分の副隊長を引き連れて帰ろうとした恋次だけど、そうはいかなかったり。

 



「海燕さん・・・!!」

「おう、元気してたか?修兵。相変わらず細いなー、お前」

 

恋次が付いてこない修兵をいぶかしんで振り返ったその先には、海燕に抱きついてる修兵の姿。

わぉ、海燕って前世で女がいたんじゃなかったっけ?

ちゃんと可愛がってる恋人モドキもいたんじゃん、舎弟くさいけど。

 


「修、兵・・・?」 

もちろん、相棒も知らなかったみたいだな。びっくりしまくってるし。

 


「たいちょー、俺今日ってフリー?」

「え、あ・・あぁ。試験も式も明日だからな」

「んじゃ、俺これからちょっとコイツと散歩してくるわ。霊術院からの後輩なんだ」


そう言って海燕は仕事があるって叫んでる修兵にお構いなしで連れて行っちまった。

まぁ、強引な奴は嫌いじゃないぜ?俺は。


ただ、王が面倒なことにならなきゃ良いけどな。

 



「・・・悪ィ、恋次。俺、育て方間違ったかも・・・」

「イヤ、あの人は元々ああいう人だ」

 

一護と恋次、二人揃ってげんなりしてやがる。

 



<おーい、茜雫〜>

「・・・零破?どうしたの?」

<相棒連れて戻ろうぜ、ほっといたらコイツら固まりっぱなしだ>

「・・・そだねー。一護!仕事有るんでしょ?帰ろうよ!!」

「おう・・・、そうだな。じゃな、恋次!」

 


茜雫に相棒の内側から声をかけて、相棒を連れ出してもらう。

(茜雫は相棒以外で俺の声が聞こえる貴重な奴だ、海燕も聞こえるみてぇだけど)

我に返った一護は恋次に別れを告げて茜雫に手を引かれたまま走り出す。

 


「あっ、ちょっ、一護!!?」

あわてて恋次が一護の方に手を伸ばしても捕まえることなんて出来るわけねぇ。


「後でな!夜になったら俺の部屋来いよ!!」

相棒の言葉一つで立ち止まって嬉しそうに見えない尻尾を振る恋次。

 



さぁて、楽しい楽しい波乱の毎日の始まりだ!!






やっちゃったよ、『朧月』の続きの話!!

番外編じゃないよ、続きだよ!

といっても、何があるとかではなく、ただ恋一やそれに絡む人たちの話を書いていければなぁ、というだけですが。

今回から海燕と茜雫が加わります。二人とも零番隊員。

零番隊とか生まれ変わりの設定はもの凄く適当です(殴)

茜雫は零番隊の三席で、一護が零番隊の入隊試験をやってる時に気に入って三席に置いてます。

思念珠じゃないけど、強いです。映画見てない人にはごめんなさい(殴)

そのうち設定書き上げれたら良いな・・・(自信皆無)


修兵と海燕が恋人になるかどうかは決めてません。白海と阿修になるかもだし、修兵は独身を貫くかもしれません(笑)

まぁ、修兵は特に幸せにしてあげたいです。


この話の次の日の話も書いてるので、その後は一護が現世で海燕を息子にした話でも書くかな。


ちなみにサブタイトルの明星は海燕のこと。太陽に最も近い金星の別名称です。

一護に最も近い存在ってことで。


今回は何故だか零破視点でお送りしました。



2006/12/30